■脳を活性化する暮らし方⑥

【第26回】ハイキングをして自然を感じながら気持ちよく歩いて脳をリフレッシュしよう。
【第27回】気になる新聞記事をスクラップして、社会的な関心を広げて思考力を高めよう。
【第28回】囲碁や将棋を楽しみ、対戦相手と駆け引きをしながら思考力や想像力を鍛えよう。
【第29回】メモを持たずに買い物に行き、しっかりと覚えて記憶力を鍛えよう。
【第30回】音楽を積極的に楽しんで脳を広く活性化しよう。


【第27回】「気になる新聞記事をスクラップする」

脳を若々しく保つためは、毎日、脳に新しい刺激を与えることが大切です。 例えば新聞を読んで、政治、経済、国際情勢、文化など、さまざまなジャンルの情報に接触するのもその一つです。 自分に直接かかわることに限らず、世の中の出来事や社会情勢などに広く興味や関心を持つことは、 知識を増やすとともに、思考力の向上にもつながります。 ただ記事を読んで「ふーん」「へえ」などと驚いたり疑問を持ったりしてもそれで終わってしまうことが多いかもしれません。 脳に刺激を与えるという点ではそれでも良いのですが、脳をより活き活きと活性化させるためには、さらに一歩踏み込んで、 もっと詳しく知ったり、深く考えたりすることがポイントです。

そこでお勧めしたいのが、新聞記事のスクラップです。さまざまな情報の中から興味や関心のある記事を見つけて切り取り、 ノートなどに貼り付けていくのです。例えば、医療、環境、年金など、日々の暮らしの中でなんとなく気になっている問題に 関する記事を集めて、自分なりにまとめてみてはいかがでしょう。 スクラップするには、記事をしっかりと呼んで内容を理解しなければなりませんし、気になる記事を見つけて切り取ったら、 それをテーマごとに分類したり、わかりやすく整理して貼り付けることが必要です。 この思考、判断、意欲などに関わる前頭葉を中心とした脳の働きが活発になるのです。 また、関心のある記事をスクラップすると、その分野について詳しくなれますし、それについて考える機会も増えるので 思考力も自然と高まっていくと考えられます。

今日から、新聞を読むときは、はさみ、のり、スクラップ帳を手元に用意して、気になる記事を探しながら読んでみましょう。 スクラップを続けていると、関連するほかの記事も目に飛び込んできやすくなるので、興味や関心の範囲がさらに広がっていきます。 こうしていろいろな記事が増えると、話題も豊富になっていくので、家族や仲間との会話も弾んで楽しくなるでしょう。


【第28回】「囲碁や将棋を楽しむ」

昔から囲碁や将棋は中高年の趣味として人気ですが、頭を使って対戦するこれらのゲームは、楽しみながら脳を広く活性化させることから、 脳の老化予防の面から見てもとても有効だと考えられます。アメリカの研究でも、チェスなどのボードゲームを習慣にしている 高齢者は、認知症になるリスクが低くなることが報告されています。 囲碁や将棋を楽しむには、ルールや戦術を理解したり覚えたりして作戦を立て、何手か先を読みながら最善の一手を考えなくては なりません。また、対戦者の表情、仕草などから相手の出方を探ったり予測したりする駆け引きも必要です。 この時、思考、創造、集中、注意などに関わる前頭葉や、記憶に関わる側頭葉などが活発に働くのです。 また、指先を使って碁石や駒を動かすので運動にかかわる前頭葉の運動野や、盤上の石や駒の配置を認識するために、 視覚に関わる後頭葉や空間認知に関わる頭頂葉なども活性化されます。このように、囲碁や将棋に没頭しているときの脳は、 広範囲にわたって活発に働いているのです。

また、脳の働きでもう一つ見逃せないのが、仲間との交流です。共通の趣味を通して楽しい時間を過ごしたり、 コミュニケーションをとったりすることは、脳を強く活性化します。さらに、対戦相手を増やしていくと、 それだけ脳が受ける刺激も多くなります。こうしたことが脳を若々しく保つ大きなポイントになると考えられるのです。 かつての愛好者はもちろん、何となくルールを知っているという人や、全くやったことがないという人も、 これを機会に始めてみてはいかがでしょうか。まずは囲碁や将棋のサロン、スクール、カルチャーセンターなどに通うなどして 仲間に加わりましょう。 慣れないうちはルールを間違えたり、なかなか勝てなかったりするかもしれませんが、勝ち負けにこだわるより、 ゲームをきっかけに相手との会話を楽しんだり、友好を深めたりすることの方が、脳の活性化には効果的です。 上手下手はあまり気にせず、週に1回でも仲間と一緒にゲームを楽しみましょう。


