慢性膵炎の治療

慢性膵炎の治療の基本は生活習慣の改善
禁酒・禁煙をして、食事療法や薬物療法を行う

慢性膵炎の治療は、原因となる生活習慣の改善を中心に、患者さんの状態に合わせて進めていきます。 膵臓の組織は、いったん線維化したり、破壊されたりすると元に戻りません。 したがって、慢性膵炎の治療は、膵臓の組織がさらに破壊されるのを防ぎ、進行を食い止めることが目的になります。 進行を遅らせるために、次のような治療が行われます。

▼禁酒
アルコールは、膵臓に負担をかける最大の原因です。 炎症の原因にも、悪化の原因にもなりますから、禁酒は欠かせません。 腹痛を軽くしたり、糖尿病を発症しにくくするなどの効果があります。 ただし、慢性膵炎のある人の中には、 アルコール依存症を合併している人も多く見られます。 その場合は、専門の医療機関での治療が必要です。

▼禁煙
喫煙は、慢性膵炎の発症や悪化のリスクとなるため、 禁煙が必須です。

▼食事療法
初期には、脂質の多いものや辛いものを摂り過ぎると、膵臓に負担がかかり、腹痛を引き起こします。 食事で膵臓が刺激されて起こる腹痛を和らげるために、脂質の多い食べ物や香辛料、炭酸飲料などを避けます。 そのため、慢性膵炎の初期のうちは、膵臓の負担を減らすために、脂質の多い食事は控え、1日の脂質摂取量を30~50gに留めます。 さらに、膵臓の働きを助ける、消化の良い良質のたんぱく質を摂るようにします。 ご飯、パンなどの糖質は、比較的膵臓への負担が軽いため、通常通り摂ってもよいでしょう。 しかし、膵臓の機能が低下する後期になると、必要な栄養を十分に摂ることが難しくなるので、エネルギー量を確保するために、 1日40~60gを目安に脂質を摂るようにします。エネルギーを摂り、欠乏しやすいビタミンを十分に摂取します。 また、消化・吸収する働きが低下するため、十分量の消化酵素を服用し、消化の良い食事を規則正しく食べます。 さらに、経過に関わらず、食事はよく噛んでゆっくり食べてください。水分を十分に摂り、便秘を防ぐことも大切です。

▼薬物療法
腹痛などの痛みに対しては、鎮痛薬を使用します。 脂肪便や体重減少がある場合は、消化液の分泌低下を補うために消化酵素を使用しますが、消化力の強いタイプの薬が使われます。 消化管での消化酵素の作用を高めるために、胃酸を中和する胃酸分泌型抑制薬を使用します。 たんぱく質分解酵素阻害薬を使い、膵臓での膵液の活性化を抑え、腹痛を軽減させます。 必要に応じてビタミンの欠乏を補います。

▼胆石の除去
胆嚢に結石が残っている場合は、結石を胆嚢ごと取り除く手術を行います。 最近では、腹腔鏡による手術が多くなっています。手術では、お腹に小さな孔を数ヶ所開けて、腹腔鏡と手術器具を入れ、 お腹の中をモニターで確認しながら胆嚢を切除します。

▼膵石の除去
ERCPによる検査に引き続いて、治療を行います。 十二指腸に送り込んだ内視鏡に結石を掴み取る器具を装着して、膵石を除去します。 体の外側から膵石に衝撃を当て、細かく砕く「体外衝撃波結石破砕術」(下図参照)を行うこともあります。 特別な装置を使って衝撃波を体の外から膵石に当て、膵石を細かく破砕し、十二指腸に流し出します。 膵石がなくなることで、腹痛が軽減し、消化の働きも改善します。通常、2~3週間の入院が必要です。 この治療を行える医療機関はまだ限られているため、担当医から紹介を受けるとよいでしょう。
体外衝撃波結石破砕術

▼膵膿疱の除去
膵管が壊れることに伴って、膵臓に、膵液などの液体が溜まる膵膿疱ができることがあります。 膵膿疱は、内視鏡などで取り除きますが、内視鏡などで除去できない場合は手術が検討されます。

糖尿病を発症した場合は、その治療も行っていきます。 また、睡眠不足が続いていたり、ストレスが積み重なることで、慢性膵炎が起こりやすくなる可能性があります。 日頃から十分な休息をとるよう心がけることが大切です。