膝の痛み克服法・予防法

人がが立っているとき、片方の膝にかかる負荷は、体重の約1.1倍にも及びます。 歩くときは、膝への負担はさらに大きくなり、片方の膝に、体重の約2.6倍もの負担がかかります。 膝の痛みの原因の8~9割を占めているのが、膝関節の半月板が傷み、 関節軟骨が磨り減ることにより生じる 「変形性膝関節症」という病気です。その大きな原因は、加齢と「肥満」です。 年を取ると、日々、膝にかかってきた負荷がそれだけ積み重なり、半月板が傷んだり関節軟骨が磨り減りやすくなるのです。 変形性膝関節症の症状を悪化させる要因に、運動不足があります。 運動をしないでいると、膝やその周囲に脚の筋力低下、関節軟骨に悪影響、関節が硬くなるといった問題が生じます。 そこで、痛みを予防するうえで、最も大切なのは、適度な運動を続けていくことです。 ウォーキングや自転車こぎ、水泳、足の筋力トレーニングやストレッチでなど、 膝への負担が少ない運動が変形膝関節症の予防に適しています。


■膝の痛み

膝は大きな負担がかかる関節。痛みが現れる人は多い

日本人で膝の痛みを持つ人は、少なくとも1000万人いるといわれます。 症状がなくても、エックス線撮影によって膝に変形が見られる潜在的な患者さんを含めると、3000万人に上ると推定されます。 これほど多くの人が膝を痛めてしまうのは、膝は体重を支える重要な関節であり、非常に大きな負荷や衝撃が加わる関節の一つだからです。

●膝に加わる負荷の大きさ

最近の海外での研究により、膝に加わる負荷について詳しくわかってきました。 人が立っているとき、片方の膝にかかる負荷は、体重の約1.1倍にも及びます。 単に上体の重さを支えるだけなら、片脚ににかかる負荷は体重の半分で済みそうです。 しかし実際には、体が倒れないよう、膝の周りの筋肉が上下に引っ張り合っているため、その負荷も加わるのです。 歩くときは、膝への負担はさらに大きくなります。片方の膝に、体重の約2.6倍もの負担がかかります。 特に大きな負担がかかるのは、階段を下りるときです。このとき、先に下ろした方の膝には体重の約3.5倍もの力がかかります。 体重が60kgの人なら、片方の膝にかかる負荷は約210kgになります。 これはゆっくりと階段を下りた場合のデータであり、階段を速く下りたり、走ったり、ジャンプしたりすると、 膝はさらに大きな衝撃を受けます。

●大きな負荷を和らげる構造がある

これほどの負荷がかかってもすぐに膝が傷まないのは、膝関節に衝撃を和らげる構造があるからです。 大腿骨と脛骨の先端には、「プロテオグリカン」というたんぱく質とコラーゲン線維からできた「関節軟骨」があり、 このおかげで衝撃が和らげられています。さらに膝関節には半月板という、コラーゲン線維からできた得旬衝撃吸収材があります (下の図参照)。この2つが膝関節を守っているのです。

関節軟骨



■膝の痛みの原因

加齢や肥満のほか、運動不足も関わっている

膝の痛みを訴える患者さんの8~9割を占めているのが、膝関節の半月板が傷み、関節軟骨が磨り減ることにより生じる 「変形性膝関節症」という病気です。 その大きな原因は、加齢「肥満」です。 年を取ると、日々、膝にかかってきた負荷がそれだけ積み重なり、半月板が傷んだり関節軟骨が磨り減りやすくなります。 そのため、高齢化社会になればなるほど、この病気が増えていくと予想されます。 また、肥満があると、膝にかかる負荷をより大きくしてしまいます。例えば、体重が3kg増えると、 階段の下りで片方の膝にかかる負荷は10kg増にもなります。実際、肥満があると、変形性膝関節症を発症する危険性が高まることは、 はっきりしています。

膝の痛みの原因



●運動不足がさまざまな問題を招く

変形性膝関節症の症状を悪化させる要因に、運動不足があります。運動をしないでいると、膝やその周囲に 次のような問題が生じます。

▼脚の筋力低下
例えば、登山やランニングなどで足が疲れてくると、膝が諤々と震えてきます。これは、足の筋力が低下した状態です。 着地した時の衝撃は、筋肉が働くことで和らげているので、このように筋力が低下すると、その衝撃を十分に和らげられず、 痛みを生じてしまいます。

▼関節軟骨に悪影響
関節軟骨には、血管が走っていません。膝関節を包む「関節包」の中の空間には、「関節液」 というドロッとした液体が少量含まれています。関節軟骨の細胞は、この関節液を介して栄養を得ています。 運動不足で膝をあまり動かさないでいると、関節液がよく循環せず、関節軟骨に栄養が行き渡らなくなって 「栄養不足」になります。

▼関節が硬くなる
運動不足で膝をあまり動かさないと、やがて膝関節を動かせる範囲がどんどん狭くなってしまいます。 その結果、正座ができなくなったいり、足をまっすぐに伸ばせなくなります。

このように、運動不足は膝に悪影響を与えますが、一方で、運動のし過ぎで「スポーツ外傷」と呼ばれる怪我をして、 痛みが出ることもあります。半月板を傷める「半月板損傷」や、膝関節の靭帯を傷める「靭帯損傷」がその代表です。


■痛みを予防するには

特に適度な運動が大切。積極的に行うとよい。

膝の痛みを防ぐため、スポーツをするときは、その種目の基本となる動作を繰り返して練習し(基礎練習)、 毎回、準備運動を十分に行いましょう。また、運動後のクールダウンも大切です。 肥満がある人は、体重を減らすことが大切です。3kg痩せると、階段の下りでの膝への負荷が10kgも減ります。 最も大切なのは、適度な運動を続けていくことです。ウォーキングや自転車こぎ、水泳など、 膝への負担が少ない運動が変形膝関節症の予防に適しています。

●自宅でできる運動もある

また、日頃から脚の筋力を鍛えておくことが、膝の痛みの予防にとても効果的です。 太腿の前側にある「大腿四頭筋」や、太ももの裏側にある「ハムストリングス」を鍛える「スクワット」や などの筋力トレーニングがお勧めです。膝関節を柔らかくするストレッチ運動も重要です(下図参照)。

●前触れの症状に気付いたら

変形性膝関節症では、膝が痛くなる前に、前触れとなる症状が見られます。 起床時など、膝の動かし始めに違和感やこわばり、痛みを感じ、すぐによくなるというものです。 寒いときや天気の悪いときだえ違和感や痛みなどが出るのも、前触れの可能性があります。 これらの症状に気付いたら、下図の運動などを行うと、予防に有利です。


痛みを予防するには