【第29回】「メモを持たずに買い物に行く」

年を取るにつれて「新しいことをなかなか覚えられない」「覚えたのにすぐ忘れてしまう」といったことが多くなっていませんか? 脳の老化にともなう記憶力の低下をできるだけ防ぐにはふだんから覚えたり思い出したりする記憶力のトレーニングを意識的に行う ことがポイントになります。記憶に深く関係しているのは、大脳辺縁系にある「海馬」という部分です。 新しい情報はまず海馬に伝わり、そこで一時的に保持されます。また、思い出すときは、その情報に関連する物や場面などを 思い浮かべたり考えたりするので、前頭葉や側頭葉なども連携して働きます。ところが、年をとったり、記憶する機会が 少なくなったりすると、海馬の働きが低下したり、神経細胞同士の連携がスムーズにいきにくくなったりするのです。

そこでお勧めしたいのが「メモを持たずに買い物に行く」です。買い忘れ対策には必要なものを書いたメモを持っていくのが 鉄則ですが、あえてメモに頼らず、記憶力をフル稼働させようというわけです。 例えば、朝食用の牛乳、パン、バナナを買うとします。まずは出かける前に買い物の目的を確認し、買う品物をしっかりと 覚えることが大切です。記憶に残りやすくするには、「紙に書いて文字を見る」「声に出して音で聴く」など、 視覚や聴覚を使うのがポイントです。また、「食卓に牛乳、パン、バナナが並んだ場面をイメージする」「買う品数は3点」など、 思い出すきっかけになるものを作っておくのも有効です。

店では買い物の目的や覚えたときのイメージなどを手掛かりにして、多少時間はかかっても思い出す努力をすることが大切です。 ただ、どうしても思い出せなかったり、買い忘れに気付かなかったりすることもあるかもしれません。 そこで覚えるときに書いた買い物メモは持参して、会計の前にチェック用として活用するとよいでしょう。 覚える品数は、3~5程度から始め、できたら1つずつ増やすなど、ゲーム感覚で取り組んでみてください。 こうして日頃から記憶力を試すことは、脳の活性化になりますし、記憶力の維持にも役立ちます。


【第30回】「楽器を演奏する」

私たちの大脳は、大きく「右脳」と「左脳」に分けられます。人と話をしたり論理的に考えたりするときは主に左脳が、 見たり聞いたりしたことを直感的、感覚的に捉えたりするときは主に右脳が強く働きます。 音楽に関わる能力は、右脳との関係が深いとされ、主に左脳が働く言語能力とは異なる部位が活性化すると考えられています。 そのため、日常生活の中に積極的に音楽を取り入れて、左右の脳をバランスよく刺激することは、脳の健康維持や老化予防に 役立つといえます。

音楽は聴くのもよいのですが、脳をより活性化させるなら楽器の演奏がお勧めです。 聴く場合は聴覚に関わる側頭葉が主に働きますが、演奏する場合は、聴くことに加えて、楽器の扱い方や曲に応じた指使いなどを 習得することが必要なので、学習に関わる前頭葉の働きが活発になります。また、両方の手指を動かしたり、楽器によっては 足や口も使ったりするので、運動野も活発に働きます。さらに、楽譜を読んだり、例えばピアノなら腱板の位置を確認したり しながら弾くと、視覚に関わる後頭葉や、空間認識に関わる頭頂葉なども活性化します。 また、楽しく演奏すれば、感情面にもよい影響がおよび、ストレス解消にも有効です。

部屋の片隅などにほこりをかぶっている楽器があれば、ぜひ手に取ってみてください。 昔、習ったことのある楽器なら、体が覚えていてうまく演奏できるかもしれません。 演奏経験がほとんどない人も、とにかく何か始めてみることです。 好きな曲に合わせて太鼓やカスタネットを鳴らすなど、簡単なことからチャレンジしてはいかがでしょう。 すでに演奏を楽しんでいる人は、新しい曲やちょっと難しい曲に取り組んで、脳に刺激を与えましょう。 また、一緒に演奏する仲間がいると、楽しく取り組め、続ける励みにもなります。 仲間に聴いてもらったり、みんなで演奏したりすれば、喜びや満足感がより大きくなり、脳もますます活性化するでしょう。