虫垂炎
大腸の一部にできる炎症
■症状と特徴
急性腹症の中で最も頻度が高いのが虫垂炎です。 右下部にある盲腸(大腸の始まりの部分)に付属している6~10cmくらいの突起が虫垂です。 虫垂に炎症が起こると、上腹部痛、臍の周囲の痛み、吐き気、便秘(下痢の場合もある)、37~38℃の発熱などがみられます。 虫垂炎の痛みの部位は最終的に右下腹部に落ち着くまで動きます。 虫垂炎は以下の3つに分類されます。
- ▼カタル性虫垂炎
- 炎症が粘膜に限定され、虫垂は充血し、腫大する。
- ▼蜂窩織炎性虫垂炎
- 虫垂内腔に血性膿性浸出液が溜まる。
- ▼壊疽性虫垂炎
- 腫脹がみられ、黒色の壊死性変化、穿孔が起こっている。
治療が遅れると、虫垂が破裂し、腹膜と癒着するなどして、腹膜炎を引き起こします。 高熱があるときは、膿瘍の合併を疑います。
乳幼児や高齢者には少なく、10~30代の青年期によくみられます。 子供が虫垂炎を発症すると進行が非常に速いので、早めの受診が大切です。 高齢者には腹痛や発熱が見られないこともあり、見逃して悪化させることがあるので注意が必要です。 妊娠中でも虫垂炎の手術を受けることができます。 ただし、婦人科系の病気には虫垂炎に似た症状を起こすこともあるので、次のような兆候を目安に虫垂炎を見分けるようにします。
- 回盲部(回腸と盲腸の境界付近)を徐々に圧迫し、急に手を離すと痛みが強くなる。
- 仰向けに寝かせ、下腹部を掌で頭部方向に圧迫すると、回盲部に鋭い痛みを感じる。
- 左向きに寝かせ、マックバーネー圧痛点(臍と右上前腸骨棘を結ぶ線上の外側3分の1の位置を押すと、痛みが強くなる。
■原因
食事や糞石などによる虫垂内腔の閉塞、虫垂への細菌感染が原因として疑われていますが、明らかではありません。 暴飲暴食、風邪、便秘などがきっかけとなって起こることが多いといわれます。
■治療
症状が軽いカタル性虫垂炎の場合は、抗菌薬を服用して経過を観察する場合がありますが、虫垂炎が発見されたら、原則、虫垂の切除を行います。 かつては、右下腹部の切開で切除手術を行いましたが、近年は腹腔鏡手術を行うことも増えています。 傷が小さくて済み、場合によっては日帰り手術も可能です。