体にとっては欠かせない栄養素『油』
油というと、健康に悪いイメージを持つ人もいますが、油は人の体にとって必須の栄養素です。 健康な成人の場合は、1日の摂取カロリーの20~30%を魚、肉、大豆、ナッツ、野菜、乳製品、食用油などの脂肪から摂る必要もあります。 毎日、調理や料理に使う油も、選び方によっては健康維持や病気予防につながりますから上手な選択を心がけましょう。
■オリーブ油
オリーブ油は、ほかの食品油が種子から抽出するのに対して、果肉から得られる油です。
加熱せずに油を抽出するので、オリーブ油本来の風味や機能を損なわずに食べられるのが特徴です。
オリーブ油には様々な効能があります。
- ①コレステロールの低下
- 不飽和脂肪酸であるオレイン酸が、悪玉コレステロールを抑制する働きがあり、動脈硬化を予防します。
- ②がん予防
- オレオカンタールという成分は、非常に強い抗酸化作用を持ち、がん細胞増殖抑制効果が期待されています。
- ③心臓病のリスク低下
- 毎日大さじ2杯を、バターや動物性脂肪の代わりに摂取すると、心臓病のリスクを減らすといわれています。
- ④便秘解消
- オレイン酸は、小腸で吸収されるときに時間がかかるので、長時間腸を刺激することになり、整腸作用につながります。
- ⑤美肌効果
- オリーブ油には、皮脂に似ている保湿成分スクワランが含まれているので、肌の保湿オイルとして、赤ちゃんからお年寄りまで安心して使え、 肌の老化を防ぐ効果もあります。
- ⑥ダイエット効果
- オリーブ油に含まれるオレイン酸が、インスリンの分泌を抑えます。 インスリンは、糖を脂肪にする働きがあるので、結果的にダイエットにつながります。
- ⑦記憶力の向上
- カリフォルニア大学でのマウスの実験により、オレイン酸が、記憶力をよくすることが明らかになりました。 オリーブ油は、冷暗所で保管し、1日大さじ2杯まで。250mlを1~2ヵ月で使い切るくらいを目安に摂取しましょう。
■ココナッツ油
ココナッツ油は、成熟したココヤシの実から採取されます。ココヤシの実を割ると、中に胚乳と呼ばれる白い部分が現れますが、 ココナッツ油はその胚乳から抽出されます。またアブラヤシを圧搾して作る赤色のパームヤシ油という油がありますが、 この2つは原料のヤシの木が異なり、さらに含まれるオイルの成分も異なります。 主にココナッツ油の健康効果は中鎖脂肪酸によるものですが、パーム油はβ-カロテンやトコトリエノールなどが含まれます。 さらに製造方法の違いにより異なる製品があり、「ヴァージンココナッツ油」と表示されるものは、無添加調整、非加熱抽出をしているので 有用な成分が温存されています。
ココナッツ油の健康効果を握るカギは、「中鎖脂肪酸」です。水に溶けやすい性質を持ち、早くエネルギー化される特徴があり、 脳のエネルギー源となるケトン隊の生成を高める働きがあります。 ココナッツ油は、様々な健康効果を発揮することが報告されています。 インスリン抵抗性と分泌を改善し、糖尿病の予防や、ケトン体の生成が高まり、脳のエネルギー供給が促進され、認知症の改善にも効果があります。 さらに心臓血管疾患の原因である悪玉コレステロールを低下させたり、ラウリン酸によって免疫の調整に働きアレルギーの改善にも期待されています。 ただし、、摂り過ぎは禁物。1日の目安は、大さじ2杯程度にしましょう。
■野菜油
野菜油とは、トウモロコシや菜種、大豆など植物の種子から採れる油の総称で、
オメガ3脂肪酸やオメガ6脂肪酸が多く含まれています。
中でもオメガ3脂肪酸は菜種油に、オメガ6脂肪酸はコーン油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油などに多く含まれています。
野菜油は、種類によって脂肪酸の種類が大きく異なりますが、乳脂肪(バター、チーズ、生クリーム)でとるカロリーのうち5%を野菜油で撮った場合の
心臓血管疾患のリスクが10%低下するという結果が出ています。
ちなみに、乳脂肪でとるカロリーの内、5%をラードや牛脂などの動物性脂肪に替えたところ、心臓血管疾患のリスクが6%増加するという結果になりました。
■シソ油
近年注目を浴びているのは、シソ油(エゴマ油)です。エゴマというシソと同じ種類の植物から抽出した油です。 エゴマには、α-リノレン酸が多く含まれています。 αリノレン酸は、血流の改善、悪玉コレステロールや中性脂肪を減らす、血栓や動脈硬化の予防、高血圧の予防、心筋梗塞や脳梗塞の予防、肥満の改善、 ストレスの軽減、脳の機能をよくする、記憶力や集中力の向上、アレルギーの抑制、老化の予防、鬱病の軽減などに対して効果があるといわれています。 また、体内で一部がEPAや DHAに変わるので アルツハイマー病や認知症にも効果があります。 しかし、α-リノレン酸は、熱に弱く酸化しやすいので、揚げ油として使うのではなく、ドレッシングとしてサラダや豆腐にかけるなど、 生のまま料理に使うようにしましょう。
■亜麻仁油
亜麻仁油は、アマという植物の種から抽出した油で、
英語ではリンシードオイルと呼ばれています。紀元前の古代エジプトでも栽培されており、医学の父ヒポクラテスも、胃腸の調子がよくなり、
健康に役立つと認めています。いわば、「世界最古の健康食品」といえます。
亜麻仁油の成分は、ほとんどが不飽和脂肪酸(α-リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)です。
αリノレン酸の効能は、シソ油で述べましたが、亜麻仁油には100gあたり24.9g含まれており、植物の中で最も多い値です。
亜麻仁油もシソ油と同様、酸化しやすいので、ドレッシングなど生で摂取するようにしてください。
開封後は冷蔵庫で保存し、3週間以内に食べきるように。1日大さじ4杯程度が目安です。
亜麻仁油は、亜鉛、ビタミンB群、マグネシウムなどの栄養素と一緒に摂ると吸収も高まるので、発芽玄米、納豆、ゴマ、わかめ、酢の物と組み合わせて
食べるとよいでしょう。