糖尿病と骨粗鬆症
最近、骨粗鬆症が、糖尿病の人に起こりやすいこともわかってきました。 糖尿病の人は、インスリンの分泌量が低下していたり、インスリンの働きが悪くなったりしています。 これまでの研究で、血糖値が上昇してインスリンの分泌量が不足すると、骨代謝が低下し、 骨を作る骨芽細胞の働きが抑えられたり、カルシウムの吸収を促すビタミンDの産生が低下したりすることが明らかになりました。 実際、インスリンの分泌量が多い人ほど骨量が多いことが確認されており、糖尿病の患者さんは、健康な人に比べて 骨折を起こしやすいという研究結果も報告されています。 また、高血糖になると、排尿する回数が増えて、体内のカルシウムが尿と一緒に排泄されやすくなるため、 骨粗鬆症を引き起こす原因になります。
■糖尿病と骨粗鬆症
骨折して寝たきりになる人が多い
骨粗鬆症とは、骨量が減少して、骨の中身がスカスカになり、骨がもろくなる病気です。 骨粗鬆症が厄介なのは、骨がもろくなると、ちょっとした衝撃で転び、骨折が起こりやすくなることです。 特に、太ももの付け根を骨折すると、体を思うように動かせなくなり、介護が必要になったり、 寝たきりにつながったりすることが少なくありません。 また、骨がもろくなると、体の重みや、ちょっとした動作で、背骨がつぶれる圧迫骨折が起こりやすくなり、 身長が縮む、腰が痛い、姿勢が前かがみになる、といった症状が生じ、日常生活に支障を来します。 では、骨粗鬆症が起こる仕組みについて説明しましょう。
骨は一度作られるとそのまま維持されるわけではなく、古くなった骨を「破骨細胞」が壊し、 「骨芽細胞」が新しい骨を作る、といった「骨代謝」が繰り返され、保たれているのです。 「この古い骨を壊す」ことと「新しい骨を作る」という、骨代謝が正常に行われていれば、骨が減ることはなく、 骨の強度も保たれます。ところが、何らかの原因で骨代謝に異常が起こり、骨を作るよりも壊す働きが強くなってしまうと、 骨量が減り、骨がもろくなってしまうのです。
●年を取るとカルシウムの吸収率が下がる
骨代謝の異常を起こす大きな原因は、カルシウムの不足と、女性の場合は、閉経後に加速する女性ホルモンの分泌不足です。 骨を強くするために重要な栄養素には、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKの3つがあります。 とりわけ、骨の材料になる代表的な成分はカルシウムで、その98%は骨に蓄えられ、残りは血液や細胞などに含まれています。 カルシウムは、牛乳・乳製品や小魚、ヒジキ、大豆製品、小松菜などの緑色の野菜に多く含まれています。 これらの食品を摂る量が不足すると、それを補うために骨からカルシウムが溶け出し、骨量が減って、 骨がもろくなってしまうのです。 食事で摂ったカルシウムを腸から吸収させるためには、ビタミンDが必要です。 ビタミンDは、マグロや鮭、しらす干し、キクラゲなどに多く含まれています。 また、ビタミンDは、日光を皮膚に浴びることで活性化するため、骨を丈夫にするには、1日5~15分程度の日光浴も大切です。
そして、骨を作る骨芽細胞の働きを活発にするためには、緑色の野菜や納豆などに多く含まれるビタミンKの補給も欠かせません。 ところが無理なダイエットや偏食をすると、これらの栄養素が不足し、カルシウムの吸収率も低下してしまいます。 健康な人でも、カルシウムの吸収率は、年を取るとともに低下していきます。 特に女性は、閉経を迎えると、骨を壊す働きを抑える作用のあるエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が低下し、 骨粗鬆症を招きやすくなります。
●糖尿病の人は骨粗鬆症を疑うべき
