変形性膝関節症を改善する「運動療法」

変形性膝関節症』による痛みを和らげるには、 膝関節の周囲の筋肉を鍛えて柔軟性を高める『運動療法』を行い、膝を安定させることが大切です。 運動を継続することで膝の痛みを軽減させる効果が期待できます。 ”痛いから”と動かさないでいると筋肉などが弱り、さらに症状が悪化してしまうため、積極的に運動を行うことが大切です。


■運動療法

運動療法は、継続することで次のような効果が現れます。

▼筋肉が鍛えられて膝が安定する
膝関節を支えている筋肉を鍛えることで膝関節の周囲の柔軟性が高まると共に膝が安定し、膝関節への負担が減ります。

▼血行が改善する
血行が改善して痛みが和らいできます。

▼軟骨細胞が活性化する
関節軟骨が軽い刺激を受けたり、膝関節内に栄養が行き渡ることで、軟骨細胞が活性化します。 すると、関節軟骨の状態がよくなって、すり減りにくくなります。

▼肥満が改善される
運動することで、肥満の予防や解消につながります。

運動療法は薬物療法よりも痛みを抑える効果が期待できます。
できる範囲で運動を続け膝を支える筋肉を鍛えましょう。


■運動するときのポイント

自分の膝の状態に合わせて行う。継続が大切。

お勧めの運動は下のようなものです。
運動を行う回数や脚を上げる高さなどは、あくまで目安です。無理をせず、自分の膝の状態や体力に合わせて、 運動量を加減してください。”どの程度の運動が適しているか”などを、 あらかじめ担当医とよく相談しておくとよいでしょう。
また、運動というとすぐに「ウォーキング」を考える人もいるかもしれませんが、 ウォーキングは膝の関節軟骨に負担がかかるため注意が必要です。 水中でのウォーキングなら浮力で負担が軽減されるため、膝が痛む人に適しています。 体が冷えないように、温水プールで行うとよいでしょう。

▼運動を行う際の注意
・無理をせず、痛みが悪化しない程度に行う。
・運動を行って痛みが悪化したら、すぐに運動をやめ、医師に相談する。
・膝の痛みの治療中の人は、運動を行う前に担当医に相談する。

▼運動を避けたほうがよい人
・膝の痛みの強い人
・膝に腫れのある人
・心臓や心配などに病気がある人
・風邪を引いているなどで体調の悪い人
・膝関節が大きく変形している人

●膝関節の周囲の柔軟性を高める運動

変形性膝関節症は、関節軟骨がだんだん磨り減ってくることで怒ります。 同時に、膝関節の周囲にある筋肉や腱などが硬くなることで、痛みなどの症状が悪化します。 痛みがあると、膝関節をあまり動かさなくなるため、ますます関節周囲が硬くなるという、悪循環を来たします。 そこで、意識して膝関節の周囲の柔軟性を高めることが重要になります。

▼足首を動かす運動
1.両足を伸ばして座る。できるだけ力を入れて、両足をゆっくりと体の方に曲げ、5秒間静止する。
2.両足先をゆっくりと力いっぱい伸ばし、5秒間静止する。
*1と2を10回ずつ行う。これを1セットとして、1日に2~3セット行う。
  慣れてきたら1セット20~30回に増やすとよい。
柔軟性を高める運動を行うときは、無理して回数を増やす必要はありません。 ただし、運動をするときは、伸ばしている筋肉などに少し痛みを感じる程度に、 可能な範囲で精一杯の力を入れて行いましょう。
【注意点】
・膝に体重の負荷をかけない。
・急性の腫れや熱感がある人は控えめに行う。
・高血圧や心臓病など内科的な病気がある人は医師に相談する。
・やりすぎは禁物

▼膝に力を入れる運動
1.両足を伸ばして座る。
2.両足首を体の方に曲げながら脚をできるだけ伸ばし、膝に力を入れて5秒間静止する。
*10回を1セットとして、1日2~3セット行う。慣れてきたら1セット20~30回に増やすとよい。
【膝に力を入れにくいときは?】
・自分のこぶしを伸ばす方の脚の膝の下にいれ、こぶしをつぶすようなつもりで力を入れていみる。
・かかとの下に低い台を入れて、膝を伸ばすようにしてもよい。

▼膝を曲げる運動
1.座った状態で、両手で片方の脚を抱えるようにしてゆっくりと少し曲げる。
2.太ももの前面が伸びるのを意識しながら、10秒間静止する。
*左右5回ずつを1セットとして、1日3セット行う。
膝を曲げやすくなってきたら、ぬるめのお湯を入れた湯船の中で正座をするのもよい運動になります。 湯船の中では、膝関節の周囲が温まって柔軟になると共に、浮力によって膝への負担が少なくなります。

●脚の筋肉を鍛える運動

膝関節の周囲が軟らかくなってきたら、大腿四頭筋など、膝関節を伸ばしたり曲げたりするための筋肉を鍛える運動 も行いましょう。温水プールでのウォーキングも膝に負担がかかりにくい状態で筋力を強化できます。

▼脚の上げ下げ運動(大腿四頭筋を鍛える)
1.安定したいすに座り、膝から下の脚が太ももからまっすぐになるまで、左足をゆっくり上げる。
2.足を上げた状態を5秒間保ち、ゆっくり脚を下ろす。
3.右足も同様に行う。(左右20回ずつが目安)
*足を上げたときにつま先を体のほうへ引くと、大腿四頭筋に負荷がかかり、さらに効果が上がる。

▼脚上げ運動(大腿四頭筋を鍛える)
1.床に仰向けに寝て、右の膝を立てる。
2.左脚は伸ばしたまま床から約10cmの高さまでゆっくりあげる。
3.上げた状態でつま先を体のほうへ引き、そのまま5秒間保つ。
4.その後左脚をゆっくり下ろす。
5.右足でも同様に行う。(左右20回ずつが目安)
*脚におもりをつけると、筋肉を鍛える効果が上がる。

▼脚の横上げ運動(大腿四頭筋と外転筋群を鍛える)
1.左側を下にして横になり、右手と少し曲げた左脚で体を支える。
2.右脚は伸ばしたまま、つま先を体の方へ引いて、ゆっくりと約10cm上げる。
3.5秒間保ち、ゆっくりと脚を下ろす。
4.同様に右側を下にした状態でも行う。(左右20回ずつが目安)

▼脚の曲げ伸ばし運動(膝関節周囲の筋肉を伸ばす)
1.両脚を伸ばして床に座る。
2.痛くならない程度に左の膝を両手で下へ押し、膝の裏側を伸ばす。
3.5秒間保った後、左膝を曲げて両手で左脚を体に引き寄せ、太ももの前側を伸ばす。
4.20秒間保った後、左脚をゆっくり戻す。
5.右脚でも同様に行う。(左右20回ずつが目安)

▼タオル押し運動(大腿四頭筋を鍛える)
1.両足を伸ばして座り、左膝の下に丸めたタオルを入れる。
2.タオルを膝の裏でつぶすように下に押し、5秒間保ったら力を抜く。
3.右脚でも同様に行う。(左右20回ずつが目安)
*押すときにつま先を体の方へ引くと、より効果的

運動療法は、長く続けることで効果が現れます。最低でも3ヶ月間くらいは続け、その後も”一生続ける” つもりで継続してください。運動は毎日行うと効果的です。時間がないときは、痛いほうの脚だけ行ったり、 行う回数を減らしてもかまいません。”自分の膝は自分で治す”という気持ちで、 運動を毎日の習慣に組み入れましょう。