更年期からの女性の脂質異常症治療法
まずは食生活を見直し、運動を習慣付ける
女性は、「更年期」を迎えるころから「脂質異常症」が起こりやすくなります。 LDLコレステロール値が管理目標を上回っている場合は、食事や運動などの生活習慣の改善に取り組みます。 それでもよくならない場合や、冠動脈疾患や糖尿病などがある場合には、並行して薬物療法が行なわれます。 薬物療法が必要な場合には、必要性をよく理解し、納得したうえで取り組んでください。
■更年期女性の脂質異常症治療法
食生活の改善と運動が治療の基本
女性は「更年期」を迎えるころに、脂質の値が変化してきます。 そして、「脂質異常症」や「冠動脈疾患」を発症しやすくなります。 例えば、「LDLコレステロール値」は、更年期を迎えるまでは男性より女性の方が低い状態が続きます。 ところが更年期を境に、女性のLDLコレステロール値は上がり始め、やがて男性を上回ります。 それでも冠動脈疾患の発症数は、男性の方が多いのです。 これは、更年期の女性では、女性ホルモンの作用で「動脈硬化」が進みにくいためだと考えられています。 いわば女性は、それまでの”貯金”があるので、冠動脈疾患が起こりやすくなるのも男性より10年ほど遅くなるのです。 しかし、男性に比べれば低いものの、女性も更年期以降は、冠動脈疾患を起こす危険性が高まることは事実です。 予防のためには、脂質異常症、特に「高LDLコレステロール血症」の治療をしっかり行い、 脂質の値をコントロールする必要があります。
●治療の流れ
治療の基本は、食生活の改善と運動不足の解消、つまり生活習慣の改善です。 生活習慣の改善をしっかりと行うことで、脂質の値をコントロールしていきます。 生活習慣の改善を十分に行っても効果が見られない場合は、「薬物療法」が検討されます。 ただし、冠動脈疾患のリスクが高い人の場合は、生活習慣の改善と同時に薬物療法を始めることもあります。
●薬物療法
主に用いられるのは、「スタンチン系製剤」という、肝臓でのコレステロールの合成を抑える薬です。 スタンチン製剤には、善玉のHDLを増やす作用もあります。 薬が処方されたら、勝手にやめたりせず、きちんと服用してください。 生活習慣の改善も怠らずに、コレステロール値をコントロールしていきましょう。
【関連項目】:『高脂血症の薬』
■生活習慣の改善
■その他
- ▼トランス脂肪酸
- 「トランス脂肪酸」とは、植物性油脂を化学的に加工する際に生成されるもので、 LDLコレステロール値を上げ、HDLコレステロール値を下げる作用が強いことがわかっています。 トランス脂肪酸は、主にマーガリンやショートニング、それらを使った焼き菓子、加工食品などに含まれています。 アメリカの一部の都市では、外食産業でのトランス脂肪酸の使用が制限されています。
- ▼ホルモン補充療法
- 「ホルモン補充療法」とは、女性ホルモン剤を使って、ホルモンバランスの乱れを整えるもので、 更年期障害など、婦人科系の病気に対してよく行なわれています。 欧米では、閉経後の女性の高脂血症にもホルモン補充療法が行なわれていましたが、 最近では、複数の研究結果から、動脈硬化を防ぐ効果はあまり期待できないといわれています。