最近、骨粗鬆症が、糖尿病の人に起こりやすいこともわかってきました。 糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が慢性的に高くなる病気です。 血糖値を調節しているのは、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンです。 糖尿病の人は、インスリンの分泌量が低下していたり、インスリンの働きが悪くなったりしています。 これまでの研究で、血糖値が上昇してインスリンの分泌量が不足すると、骨代謝が低下し、 骨を作る骨芽細胞の働きが抑えられたり、カルシウムの吸収を促すビタミンDの産生が低下したりすることが明らかになりました。 実際、インスリンの分泌量が多い人ほど骨量が多いことが確認されており、糖尿病の患者さんは、健康な人に比べて 骨折を起こしやすいという研究結果も報告されています。 また、高血糖になると、排尿する回数が増えて、体内のカルシウムが尿と一緒に排泄されやすくなるため、 骨粗鬆症を引き起こす原因になります。
糖尿病の人は、高い血糖値を正常にするために、栄養バランスを整え、摂取エネルギー(カロリー)の摂り過ぎに注意する 食事療法が重要とされています。しかし、過剰な食事制限をすると、骨のために必要なカルシウムなどを摂る量が不足してしまう 危険性があります。 そこで、糖尿病の人は骨を強化させる生活習慣を心がけることも大切です。 毎日の食事では、カルシウム、ビタミンD・Kを摂り、軽い運動も行うといいでしょう。 また、糖尿病の人は、一度、医療機関で検査を受け、自分に骨量の不足がないかを調べてみてください。
●運動不足も骨量の減少を招く
ある歯科医院では、患者さんたちにレントゲン撮影を行うと、加齢とともに骨量が減り、顎骨が薄くなっている高齢者が とても多いことがわかりました。とりわけ女性は、閉経を迎えると、骨を壊す働きを抑える女性ホルモンの分泌量が低下し、 骨量が減って骨粗鬆症を招きやすくなります。骨量が減ってもろくなると、背骨の圧迫骨折や太ももの付け根の 大腿骨骨折を起こす引き金になり、寝たきりにつながる高齢者も大勢います。 背骨の圧迫骨折を起こすと姿勢が悪くなるため、歯の噛み合せがズレます。 その結果、特定の歯の負担が増えて、歯周病を悪化させる患者さんも少なくありません。 ヒトの骨は、タンパク質からなる線維に、カルシウムやリンなどのミネラルが付いてできています。 年を取ると、カルシウムを吸収する能力が衰え、骨のカルシウム量が不足し、骨量が減ってしまいます。 また、運動不足の人は、骨にかかる負担が少なくなるため、骨量不足を招きやすくなります。 骨の材料になるカルシウムは血液中にもあり、血管や内臓の働きにもかかわっています。 血液中のカルシウム量が不足すると、糖尿病や高血圧などの病気を引き起こす原因になることも、明らかになっています。
◆体内への吸収率が抜群によい
特に、女性は骨量不足に悩む人が多いため、カルシウムを積極的に摂る必要があるでしょう。 カルシウムは、牛乳・乳製品や小魚などに比較的多く含まれています。 しかし、特定の食品を毎日摂り続けるのは難しいことです。そこで、「粉カルシウム」が勧められます。 粉カルシウムは、カルシウムに乳酸菌を加えて発酵させたカルシウムで、専門的には「L型発行乳酸カルシウム」と呼ばれています。 粉カルシウムは水溶性で、体内への吸収率が抜群に高いことが最大の特徴です。 一般のカルシウムの栄養補助食品は、牡蠣殻粉や牛骨粉など動物由来のものが大半で、水に溶けにくく、 体内への吸収率がそれほど高くないのが欠点でした。その点、粉カルシウムは安全面でも優れており、 体内へ吸収されやすいのが利点です。さらに、粉カルシウムの吸収を一段と促すビタミンD3も含まれているので、 吸収率がより高まるのです。 粉カルシウムは無味無臭で水に溶けやすいので、米と一緒に炊いたり、料理や飲み物に混ぜて使うとよいでしょう。 米を炊くときに使う場合は、米1合に対し、小さなスプーン1杯の粉カルシウムを加え、軽くかき混ぜてから炊きます。 カルシウム不足が気になる人は、粉カルシウムをぜひ試してみてください。 また、骨を丈夫にして骨粗鬆症や骨折を防ぐためには、姿勢を正し、体を動かす習慣を心がけることも大切です。