【質問】「腎膿胞」は放置しておいても大丈夫ですか?

腎臓に膿胞があります。左の腎臓には7cmぐらいのもの、右の腎臓には小さい膿胞が数個ありました。 担当医には「心配ない」と言われていますが、左腎の膿胞は15年前は1.5cm程度の大きさでした。 右腎の膿胞は最近見つかったものです。特に治療は受けていませんが、このままにしておくと将来もっと大きくなったり、 数が増えてしまったりするのではないかと心配です。小さいうちに切除したほうがよいのではないでしょうか。
●60歳代・女性


【答】

腎臓の膿胞で最もよく見られるのは 「単純性腎膿胞」で、 加齢とともに多く見られるようになります。 人間ドック検診の超音波検査では、60歳代の方の2~3割に見られます。 単純性腎膿胞は、通常は自覚症状を伴わず、腎臓の機能を低下させることもなく、治療対象となりません。 まれに膿胞の中で出血が起こると、腎膿胞のある側の腰の痛みを感じます。 巨大になって周辺の臓器を圧迫し、痛みなどの症状が出た場合は、治療用針で膿胞の内容物を吸引し、膿胞壁の固定を行うこともあります。 固定にはアルコールなどが使用されます。このような治療が必要となる膿胞は、大きさが通常5~20cmあるものです。 また、膿胞に感染が起きると、内部に抗菌薬が到達しにくいため治りにくくなることもあります。 まれに膿胞性の悪性腫瘍がありますが、このような場合は膿胞に隔壁があって多房性であったり、壁の肥厚があったりすることが多く、 CTやMRIによる精密検査と手術が必要です。

単純性腎膿胞が両側の腎臓にできることは珍しくありませんが、両側の腎臓に膿胞が多発する病気として、「常染色体優性多発性膿胞腎」という病気があります。 遺伝性のものですが、突然変異によって家族歴なしに起こることもあります。 遺伝子検査は限られた施設で、主に研究目的で行われているだけで、一般には臨床的に診断をします。 この病気の場合は、腎臓のほとんどが最終的に膿胞に置き換わって腫大し、徐々に腎機能低下が進行して、 半数の方は70歳までに末期腎不全による透析が必要となります。 「肝膿胞」「高血圧」「脳動脈瘤」、心臓の弁の異常なども合併します。 この病気は治療が必要で、最近では新しい薬も認可されて使用可能になっていますので、腎臓病の専門医の受診が必要です。

ご質問者の膿胞は大きくなっているようですが、15年かけてゆっくり大きくなったものなのか、 ここ1~2年で急に大きくなったものなのか、お手紙だけでは判断できません。 急激に大きくなっているようであれば、CTやMRIによる詳しい検査を受けたほうがよいかもしれませんので、担当医によく経過を確認し、相談してください。 「心配ない」と言われているそうですので、恐らくは単純性腎膿胞で良性のものと判断されているものと推察します。

(この答えは、2017年10月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)