大腸憩室
『大腸憩室』は、高齢者や便秘症の人に多い病気です。 大腸憩室は、昔は日本人には少なかった病気ですが、近年増加傾向にあり、男性に多く、年代が上がるにつれて増えていきます。
■大腸憩室とは?
大腸の壁が外側に押し出されて、できた窪みに炎症が起きる
便やガスが通過する際にかかる大腸の中の圧力によって、大腸の粘膜の一部が袋状となって外側に押し出されると、 直径数mm程度のポケット状の窪みができます。この窪みを「大腸憩室」といいます。 憩室は多数できることもありますが、憩室があるだけならあまり問題はありません。 しかし、憩室に細菌感染が起こると、炎症を生じることがあります。 これが「大腸憩室炎」で、感染は、便が憩室の中に入り込んで、起こることもあります。 大腸憩室炎を起こすと、お腹の右下や左下辺りに腹痛が起こります。 炎症がひどくなると、発熱が起きたり、炎症部分から出血して血便が現れることもあり、人によっては腹痛を繰り返すこともあります。 また、炎症を伴わず突然出血し、血便だけが現れる「大腸憩室出血」を起こしたり、 粘膜間に膿をもったりすこともあります。 「憩室」が破れると、腸の内容物が腹腔にばらまかれて、 腹膜炎を起こすことになります。
原因としては、肉食が多く、繊維質が少ない食事が指摘されています。 高脂肪、美食、ストレスを避け、和風の食事に切り替えることで症状は改善してきます。
■大腸憩室が起こりやすい人
「大腸憩室」ができやすいのは、高齢者や便秘がちの人です。 高齢者の大腸に憩室ができやすいのは、加齢と共に大腸壁の筋層が弱って、腸内の圧力に負けやすくなるからです。 60歳以上では約2割の人に憩室があるといわれています。 また、便秘がちの人も、大腸に大量の便が滞留して大腸の圧力が高まるために、 大腸の壁の薄い部位に憩室ができることがあるので、若い人でも大腸憩室ができやすいのです。 窪みができていること自体、正常な形の腸とはいえず、憩室ができる人の腸は、硬く、狭くなっています。 このような腸は、部分的に痙攣や収縮が見られるので、便やガスの流れが阻害され、便秘を引き起こします。
■大腸憩室炎の診断と治療
「抗菌薬」を使用するのが基本。炎症が強ければ絶食する
●大腸憩室炎の診断
急な腹痛や発熱で医療機関を受診した場合、問診で症状や便秘の有無などを聞き、血液検査で炎症の有無などを調べます。 血液検査の結果、炎症がそれほど強くなければ、「大腸内視鏡検査」や「注腸造影検査」で憩室の部位や炎症の程度などを調べます。 ただし、炎症が強い場合は、病状を悪化させる可能性があるので大腸内視鏡検査や注腸造影検査は行わず、「CT検査」などを行います。
●大腸憩室炎の治療
軽い場合は外来で、重症の場合は入院して治療します。 治療では「抗菌薬」の内服薬や注射薬を用いて炎症を抑え、炎症が強い場合は、同時に1日程度絶食して腸を安静にします。 多くは3~4日程度で炎症は治まりますが、抗菌薬は1週間ほど使用します。 ただし、憩室に完全に孔が開いて腹膜炎を起こしてしまった場合や、細菌感染により憩室に「膿瘍(膿がたまった状態)」 ができた場合などは、緊急手術が必要になります。 時に、大出血を起こすこともあり、絶食しても出血が止まらない場合は、内視鏡で止血します。