生活習慣病(糖尿病/肝炎など)の予防に「歯周病の治療」を

歯周病と糖尿病・肥満・肝炎・脂肪肝などとの間には密接な関係があり、 「歯周病の治療」をすることが、生活習慣病の予防になることがわかってきました。

■生活習慣病の予防に「歯周病の治療」を

歯周病は日本人の幅広い年代で見受けられる病気で、糖尿病や脳卒中などと同じ生活習慣病の一つです。 歯周病は年齢が上がるとともに増加し、40代あたりから進行した歯周病の人が急に増え始めます。 歯周病はあまり自覚症状がないため、歯がグラグラしたり、歯の根が出てしまったり、症状がかなり進行して初めて自覚する人も多いという厄介な病気です。 それだけでなく、歯周病は肥満のほか糖尿病、肝炎など全身の病気と密接に関係しているという研究結果が報告されており、 油断していると深刻な病気を引き起こしたり、悪化させたりしている可能性もあります。 5年間にわたって肥満と歯周病の関係について追跡研究した結果を見てみると、 肥満度を示すBMI(体格指数)が高い太り気味の人ほど、 調査開始時より歯周病が悪化していたことがわかりました。この傾向は男性より女性に顕著でした。


また、歯周病と糖尿病の関係についてもわかってきています。 歯周病の場合、歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)で増殖した菌が歯茎の炎症を悪化させ、 炎症物質が血液中に入り、インスリンが効きにくくなって血糖のコントロールが悪くなります。 逆に、高血糖の状態では体の免疫力が低くなって歯周病が悪化してしまいます。 そこで、歯周病にかかっている糖尿病の患者さんに対して歯磨き指導を行ったところ、血糖コントロールの指標であるヘモグロビンA1cが低下するという結果が出ました。 このことから、糖尿病の予防や改善に歯周病治療が役立つ可能性があると考えられます。 逆に、同様の患者さんに対して糖尿病の治療を積極的に行うと、歯ぐきからの出血は少なくなりました。 これは、体が活性化して毛細血管の機能が改善されたことで歯ぐきからの出血が減っているのだと考えられます。

歯周病が非アルコール性脂肪肝(NASH)の発症に関わっていることも報告されています。 NASHを発症している人は、歯周病菌の中でも非常に強力なポルフィロモナス ジンジバリスという菌の保有率が高いのですが、 この菌を保有しているNASHの患者さんに対し歯周病の治療をしたところ、肝臓に疾患があると血液中で増加する物質(ASTやALTと呼ばれる酵素) の数値が改善されたのです。動物実験ではジンジバリス菌に感染すると、さまざまな病気を発症することがわかっています。

歯周病は慢性炎症であると同時に、体にとっては炎症物質の供給源にもなって、さまざまな臓器に悪影響を与えます。 それだけに口腔ケアは大切で、定期的に歯科医師を受診し、歯のクリーニングなどの口腔ケアをしたいものです。