慢性膵炎

慢性膵炎』は、急性膵炎を繰り返すうちに移行することが多い病気です。 長期間にわたって膵臓に小さな炎症が繰り返し起こり、徐々に膵臓の組織が破壊されていきます。 炎症が起こったり、治まったりということを繰り返すうちに「線維化」が進み、膵臓が硬くなって萎縮していき、しだいに膵臓の機能が失われていきます。 慢性膵炎の初期症状は、みぞおちから左上腹部、背中にかけて、鈍い痛みが繰り返し起こります。 特に食後や飲酒後に痛みが起こりやすいのが特徴です。 慢性膵炎は、ほぼ治ることはなく、膵臓癌の危険因子となるため、できるだけ早い段階で発見し、治療を行い、進行を遅らせることが大切です。


■慢性膵炎とは?

慢性膵炎は、膵液膵臓自体を溶かす自己消化が、長年かけて起こる病気です。 自己消化によって、膵臓の組織が壊れたり、硬くなる線維化が起こります。その結果、膵臓全体が委縮してしまいます。 また、膵管が拡張したり、その中に膵石と呼ばれる石ができたりします。 進行すると、膵液自体が分泌されなくなり、食べ物を消化・吸収する働きが失われていきます。 急性膵炎は再発しやすく、再発を繰り返すうちに、慢性膵炎に移行します。 慢性膵炎と診断される人は、毎年約1万8000人おり、増加傾向にあります。男性が女性の4.6倍多く発症しています。

【関連項目】:『膵臓』


■慢性膵炎の原因と炎症の起こる仕組み

慢性膵炎の原因は、男性ではアルコールが最も多く、75.7%を占めています。 お酒を飲むと、アルコールの代謝に伴って、消化酵素を作る膵臓の細胞が障害されたり、 分泌される膵液が酸性に傾くなどの変化が年単位で積み重なり、自己消化が徐々に起こると考えられています。 また、多量のアルコールは膵臓を刺激して、「膵液」を過剰に作らせます。 すると、膵臓の中にある「膵管」を多量の膵液が流れるので、膵管の内圧が上がり、膵液に含まれる消化酵素によって、膵臓の組織に小さな炎症が引き起こされます。 このような炎症を繰り返すことで、膵臓が線維化し、破壊されていくと考えられています。

日常的にお酒を飲む場合、少量でも発症する危険性が高まり、量が増えるにしたがって発症しやすくなるとされています。 アルコールを1日に20〜40g(ビール500ml缶1〜2本、または日本酒1〜2合)飲むと、慢性膵炎を発症する危険性は約2.6倍になるという報告もあります。 また、女性は、男性よりアルコールの影響を受けやすく、発症の危険性が高いことがわかっています。 ある調査によると、1日に日本酒換算で5合以上のお酒を飲む「大量飲酒者」は年々増加しており、その10〜15年後に慢性膵炎の患者数も同じように増加しています。 このことからも、アルコールと慢性膵炎は、密接な関係にあることがわかります。

また、「胆石」が原因になることもあります。 胆石が「総胆管」に落下して、膵管と合流する「乳頭部」に一時的に詰まると、膵管が塞がれ、膵液の流れが滞ります。 それが繰り返されることによって、慢性膵炎が起こります。 胆石による慢性膵炎は、女性に多いのですが、女性の場合は、原因を特定できない「特発性」の慢性膵炎も多く見られます。 女性では、特発性が51.0%と約半数を占めます。


■慢性膵炎の症状と経過

慢性膵炎は、進行の程度で「腹痛期」「移行期」「膵機能不全期」の3つの病期に分けられ、病期によって症状が異なります。

▼腹痛期
飲酒や暴食、脂質の多い食事などがきっかけで、へその上からみぞおちのあたり(上腹部)に痛みが繰り返し起こります。 腹部の膨満感や重圧感などの不快な症状が続いたり、背中の痛み、吐き気、嘔吐が起こることもあります。 特に、食後や飲酒後に、痛みが起こりやすいのが特徴です。

▼移行期
移行期に入ると、腹痛は軽くなってきます。しかし、慢性膵炎が治まったわけではなく、 病気が進行して膵臓の機能が低下し、膵液の分泌が減るために痛みが起き難くなるのです。 この頃から、直径5mm〜1cm程度の膵石ができやすくなります。膵石が詰まって膵管内の圧力が上昇すると、症状が悪化しやすくなります。

▼膵機能不全期
腹痛期から膵機能不全期に5〜10年かけて進行すると考えられ、膵臓の機能はかなり失われてきます。 消化酵素をつくる働きが低下すると、食べたものをうまく消化吸収することができなくなります。 膵液が分泌されなくなることで、消化・吸収が不十分になるため、 また、摂取した脂肪が消化されずに排泄されて、ふわふわして軟らかい脂肪便が見られるようになり、下痢、体重減少が起こります。 さらに、血糖値を下げるインスリンの分泌も低下し、糖尿病を併発しやすくなります。

慢性膵炎の多くは、腹痛がきっかけで発見されます。まれに腹痛が起こらないこともあり、進行して脂肪便が現れるなどによって気付くこともあります。 慢性膵炎は、発症から10年ほどで膵機能不全期へと進行し、破壊された組織は元へと戻りません。 膵臓の機能が失われる前の腹痛期に病気を発見して、適切な治療を受けることが大切です。


■膵臓がんの危険性

慢性膵炎になると、膵臓がんを発症する危険性があるため、定期的に膵臓がんの検査を受けることをお勧めします。 慢性膵炎による膵臓がんの発症を防ぐためには、慢性膵炎を適切に治療して進行を遅らせることが重要です。

【関連項目】:『膵臓がん』


■その他

●自己免疫性膵炎

慢性膵炎と似た症状が起こる病気に、飲酒とは関係なく、免疫の異常によって起こる自己免疫性膵炎があります。 腹痛は軽く、黄疸が起こりやすく、高齢の男性に多いなどの特徴があります。 ステロイド薬でいったん治ることが多いのですが、再発しやすく、注意が必要です。 また、膵臓がんに似ているため、見極めが重要です。