胆道癌

胆道癌』の主な自覚症状は、皮膚や口の粘膜、白目の部分などが黄色くなる「黄疸」です。 胆道癌の人の約55%に黄疸が現れ、多くは「便が白い」「茶褐色の尿が出る」 「皮膚の激しいかゆみ」などの症状を伴います。


■「胆道癌」とは?

胃で消化した食べ物が小腸に送られるとき、肝臓でつくられる「胆汁」という、 脂肪の消化・吸収を助ける消化液が分泌されます。この胆汁の通り道が「胆道」です。 胆道は、肝臓と十二指腸と結ぶ管である「胆管」と胆汁を一時的に溜める袋である 「胆嚢」から成り立っています。 『胆道癌』とは、胆道にできる癌のことで「胆管癌」「胆嚢癌」を併せたものです。 胆道癌は周囲の臓器に転移しやすく、治療の難しい癌だとされていますが、最近では、手術、放射線、 抗癌剤による治療に、より安全で効果的な方法が登場してきています。


■胆道癌の特徴

胆道癌は60~70歳代に多く、男性より女性に多く見られます。消化器癌の中では、患者数は少ない方で、 日本では、胆道癌を発症する人は年間3000~5000人ほどと推定されています。 胆嚢の壁は2~3mmと薄いため、胆嚢癌には比較的早い段階から周囲の組織に転移しやすいという特徴があります。 胆道癌の患者さんの60~70%は、胆石を持っています。また、胆石を持っている人は持っていない人より、 胆道癌が4~5倍起こりやすいといわれています。このことから胆道癌は胆石と関係があると考えられていますが、 詳しいことはまだ解明されていません。

また、総胆管と膵管の「合流異常」がある場合にも胆道癌が起こりやすいことがわかっています。 通常、胆管と膵管は、十二指腸への出口で合流し、胆汁や膵液が十二指腸へ流れ込みます。 ところが、生まれつき十二指腸への出口より手前で合流していると、膵液が胆嚢へ流れやすく、 そのために胆道癌が起こりやすくなると考えられています。


■胆道癌の症状

主な自覚症状は、皮膚や口の粘膜、白目の部分などが黄色くなる「黄疸」です。 胆管は細いため、癌で塞がれると、胆汁が流れなくなり、胆汁の成分である「ビリルビン」 という黄色い色素が血液中にあふれ出し、黄疸の症状が現れます。 黄疸は、胆管癌では比較的早期から現れますが、胆嚢癌では進行してから出ないと現れません。 調査によると、胆道癌の人の約55%に黄疸が現れ、多くは「便が白い」「茶褐色の尿が出る」 「皮膚の激しいかゆみ」などの症状を伴います。一方、約半数の人には黄疸が現れません。 「軽い腹痛、吐き気、食欲不振」などは現れますが、通常よくある症状のため、 これらから胆道癌を発見することは難しいといえます。


■胆道癌の検査

胆道癌が疑われる場合は、まず血液検査が行われます。 胆道癌が進行すると肝機能に異常が生じることがあるため、血液中の「γ-GTP」「ALP」などの値を調べたり、 腫瘍マーカーの「CEA」「CA19-9」を調べます。 通常の血液検査だけでは、早期の胆道癌が発見できない場合もあるため、 さらに次のような検査で、癌の有無などを診断します。

▼超音波検査
胆道の異常を調べる代表的な検査で、小さな癌も見つけることができます。

▼MDCT(マルチディテクターCT)
CT(コンピュータ断層撮影)検査を改良し、短時間で組織の微細な構造を撮影できるようにした検査です。 さまざまな方向から撮影したり、3次元の画像に表すことができるため、癌の状態やリンパ節への 癌の大きさ、形状、広がり、転移の様子などを知ることができ、治療方針を決定するのに役立ちます。

▼MRCP(磁気共鳴胆管膵管撮影)
MRI(磁気共鳴画像)検査を応用して、胆管と膵管を撮影する検査で、合流異常の有無などを調べます。 胆管と膵管を調べる検査には、内視鏡を口から十二指腸まで挿入し、胆管と膵管に造影剤を注入して エックス線撮影する「ERCP(内視鏡的逆行性胆管水管造影)」もありますが、 最近では、負担の少ないMRCPが主流となっています。

胆道癌が増えてくる50歳を過ぎたら、定期的に画像検査を受けることが大切になります。 特に、胆石や胆嚢ポリープがあると診断された人は、一度消化器の専門医を受診し、 半年に1回は画像検査を受けるようにしましょう。


