難聴・めまい・耳鳴りの合併
老化による高音の耳鳴り33割はめまいを合併し、聴力低下で認知症の危険度2倍。
■めまいの種類
難聴を患う高齢者は1500万人で、慢性のめまいは5人に1人、耳鳴りは4人に1人
国立長寿医療センターの研究では、65歳以上の高齢者で難聴の人は、全国で1500万人いると推測されています。 25db以下の音が聞こえない難聴者の割合は50代で6%、60代で21%、70代で53%、80代で79%と、加齢に伴って急増していきます。 さらに、厚生労働省の国民生活基礎調査によれば、慢性的にめまいを感じている人は20.4%、耳鳴りを感じている人は26.8%にも達します。 つまり5人に1人がめまい、4人に1人が耳鳴りに悩んでいるのです。 ひとくちに「めまい」といっても感じ方は人それぞれです。めまいには、大きく分けると「回転性めまい」と「浮動性めまい」があり、 その他にもいくつかのタイプがあります。
- ▼ぐるぐる回る「回転性めまい」
- 周囲が回っているように感じます。ものが左右や上下に流れるように感じることもあります。 激しいめまいが多く、吐き気を覚えたり、歩行が困難になったりすることもあります。 血流障害、炎症、内耳のむくみなど、平衡器官の急激な変化によって生じ、大半は内耳の異常が原因ですが、 脳の病気のこともあるので十分に注意してください。
- ▼フワフワする「浮動性めまい」
- 「非回転性めまい」ともいい、船に乗っているときのようにフワフワして不安定に感じます。 「体が宙に浮いている」「何となく頭がフワーッとする」などと表現されます。 原因となる病気が急性期から慢性期に移ったころに起こります。 両側の内耳の異常でも起こりますが、脳の障害が原因となることも多いものです。
- ▼グラグラする「動揺性めまい」
- 頭や体がぐらぐらと揺れている感じがします。歩いてみるとふらつくこともあります。 回転性めまいを起こす病気が急性期から慢性期に移ったころに、こうしためまいが起こることがよくあります。 平衡器官の機能が左右両方で低下したり、小脳に異常が生じたりした場合にも起こります。
- ▼つまずきやすい「平衡失調」
- 歩いているときにつまづいたり、まっすく歩けなかったり、転びやすくなったりする症状です。 両側で耳の機能低下、聴神経や小脳の異常でも起こります。
●難聴
難聴が生きがい喪失・脳の刺激低下を招き、鬱・認知症の危険が増大すると判明
難聴や耳鳴り、めまいが起こっている場合、注意しなければいけないのは、認知症です。 加齢による難聴は、「老人性難聴」と呼ばれ、周波数の高い音が聞きづらくなるのとが特徴です。 さらに、、小さい音の聞き取りが困難になり、連続した音が途切れて聴こえるのも、老人性難聴の特徴です。 老人性難聴には、高音の耳鳴りを伴うことが少なくありません。 また、老人性難聴の2~3割は、立ちくらみやふらつきなどを合併しがちです。 めまいの代表的な症状の回転性めまいや浮動性めまいではありませんが、加齢による機能低下で平衡感覚の乱れや貧血などが 原因と考えられます。米国加齢研究所では、36~90歳の男女639人を対象に、難聴と認知症との関連性に調べました。 4年半にわたる追跡調査の結果を、米国ジョンズホプキンス大学耳鼻咽喉科の研究グループが分析したところ、 聴力の正常な人と比べて、軽度の難聴者は認知症発症の危険度が約2倍、高度難聴者は約5倍も高いことがわかったのです。
さらに、慶応義塾大学耳鼻咽喉科のグループが群馬県で行った調査では、聴覚障害や視覚障害を持つ人はうつ病になりやすいことが 判明しました。男性の場合は聴覚障害があると3倍以上も鬱病になる危険性が増大。 そのうえ、聴覚障害と視覚障害を併せ持つ人は、男性で6倍、女性で4倍も鬱病になりやすいことがわかったのです。 難聴になると、家族とも社会とのコミュニケーションが取りにくくなります。 その結果、人と会うことを避けたり、社会活動にも参加しなくなったりして、生きがいを喪失し、うつ病や認知症を 発症するのではないかと考えられています。
難聴で耳からの情報が激減すれば、脳への刺激も減り、脳の老化は進行してしまいます。 少しでも聞こえが悪くなったと自覚したら、認知症予防のためにも専門医を受診されることをお勧めします。