【質問】大腸憩室があります。日常生活の注意点は?

人間ドックで若い頃より「大腸に10個以上の憩室がある」と言われています。 今年の大腸癌検査でポリープが見つかり、切除してもらいましたが、その時に「大腸憩室」があると、腸に孔が開くことがある」と言われ、恐ろしくなっています。 日常生活で気を付けることは何でしょうか?
●68歳・男性


【答】

大腸の壁が嚢状(袋状)に外側に突出した状態を「大腸憩室」といいます。 大腸の壁は内側から粘膜、筋肉、漿膜という3つの層から成り立っています。 大腸憩室ができる部分は、筋肉の層が欠如して壁が弱くなっています。また、憩室の近くには血管が走っています。 憩室ができる場所は、日本人では右側の大腸に多く、欧米人では左側の大腸に多くなっています。 また、右側の大腸憩室は若年者に多く、欧米人では左側の大腸(特にS字結腸)憩室は高齢者に多いとされています。 近年、日本でも左側の大腸憩室が増加しています。 大腸憩室は食物繊維の少ない食事によって便の量が少なくなり、 これを押し出そうと過剰な腸管運動が起こる結果、腸管内の圧力が高まって発生すると考えられています。 大腸憩室の多くは、一生、無症状で経過し、症状がなければ治療の対象にはなりません。 治療にが必要になるのは合併症を起こした場合です。合併症には憩室内に便が詰まったりして炎症を起こす「憩室炎」や、 憩室がもとになってその周囲に膿が溜まる「憩室周囲膿瘍」などがあります。 憩室周囲膿瘍がひどくなると、腸に孔が開く穿孔が起こります。 また、炎症が膀胱や皮膚などの周囲の臓器にも及ぶと、それらの臓器とつながる孔(瘻孔)が形成されることもあります。 合併症が起こる際には、腹痛や発熱などの症状が出ますので、これらの症状で受診する際には、医師に憩室があることをお伝えください。 大いに診断の参考になります。また、憩室部分の血管から出血が起こることもあります(憩室出血)。 大量の下血があったら、やはり憩室があることを医師に伝えると診断の参考になります。 なお、憩室出血の多くは、時間が経過すると治まります。 大腸憩室の成り立ちや合併症のことを考慮すると、日常生活では食物繊維を必要量摂取したり適度な運動を行ったりして、 便秘をしないように注意することが大事です。快食、快便を心がけましょう。

(この答えは、2019年12月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)