■女性のコレステロール
閉経前後に総コレステロール値が大きく上昇する
「コレステロール」は、細胞膜やホルモンなどの材料となる、体にとって大切なものです。 しかし、血液中のコレステロールが多すぎると、動脈硬化が促進され、「冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞)」 や「脳梗塞」などの重篤な病気を引き起こしやすくなります。 一般に、女性の血液中の「総コレステロール値」は、閉経を境に大きく上昇します。 このような変化には、「女性ホルモン」が関係していると考えられています。
女性ホルモンは2種類に大別されますが、コレステロールと関係しているのは主に「エストロゲン」です。 コレステロールは食べ物からも体内に入りますが、体内のコレステロールの約2/3は、主に肝臓で合成されています。 エストロゲンは、この肝臓でのコレステロールの合成を抑えるように働きます。 また、全身にコレステロールを運ぶ、いわゆる”悪玉”の「LDL」を肝臓へ積極的に取り込んで、 血液中のLDLコレステロール値を下げる働きもあります。 さらに、”善玉”の「HDL」が肝臓に取り込まれるのを抑えたり、HDLの産生を促したりして、 HDLコレステロール値を上げることも知られています。 こうしたエストロゲンの働きによって、閉経前の女性は、血液中の総コレステロール値が低く抑えられているのです。
エストロゲンの働きで血液中の総コレステロール値が抑えられることは、動脈硬化の予防につながります。 また、エストロゲンには、直接動脈硬化を防ぐ効果もあります。 動脈硬化には、LDLの酸化が深く関係していますが、エストロゲンはこのLDLの酸化を防ぎます。 また、動脈硬化は、血管壁に傷がつくことから始まりますが、エストロゲンには血管壁を保護して、 傷つきにくくする作用もあります。 閉経前から女性ホルモンの分泌は減り始め、エストロゲンの働きも弱くなってきます。 その結果、総コレステロール値が高くなり、動脈硬化も進みやすくなります。