アディポネクチン

日本人に多い糖尿病や高血圧はもちろん、メダボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の 予防と改善のカギを 握っているのは、『アディポネクチン』です。 アディポネクチンの分泌が増えれば血液も血管も若く保たれて動脈硬化も解消でき、 日本人に蔓延する糖尿病・高血圧・脂質異常症・脳卒中・心筋梗塞といった 生活習慣病を予防改善することができる というわけです。


■「アディポネクチン」とは?

『アディポネクチン』は内臓脂肪細胞で作られる超善玉物質で、 大阪大学分子制御内科学教室の松澤教授のグループによって発見された物質です。 内臓脂肪と相関し、内臓脂肪が増えれば血液中のアディポネクチンは減少します。 心筋梗塞などの冠動脈疾患の患者でアディポネクチンが低い群ほど死亡率が高くなります。 また糖尿病患者でもこの数値が低く、インスリン感受性が低いことも報告されており、 動脈硬化も高率に発現するようです。 このため、アディポネクチンは、世界中の研究者が健康維持に最も重要な役割をするものであると着目し研究されています。 アディポネクチンは、まさに今、話題の生活習慣病やメタボリックシンドローム(メタボリック症候群) の中心的存在として注目される超善玉物質なのです。


●アディポネクチンの働き

血液中の糖や脂肪を減らし、血管を広げる

アディポネクチンの発見により、糖尿病・脂質異常症・高血圧・動脈硬化・脳卒中・心臓病を確実に予防し改善できる ようになったといわれています。というのもアディポネクチンには、次のようなすばらしい健康効果のあることが 相次いで報告されているからです。

▼高血糖の予防改善
インスリンというホルモンの働きを助けて血液中の余分なブドウ糖を減らす。
▼高脂血症の予防改善
脂肪の消費を促して血液中の中性脂肪を減少させる。

▼高血圧の予防改善
血管を拡張させて血圧の上昇を抑える。

▼動脈硬化の予防改善
傷んだ血管を直接修復して動脈硬化を改善する。

▼メタボリックシンドロームの予防改善

というように、アディポネクチンの分泌が増えれば血液も血管も若く保たれて動脈硬化も解消でき、 日本人に蔓延する糖尿病・高血圧・脂質異常症・脳卒中・心筋梗塞といった生活習慣病を予防改善することができるというわけです。

◆動脈硬化を予防・改善する

アディポネクチンの効果のうち、最も注目されているのが、「動脈硬化を予防・改善する働き」です。 血管が老化して動脈硬化が進むと、血管が硬くもろくなります。その結果、脳出血やくも膜下出血を引き起こし、 突然死を招くこともあります。動脈硬化は血液中のLDL(悪玉)コレステロールが、活性酸素の働きで、 「酸化LDL」になることから始まります。酸化LDLは、血管の内皮細胞という細胞を傷つけ、 血管壁の内側へと侵入していきます。すると、マクロファージ(大食細胞。白血球の一種)を異物とみなして、 どんどん食べてしまうのです。酸化LDLを限界まで食べつくしたマクロファージは、やがてアテローム(粥状塊) となって、血管壁を盛り上げます。こうなると、血液の流れが悪くなるばかりか、血管壁も硬く、もろくなります。 これが動脈硬化です。動脈硬化そのものには全く自覚症状がなく、ふだんは気にも留めない人が多いようです。 しかし、動脈硬化を放っておくと、血栓ができて心臓や脳の血管を詰まらせ、突然死にいたることも少なくないのです。

【血管の老化を防ぎ、傷ついた血管を修復する】

かつては、一度老化した血管を若返らせることは不可能だと考えられていました。 ところが、アディポネクチンが体内に多くあれば、動脈硬化を予防するばかりか、もろくなった血管を修復して、 血管を若くしなやかに保つことができるとわかってきたのです。 酸化LDLを食べて動脈硬化を引き起こすマクロファージは、血管壁の内皮細胞に入り込んだ単球(白血球の一種)が変化したものです。 アディポネクチンには、この単球が内皮細胞に入り込むのを防ぐ働きがあります。 また、単球が変化してできたマクロファージが、酸化LDLなどを食べて破裂するのを防ぎます。 それだけではありません。アディポネクチンは、血液と共に全身の血管を巡回し、傷ついた血管をすばやく修復して、 動脈硬化を改善する働きもあるのです。

◆インスリン抵抗性を改善する

インスリン抵抗性とは、血液中のブドウ糖(血糖)を細胞に運び込んで消費を促すインスリンという ホルモンの効きが悪くなった状態を指します。 インスリン抵抗性が生じると、余分な血糖を減らすためにインスリンが過剰に分泌されます。 そうなると、塩分を腎臓が尿として体外に排出する作用が抑制され、血圧の上昇を招いてしまいます。 そこで、体内にアディポネクチンが増えてインスリン抵抗性が改善されれば、インスリンの過剰分泌が治まります。 その結果、塩分を排出する腎臓の働きも高まって、高い血圧が下がってくるというわけです。


■「アディポネクチン」と「糖尿病」

『アディポネクチン』は筋肉や肝臓にある酵素の一種『AMPキナーゼ』を活性化させ、 この酵素が脂肪酸を燃やすことで代謝が進み、糖尿病などを抑えます。 糖尿病や肥満の悪化を防ぐため、脂肪酸を燃やす運動療法が広く行われていますが、 この酵素を活性化できれば、高度の肥満や病気で運動が出来ない患者にも同じ効果が期待できると見られています。

門脇孝・東京大学医学部教授らのグループが、糖尿病を防ぐ働きがあるタンパク質「アディポネクチン」の遺伝子を調べて、 2型糖尿病になりやすいかどうか体質を判定する技術を開発しました。 2型糖尿病は肥満などが原因とされ、糖尿病患者の95%は2型糖尿病であるといわれています。 その研究によって、アディポネクチンは脂肪細胞が分泌するタンパク質で、その遺伝子のSNPによって [T/T型][G/T型][G/G型]の3タイプに分かれ、血中のアディポネクチンの分泌量に差があることがわかりました。 糖尿病患者と健常者の血液を調べたところ、[G/G型]は[T/T型]に比べて常にアディポネクチン量が2/3以下に低下しており、 約2倍も2型糖尿病に罹りやすいことが分かりました。日本人の約40が[G/G型]です。