変形性膝関節症の治療

変形性膝関節症』の治療は、運動療法が中心。必要に応じて、薬物療法や装具を用います。


■変形性膝関節症

関節軟骨が徐々に擦り減るなどして、炎症や痛みを起こす

膝の痛みの原因で最も多いのが、『変形性膝関節症』です。 膝関節は、太腿の大腿骨と、すねの脛骨をつないでおり、エックス線画像で見ると、正常な場合は大腿骨と脛骨の間に 隙間が見えます(下写真参照)。この隙間には、大腿骨と脛骨の先端を覆う「関節軟骨」「半月板」があり、 立ったり歩いたりするときに膝にかかる衝撃を吸収する役割をしています。 変形性膝関節症では、半月板が傷み関節軟骨が磨り減ってしまい、関節の隙間が無くなっています。 その原因は、加齢や肥満などです。


●痛みが生じする仕組み

関節軟骨が磨り減る過程で、削られた関節軟骨の破片が出てきます。この破片が、関節を包む関節包の内側にある 「滑膜」などを刺激して、炎症が起きます。初期の段階では、この炎症が主な原因となって痛みが生じます。 進行すると、やがて関節軟骨や半月板が無くなり、骨同士が直接ぶつかって激しく痛むこともあります。 また、骨同士がぶつかることによって、大腿骨や脛骨にとげができることもあります。 このとげが周囲の関節包や滑膜とこすれ合って、強い痛みを生じます。 変形膝関節症は、年齢が高くなるにつれて発症が増えます。特に男性より女性に多いのが特徴です。 詳細な理由は不明ですが、女性の方が足の筋力が弱いことが関係していると考えられています。





■治療の基本

運動療法を中心とする治療で、多くの場合、痛みが和らぐ

変形性膝関節症の治療は、症状に応じて段階的に行われます。治療の土台として、すべての患者さんに行ってもらいたい重要なものが、 「病気を知ること・運動療法・減量」です。 教育によって病気の理解を深め、減量して膝への負担を軽くします。特に重要なのが「運動療法」です。

●運動療法の効果は高い

膝が痛いからといって運動をしないでいると、動かないために筋力が低下し、運動不足で体重が増え、 膝への負担が大きくなってさらに痛む、という悪循環が起きてしまいます。 この悪循環を断つためには、運動療法が一番効果的です。 適切な運動を継続していくと、多くの場合、2~3週間ほどで症状が軽くなります。 海外や日本の研究によると、運動療法には、鎮痛薬と同じくらい、痛みを軽減させる効果があるとされています。 運動をすると痛みが和らぐのは、痛みの原因となっている炎症が抑えられるためだと考えられています。

●行うとよい運動とは?

治療法として効果が髙いのは、筋力トレーニングとストレッチです。 筋力トレーニングとしては、太腿の前側にある大腿四頭筋を鍛える「脚上げ運動」や、お尻と太ももの横の筋肉を鍛える 「横上げ運動」がお勧めです。ストレッチとしては、膝の関節を柔らかくする運動や、太ももの裏側にあるハムストリングスを伸ばす 運動が適しています。これらの運動は痛みがあるときに行っても問題ありませんが、痛みが強いときは無理をせず、 担当医に相談しましょう。


■痛みが改善しない場合は

運動療法の補助として、薬物療法や装具を用いる

運動療法だけでは効果が不十分な場合は、「薬物療法」を行ったり、「装具」を使います。 しかし、基本はあくまでも運動療法です。これらの目的は、痛みを和らげて、運動療法を行えるようにすることです。

●用いられる薬

痛みに対して、「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」「解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)」が使われます。 最近は、非ステロイド性消炎鎮痛薬の一種である「COX-2阻害薬」も用いられるようになっています。 副作用として、非ステロイド性消炎鎮痛薬を長期間服用すると、胃腸障害や腎臓障害が、解熱鎮痛薬ではまれに肝機能障害が生じる可能性があります。 COX-2阻害薬は、まれに心不全や心筋梗塞などの副作用が起こることがあります。 そのほか、関節の痛みを和らげ炎症を抑える「ヒアルロン酸」の関節内注射を1週間に1回などの頻度で行う治療法もあります。 炎症が強いときは、「ステロイド」の関節内注射、痛みが激しいときは、強力な鎮痛薬である「オピオイド」の外用薬や内服薬を用いることもあります。

●用いられる装具

装具として最もよく使われているのは、「足底板」です。日本人の場合は、膝の内側の関節軟骨や半月板が磨り減ってO脚になることが多くあります。 そのため、外側が厚く作られた足底板を靴底に敷くと、体重が膝の外側にかかるようになり、痛みが軽減します。 それでも歩くのがつらい場合は、持ち手がT字形の杖や、シルバーカーなどを使って、膝への負担を軽くします。 薬物療法や装具を用いても痛みが改善しない場合には、「手術」が検討されます。