■胆嚢癌の進行度

胆嚢癌の進行度は、おおよそ次のようにⅠ期~Ⅳ期に分けられます。

▼Ⅰ期
癌が、胆嚢の壁の粘膜や筋層までにとどまっていて、リンパ節に転移がない状態です。 癌が胆嚢の内腔に盛り上がっていることもあります。

▼Ⅱ期
癌が、胆嚢の壁を破るかどうかくらいの状態です。Ⅰ期よりは進行し、胆嚢に近いところのリンパ節に 転移していることもあります。

▼Ⅲ期
癌が、胆嚢の壁を破ってわずかに広がっている状態で、やや離れたところのリンパ節に転移しています。

▼Ⅳ期
癌が、肝臓など周囲の臓器や、遠くのリンパ節や腹膜へ転移している状態です。

■胆道癌の治療「手術」

胆道癌の治療の基本は、手術で胆管や胆嚢を切除することです。手術は進行度に合わせて行われます。 Ⅰ期(早期癌)で、癌が胆嚢の壁の粘膜や筋層までにとどまっている場合は、開腹して胆嚢を取り除く 「胆嚢摘出術」が行われます。この手術で約90%は完治します。 胆嚢に胆石がある場合には、腹腔境下胆嚢摘出術が行われますが、癌がある場合に腹腔境を使って胆嚢を摘出すると、 腹腔内に胆汁がこぼれ、癌細胞が散らばる危険性があります。 そのため、癌を疑う場合は、開腹手術を行ったほうがより安全に癌を取り除くことができるといえます。 Ⅱ~Ⅳ期(進行癌)の場合は、癌の広がりの程度や、リンパ節への転移の仕方などによって、 次のような手術が行われます。

▼胆嚢(肝床)切除術
胆嚢だけではなく、肝臓の一部や近くのリンパ節を取り除きます。

▼肝区域または肝葉切除術
癌が肝臓の広範囲に広がっている場合には、胆嚢と一緒に、肝臓のやや広い部分(肝区域)を切除したり、 肝臓の右側の部分(右葉)を全て切除します。胆管ややや広い範囲のリンパ節も切除します。

▼膵頭十二指腸切除術
癌が膵臓や十二指腸にまで広がっている場合は、胆嚢や肝臓と一緒に膵臓の一部や十二指腸、 さらにそれらの周囲のリンパ節を切除します。この手術では、合併症が起こりやすく、 また、再発も少なくないため、患者さんに適するかどうかが慎重に検討されます。

■胆嚢癌の治療「抗癌剤」

これまで、胆嚢癌では、抗癌剤の効果はあまり期待できませんでした。 しかし最近では「塩酸ゲムシタビン」が胆嚢癌に使われるようになり、治療成績は以前より上がっています。 塩酸ゲムシタビンによる治療は、手術が困難な進行癌に対して行われます。 また、手術後に再発予防効果を期待してこの治療が行われることもあります。 治療は「週1回の点滴を3週間継続し、その後1~2週間休薬」を1コースとして繰り返します。 これは、外来で受けることができます。


■胆管癌の治療「放射線治療」

従来の放射線治療は、体の外から患部に放射線を当てていました。 しかし最近は、体外からの照射に加え、「腔内照射」という方法で胆管内の癌の内側からも 放射線照射を行うようになっています。胆管癌の場合に行われます。


■胆嚢ポリープと癌

胆嚢にできるポリープには、「コレステロールポリープ」「胆嚢腺腫」「腺癌」などがあります。 「コレステロールポリープ」は、胆汁に含まれるコレステロールが胆嚢の壁に沈着して盛り上がったもので、 茎のある茸のような形をしています。ほとんどが良性で、まず、癌化することはありません。 「胆嚢腺腫」は良性、「腺癌」は悪性のポリープで、茎が太い場合や茎がない場合が多く見られます。 胆嚢腺腫と腺癌の区別は難しい場合もあり、きちんとした判別が必要になります。 胆嚢ポリープで最も多いのはコレステロールポリープですが、胆嚢ポリープがあるといわれた人は、 念のために定期的に検査を受けておきましょう。


■最後に

胆道癌の場合、早期発見、早期治療が重要です。もちろん、胆石があるからといって必ず胆道癌が起こるというわけ ではないので、心配しすぎることはありません。ただし、胆石を持つ人は、定期的に検査を受け、 胆道癌にも気をつけることが大切です。また、胆管と膵管の合流異常がある場合は、胆嚢を摘出するなど、 癌を予防するための治療を行うのが基本とされます。