胃腸の病気の自己診断

人間は、胃が丈夫なら好きなものを食べられるし、腸の働きが活発なら、消化・吸収力も 免疫力も強まります。 つまり、胃腸が丈夫で活発に働いていれば心身ともにいつまでも健康でいることができる、といってもいいでしょう。 そこで重要なのが胃腸が出す「不調のサイン」を普段から見落とさず、的確に対処することです。 下記の腹痛、下痢、胃痛、ムカツキなど胃腸の困った症状の原因は何かがすぐわかる自己診断表 で胃腸が出す不調のサインとその原因などをチェックしましょう。


●胃が出す不調のサイン

空腹時の胃痛は胃潰瘍、食後の胃痛は慢性胃炎

▼胃もたれ・食欲不振
日本人には、「胃下垂」「胃弱」に悩む人が大勢います。 胃もたれがずっと続く人、食欲がない人、お腹がぽっこりと突き出ている人、そうした人は、胃下垂の可能性が大です。 胃下垂は、胃の上端の位置は正常なのに、下端が正常な位置より下がっている状態。 そのため、食べ物がいつまでも胃の中に溜まったままで、胃もたれや食欲不振などが起こります。 胃もたれ・食欲不振・胸焼け・胃痛といった症状があり、そして、食事をするとすぐに下痢をするのは、胃弱の人によく見られます。 胃弱は、胃の働きが低下して胃酸の分泌や蠕動運動(内容物を先送りする運動)が滞った状態のこと。 そのために消化不良を起こして、胃もたれ・食欲不振・胸焼け・胃痛・下痢を招くのです。

▼胃の痛み
胃の痛みには、食前、食後、さらに食事の1~2時間後、さらに飲酒後といったように、痛む時間帯で違いがあります。 たとえば、お腹がすいて胃が空っぽのときに胃がシクシク痛むことがあります。 こうした食前に胃の痛みがある場合は、「胃潰瘍」が考えられます。 食後に、胃がむかついたりシクシク痛んだり、胸焼けがずっと続いたりする場合は、 「慢性胃炎」と考えていいでしょう。 他に、食欲がない、アンモニア臭のゲップが出る、口臭が腐ったような臭いになる人も、慢性胃炎です。 食後1~2時間たって、キリキリとした痛みを胃の辺りに感じることがあります。 「食べ過ぎ」「胃痙攣」のときに、こうした痛みがしばしば現れます。 しかし、特に、脂っこい食事を摂ったあとに痛みが強くなってきたら、別の病気の可能性があります (背中に突き抜けるような痛みのある場合は 「急性膵炎」、 みぞおちから右肩にかけて痛みが走るようなら「胆石」が考えられます)。 飲酒後の胃の痛みは、「急性胃炎」の疑いが大。 ムカツキや吐き気を伴うことも多いようです。

▼ゲップと口臭
ゲップが頻繁に出たり口臭が強かったりするのは、 「ピロリ菌」に感染している人に多く、 ピロリ菌の作り出すアンモニアがそうさせているのです。 「胃下垂」や、胃に癌やポリープができている場合も、腐ったようなゲップや口臭がします。 ただし、この場合はピロリ菌とは関係がありません。 胃に癌やポリープがあると、食べ物がスムーズに胃を通過しないため、食べ物が異常発酵して腐ったような臭いがするのです。

▼胸焼け
胸焼けを起こすと、キューンとした痛みが込み上げてきます。 朝の起き抜けにこのような症状が起こったら、胃酸が逆流して起こる 「逆流性食道炎」が疑われます。 朝の起き抜け以外にも胸焼けがするときは、「胃癌」の可能性を疑ってみる必要があります。 胃癌の場合、初期には自覚症状がありません。 しかし、進行すると、胸焼けのほか、食欲がない、食べ物の好みが変わる、ゲップが出る、吐き気がするといった数多くの症状が現れます。

