■質問:多発性肝嚢胞で胃もたれが続いています

昨年夏ごろから、食べるとすぐ満腹になり、食後は胃がもたれるようになりました。 胃内視鏡検査で「胃壁外性圧排の疑い」と言われ、CT検査で「多発性肝嚢胞(最大5.2×7cm)で胃壁を圧迫している」と診断されました。 嚢胞内の液体を吸引する治療法があるそうですが、担当医から再発の可能性や感染症の心配があると聞きました。 現在、食事量や飲酒量を制限して様子を見ていますが、胃の症状は続いています。治療した方がよいでしょうか。
●65歳・女性


【答】

「肝嚢胞」とは、肝臓の中に液体の溜まった袋ができる状態です。 最も多いのは先天的なもので、多くの場合は無症状で健康診断の超音波検査などで発見されます。 嚢胞内には透明でサラサラした液体が溜まっていますが、これは嚢胞の壁にある粘液細胞が産生しています。 嚢胞の数は1~数個のことが多く、大きさは1cm程度~10cmとさまざまです。 10cm以下であれば症状はほとんどありませんが、10cmを超えると嚢胞の存在部位によって圧迫症状(腹部膨満感、腹部鈍痛、心窩部(胃部)の不快感、吐き気など) が出現することがあります。ご質問者の嚢胞のサイズは7cmということですが、嚢胞が胃に接する部分の肝臓にできた場合は、 その程度の大きさでも症状が出てくることがありえます。 肝嚢胞があっても肝障害などを引き起こすことはなく、無症状であれば経過観察でよいでしょう。 ただ圧迫による症状がみられる場合は、治療を考えた方がよいと思います。 治療法として、体表から嚢胞に針を刺して内容液を吸引する方法がありますが、またすぐに液体が溜まって再発するので、効果は一時的です。 そこで、内容液を吸引した後に、液体を産生する嚢胞壁の細胞を破壊するために、エタノールやミノマイシンなどの薬液を注入する治療法があります。 この治療法は体に対する負担は小さいのですが、効果を十分に予想できず、繰り返し薬液を注入するためにチューブを留置する場合は、 治療期間が長引くという欠点があります。 根本的な治療法としては、手術で嚢胞の壁を一部切除して開放し、残った嚢胞内面を電気メスなどで焼灼する「開窓術」があります。 嚢胞内への液体産生はゼロにはなりませんが、産生された液体は腹腔内に流れて腹膜によって自然に吸収されます。 最近、この手術は腹腔鏡で行えるので、最も勧められる治療法と言えます。
なお、まれな病気として、生まれた時から肝臓に多くの嚢胞がある「嚢胞肝」や、腎臓に多数の嚢胞が合併する「多発性嚢胞腎」、 嚢胞の形をした肝癌(肝嚢胞腺癌)などがあります。また、エキノコックスという寄生虫による嚢胞もあります。 治療前には、このような肝嚢胞ではないことを確認しておく必要があります。

(この答えは、2019年4月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)