肉の栄養について

は健康に悪いと敬遠する人もいますが、肉のタンパク質は、アミノ酸のすべての種類を含んでいます。 植物性タンパク質も良質でヘルシーですが、通常は、アルギニン、タウリン、メチオニン、リジン、トリプトファンが含まれていないので、 肉もバランスよく摂取したいものです。食べ過ぎはよくありませんが、適度に摂取すれば、健康維持、病気予防にはもってこいの食材です。


■鶏肉

鶏肉は、カロリーが少なく、良質のタンパク質を持っています。このタンパク質には、イミダゾールペプチドに属する、アンセリンやカルニチンを含みます。 ペプチドが体内に入ると、熱量が上がり、エネルギッシュになります。代謝が上がり、筋力の持久力も高め、内臓の働きをよくします。 鶏肉は食べるときに脂(鶏皮部分)と肉部分に分けることができるので、ダイエットをしながら筋力をつけたい人にもおすすめの食材です。 また鶏肉は、部位によって特徴があります。鶏むね肉には、アンセリンやカルニチン(イミダゾールペプチド)が豊富です。 日本人は、もも肉を好みますが、欧米人は胸肉を使って、から揚げにしたり、胸肉のほうが美味しいという人も多いです。 これは、ペプチドはうまみ成分でもあるからなのでしょう。 手羽先と手羽中には、コラーゲンを多く含んでいます。胸の軟骨には、Ⅱ型コラーゲンが多くありますが、 このⅡ型コラーゲンは、免疫力を上げてくれる働きがあります。また、トサカにはヒアルロン酸が入っているのも注目したい点です。


■烏骨鶏

ニワトリの一種に、烏骨鶏という鶏がいます。皮、内臓、骨、すべて黒色をしていますが、白い羽の烏骨鶏と黒い羽根の烏骨鶏がいます。 この黒い色素は、メラニン顆粒(色素)によるもので、強い抗酸化作用を有しています。 漢方では、黒は腎に通じています。腎精(精力など)が不足している人は烏骨鶏で効率よく摂れます。 韓国では烏骨鶏をオゴルゲといい、それでサムゲタンを作ります。普通の鶏肉をいただくよりも、とても元気になります。


■豚肉

鶏肉は体を温める力が強いのに対して、豚肉は体を冷ましてくれる働きがあります。熱量が高い人は、豚肉を食べるとバランスがとれるでしょう。 豚肉にはビタミンB1が豊富に含まれています。ビタミンB1は、肝臓で、グリコーゲンというブドウ糖をエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。 ビタミンB1が不足すると、エネルギーを作ることができず、疲労が溜まってしまいます。 また、自律神経のバランスを整えたり、更年期障害の症状を緩和させたりします。
漢方では、豚肉は修復する力が非常に強いとされています。また、潤す力があり、空咳や便秘にも効果があります。 発熱による脱水症状も改善します。糖尿病で痩せてきて、皮膚が乾燥してきた人にも、体液のバランスを整えて潤いをもたらします。 日本では、沖縄のアグー豚や鹿児島の黒豚が有名です。特に沖縄では、デビチという形で豚足がよく食べられています。 豚足や豚の皮の部分には、コラーゲンが多く含まれています。


■牛肉

牛肉は、ビタミンB群が豊富に含まれています。脂肪の燃焼に欠かせないビタミンB2や、月経前症候群の症状を軽くしたり、 動脈硬化や心筋梗塞の予防をしてくれるビタミンB6、アルツハイマーの予防、頭痛や目の疲れにも効くビタミンB12など、毎日摂取したい栄養素です。 ビタミンB2やビタミンB6は、鶏肉や豚肉にも含まれていますが、特筆すべきはビタミンB12の多さです。 鶏肉や豚肉が100gあたり0.3~0.4mgに対して、牛肉は1.3mg含まれています。 また、貧血予防にもなる鉄分の多いのも特徴です。牛肉の赤身でも効率よく鉄を摂ることができます。 動物性食品に含まれる鉄分は、ヘム鉄といい、植物性食品に含まれる非ヘム鉄に比べて、吸収率が高く、 牛肉の赤身なら、ホウレンソウの10倍吸収がよいといわれています。
漢方では消化器の機能を高めて、元気を出す食べ物としています。牛肉は、動物性脂肪が多いので、熱量が高く、元気になる力も強いのです。 また、タンパク質が多いので、華奢な人が筋骨を成長させたい時にも、手っ取り早い食材です。 しかし、胃腸の弱い人には牛肉は向いていません。


■羊肉

羊肉は、カロリーが低いので、近年、ダイエット食材として人気が出ています。ラムは、生後14ヵ月未満のもので、それ以上になるとマトンと呼ばれます。 マトンというと臭いが気になる人がいるかもしれません。臭いの成分は脂肪に含まれています。 調理前に丁寧に脂をとるか、もともと脂身の少ないラムを選べば、臭いはあまり気にならないでしょう。 羊肉には、中鎖脂肪酸が入っています。中鎖脂肪酸は、水に溶けやすく、他の油よりも5倍速く分離されるので、 新陳代謝が高まって体を温めてくれる働きがあります。また、羊肉は、ビタミンB1、カルシウム、鉄分などが多く含まれています。


■馬肉

馬肉も、健康食材として知られています。低カロリーで高タンパク。脂質が少なく、カルシウムが豊富。 鉄分は牛肉よりも多いので、おススメの食材です。貧血や体力回復、動脈硬化や高血圧、糖尿病の予防にも効果があります。 ただ、漢方では馬肉は体を冷やす食材なので、冷え性の人は、ほどほどに食べるようにしましょう。


■ジビエ

鹿肉は、高タンパク、低脂肪のヘルシー食材です。ウサギ肉は、他の肉に比べてナトリウムが少ないので、高血圧予防に役立つといわれています。 熊肉は、日本でも昔から伝統的な薬膳として食べられてきました。体を温めたり、滋養効果、美肌効果があるといわれています。 イノシシ肉は、江戸時代は「薬喰い」と称されるほど冬の栄養補給食とされていました。