中年男性とコレステロールの関係

男性では、働き盛りの年代から「脂質異常症」のある人が増えていき、中年男性の約半数が脂質異常症になります。 この状態に仕事上のトラブルや長期間にわたるストレスなどの大きな負荷がかかると、 「心血管疾患」や「過労死」を招く危険性があります。


■中年男性の現状

脂質異常症のある人が多く、心血管疾患を招きやすい状態

中年男性は、働き盛りの年代だけに、仕事に追われている人が多いことでしょう。 夜は残業や接待、お酒の付き合いなどで帰宅が遅く、朝も早くて、いつも睡眠不足。 若いころと比べるとめっきり体重が増え、お腹がポッコリと出てきて、”メタボ”という言葉がとても気になる・・・・・・。 中年男性といえばこのようなイメージがありますが、実態はどうなのでしょうか。

●脂質異常症の頻度

男性サラリーマンを対象に行われたある調査では、「高コレステロール血症」の比率は、40歳代では約26%、 50歳代では約30%でした。これに「低HDLコレステロール血症」「高中性脂肪症」を併せた 「脂質異常症」全体でみると、40歳代で約48%、50歳代で約57%でした。 これらの年代では、約半数の人に脂質異常症があるということになります。 脂質異常症の多くは、生活習慣の乱れによって起こります。そして、そのような生活習慣の乱れは、「高血圧」などの、他の生活習慣病も招きやすくします。 実際、髙LDLコレステロール血症の人の多くが、他の生活習慣病を併せ持っています。 前述の調査でも、高LDLコレステロール血症のある40~60歳の男性のうち、実に41%もの人が、高血圧を合併しています。 高中性脂肪症との合併も多く、割合は20%程度です。「糖尿病(耐糖能異常を含む)」との合併は17%程度で、 先ほどの2つに比べると合併率が低いように思えますが、逆に糖尿病のある人が高LDLコレステロール血症を合併している割合は、 約49%と実に高率です。糖尿病のある人や血糖値が髙めの人は、脂質異常症に十分気を付ける必要があります。 その他、関節の中に「尿酸」の結晶が溜まって「痛風発作」を引き起こす「高尿酸血症」も、合併しやすくなります。
このように複数の危険因子が重なった状態は、「心筋梗塞」などを起こしやすく、 心血管疾患の”下地”ができていることを意味します。


■心血管疾患の発症

加齢や生活習慣の乱れなどに過重労働が加わると危険

男性サラリーマンの在職中の死亡について調べたある調査では、死因の第1位は「癌」で、「心臓病」や「脳卒中」 などの心血管疾患は第2位でした。しかし、癌は死亡率が40~50%と、発症すれば命にかかわる危険性が高いのに対し、 心血管疾患の死亡率は20~25%です。これは近年の治療の進歩により、心血管疾患を発症しても一命を取り留めることが 可能になってきたためと考えられます。ただし、心血管疾患の発症数は、40~50歳代では癌よりずっと多く、 一たび発症すると、たとえ一命を取り留めても、仕事の第一線から退く人が少なくありません。 元気に働き続けるためにも、心血管疾患の予防が重要なのです。

心血管疾患の発症に関する因子には、まず「加齢」や生活習慣の乱れが挙げられます。 これらにより、、さまざまな心血管疾患の危険因子となる生活習慣病が発症しやすくなります。 ここに、「メタボリックシンドローム」が重なると、 心血管疾患を起こす危険性はさらに強くなります。心血管疾患を起こす危険性はさらに高くなります。 そのほか、「喫煙」や「ストレス」なども、心血管疾患の危険因子になります。 これらの危険因子は、どの年代の人にも共通します。 しかし働き盛りの男性の場合、これらに過重労働が加わることが少なくありません。 働き過ぎが心身に大きな負荷をかけ、それが心血管疾患の発症のきっかけになり、「過労死」を招くこともあります。

■心血管疾患の予防

心血管疾患の予防には、危険因子を1つでも多く減らすことが大切です。発症のきっかけとなる過重労働も、 できれば改善したいものですが、自分自身でコントロールするのはなかなか難しいこともあります。 そこで重要になるのが、発症の”下地”を作っている要因を減らすこと、つまり、生活習慣の乱れの改善です。 また、健康診断を定期的にきちんと受けて、自分の健康状態を把握しておくことも大切です。