■胃癌の補助化学療法

手術の前後に行なわれる。これから広まる可能性がある。

再発の危険性があったり、手術だけでは治りにくい進行癌に対しては、手術の前後に抗癌剤を使う 「補助化学療法」が行なわれることがあります。


●手術後に行なう場合

手術で癌をすべて切除しても、肉眼では見えない癌が体内に残っていることがあります。 手術後の補助化学療法は、このような再発の危険性のある進行癌に対し、再発予防のために行なわれます。 この場合は、TS-1を単独で服用します。再発は、手術後1年~1年半くらいまでに起こることが多いため、 一般的に薬は1年間をめどに服用します。 胃癌の手術後にTS-1を1年間服用すると、手術後3年たった時点での生存率が、服用しない人が約70% なのに対し、約81%に向上したというデータがあります。 このような延命効果が認められたことから、今後は手術後の補助化学療法が、 さらに広く行なわれるようになると考えられます。


●手術前に行なう場合

手術前の補助化学療法は、癌が非常に大きい場合、遠いリンパ節に転移があったり近くのリンパ節に多く転移している場合、 手術をしても再発する可能性非常に高い場合などに行なわれます。 抗癌剤を使って転移の範囲を減らしたり、癌を小さくして手術の効果を高めることができます。 手術前の補助化学療法では、TS-1と他の抗癌剤が併用されます。 一般的には、まず、TS-1を3週間服用し、服用開始から8日目だけシスプラチンの点滴を1回加えます。 その後、2週間開けてから手術に臨みます。この方法により、約55%の患者で、手術前に胃癌を小さくする ことができたというデータがあります。補助化学療法は、手術前と手術後に併せて行なうことで、 さらに効果が高まることも期待されています。

この他にも、最近では、大腸癌で効果が認められている抗体を使った薬や、「分子標的薬」など、 新しい抗癌剤の開発が進められています。