胃の病気と不調を示すサイン
病名 主な症状
胃下垂 ・胃もたれが長く続く
・食欲不振がたびたび起こる
・お腹がぽっこり突き出る
胃弱 ・いつも食欲がない
・胃もたれ、胸焼け、胃痛が常にある
・食事をした後すぐに下痢をする
急性胃炎 ・食事の後や酒を飲んだ後に鈍痛がある
・食事を摂った後すぐに、胃痛を伴う吐き気がある
慢性胃炎 ・食欲があまりわかない
・胸やけがする
・ゲップがよく出て、アンモニア臭がする
・口臭が強く、しかも腐ったようなにおいがする
逆流性食道炎 ・仰向けに寝ていて、朝起きた直後にキューンとした胃の痛みや胸焼けをすることがある
胃潰瘍 ・食欲が急に衰えた
・腹部の右上に痛みがある
・オレンジジュースを飲んだ後、胃がシクシクとしみるように痛むことがある ・ふだんは食欲旺盛だが、頻繁に胸焼けが起こるようになる
胃癌 ・食べ物を食べるたびに胃が痛む
胃ポリープ ・ふだんは食欲旺盛だが、頻繁に胸焼けが起こるようになる
・ゲップが出たり口臭が強くなったりするほか、口臭が腐ったようなにおいがする
胃アトニー、胃炎 ・シクシクとした鈍痛や食欲不振
胃神経症 ・胃もたれやムカツキ、吐き気


●腸が出す不調のサイン

腸の異常を知らせる腹痛・下痢・便秘

▼腹痛
よく知られているのが、右の下腹が痛む「虫垂炎」。 左の下腹が痛む場合は、「S字結腸」(大腸の末端に近い部分)に癌ができている可能性が考えられます。 みぞおちや右横腹の上辺りが傷むときは、「十二指腸」の可能性が大です。

▼便秘と下痢
腸の癌の大半は、「大腸」に起こります(つまり、小腸癌は多くありません)。 癌の発生した場所や大きさによって症状は異なりますが、便秘や下痢が続いたり、この2つが交互に繰り返し起こったりするのが特徴。 ほかには、食欲不振や全身倦怠感、体重減少などに悩まされたり、出血が原因で貧血になったりします。 便秘と下痢が繰り返し起こるようなときは、「大腸癌」のほかにも、 「過敏性腸症候群」の疑いがあります。 過敏性腸症候群は、近年増えており、下痢や便秘が慢性的に続きます。 腹痛も起こりますが、痛む場所が一定ではなく、上腹部であったり下腹部であったり、その周辺であったりします。

▼血便
大腸の内側の粘膜にただれが起こる病気で、原因不明の難病に指定されているのが、 「潰瘍性大腸炎」。 多くの場合、粘血便で始まり、続いて腹部全体に痛みが発生します。 血便には、第一に、どす黒い色をしたタール便があります。 この場合、胃や十二指腸からの出血の可能性があるので、 「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」を疑ってみてください。 第二に、少し赤みがかっている便は、大腸の病気の可能性があります。 例えば、「大腸癌」「ポリープ」などがあるときには、たまに血液が混じることがあるからです。 第三に、便と一緒に鮮血が滴り落ちる場合があります。 この場合は、たいてい「痔」による出血と考えられます。 ただし、肛門に近いところにある直腸にポリープや癌があり、それが原因になっている場合もあります。

腸の病気と不調を示すサイン
病名 主な症状
虫垂炎 ・右下腹が痛い
S字結腸癌 ・左下腹が痛い
・軽い下痢や便秘が続いたり、この2つが交互に起こることがある
・食欲がわかない
・全身倦怠感が起こったり、体重の減少などの全身症状が起こる
・出血が原因で、貧血になったことがある
十二指腸潰瘍 ・食事を摂った後に腹痛が起こる
・吐血や下血が起こる
・ゲップが出やすくなる
大腸ポリープ ・キノコ状のポリープは、腸の内容物で傷つき、出血を起こしやすい
・時には腹痛を伴う
大腸癌全般 ・便秘と下痢が続いたり、これを交互に繰り返したりすることがある
・暗赤色や鮮血色の血便やや粘膜が混じることがある
・下腹部痛が起こりやすくなる
潰瘍性大腸炎 ・トイレへ行ったとき、粘液や血液の混じった粘血便が見られる
・腹部全体、あるいは下腹部に痛みが起こる
・下痢が起こりやすくなる
過敏性腸症候群 ・便秘や下痢、腹痛などが慢性的に続く
・上腹部、下腹部、へその周辺などと、腹痛の場所が一定しない
・便秘や下痢が続いたり、コロコロ便が出たりする
大腸憩室炎 ・発熱や腹痛が現れる
上腸間膜動脈閉鎖症 ・激しい腹痛や下血などが突然起こる
直腸癌 ・下痢をしやすい
・排便時間がずれたり、回数が増えたりして、リズムが乱れる
・出血が起こりやすい