不整脈「ペースメーカで日常生活を快適に」

不整脈でも「ペースメーカ」で日常生活を快適に過ごすことができます。

■除脈

除脈は起こり方によって大きく2つに分けられる

心臓は、電気信号によって収縮と拡張のリズムが保たれています。ところが、加齢などによって電気信号が発生しなくなったり、 伝達が悪くなると、収縮と拡張のリズムが遅くなる「除脈」が起こります。除脈は大きく2つに分けられます。

▼洞不全症候群
電気信号を発生させる「洞結節」の細胞の数が減ったり、機能が低下するために電気信号がうまく発生しなくなります。 心電図では、本来現れるはずのP波が見られず、QRS波と次のQRS波の間隔が通常より長くなります。 また、洞不全症候群の中には、「心房細動」を伴うケースも多く、 この場合は、長い心停止を伴うことがあります。

▼房室ブロック
「房室結節」の周辺の異常によって、房室結節を通って心室へと向かう電気信号の伝達が悪くなるために起こります。

■ペースメーカ

失神などの症状があれば、ペースメーカを埋め込む

除脈の治療法には、「薬物療法」「ペースメーカ」による治療があり、 薬物療法では脈拍を速くする薬が使われます。基本的に、意識を失うなどの危険な症状を伴う除脈では、 ペースメーカの埋め込み手術が行われます。


●ペースメーカによる治療

ペースメーカは、除脈の発生を感知して心臓に電気信号を送り、心臓の収縮と拡張のリズムを調整する装置です。 電気信号を発生する本体と、除脈を感知したり電気信号を送るリードから成ります。 本体には、集積回路(IC)と電池が入っており、最も小さいものでは重さが12g程度です。 日本では、1年間におよそ5万~6万人が新たにペースメーカの埋め込み手術を受けており、現在約50万人が使用しています。 手術は2時間ほどで終わり、入院期間は一般的に1週間程度です。


●ペースメーカの3つの留意点

▼定期的なチェックと交換が必要
ペースメーカの調子が悪くなる可能性もあるため、定期的なチェックを受けます。電池は消耗しますから、植え込んでから 数年後には交換が必要です。また、ペースメーカが設定どおりに作動しているかどうかを確認するために、 自分で脈拍を測る「検脈」も重要です。1日1回程度は脈拍を測りましょう。最近は電話回線を利用して ペースメーカの状況などを確認する「遠隔モニタリング」も行われています。 このシステムを利用すれば、患者さんが自宅にいても情報を担当医に伝えることができます。

▼植え込んだ側の腕に負担がかかる動作を避ける
ペースメーカを植え込んだ側の腕を過度に動かすと、リードが破損することがあります。 例えば、腕立て伏せや鉄棒のぶら下がりなどはできるだけ避けるようにしましょう。

▼外部からの電磁波の影響には注意する
ペースメーカは携帯電話など外部からの電磁波に影響されます。携帯電話はペースメーカのある側と反対側の耳に当てて使用し、 胸ポケットには入れないようにします。他の人が携帯電話を使っているときは、22cm以上離れるようにしましょう。 SDカード等を使用する際は、カードリーダ本体から12cm以上離れます。また、電磁波を出すほかの電子機器にも注意が必要です。

●手術後に注意が必要な症状

▼めまいがする、体がだるい
ペースメーカが、電子機器から出る電磁波を心臓の動きと誤って感知すると、誤作動を起こしてめまいなどが現れます。 意識を失う場合もあります。

▼手術の傷痕が腫れる
ペースメーカは人間にとって異物なので、感染症を起こし、手術の傷痕が腫れたり発熱することがあります。

▼しゃっくりが頻繁に起きる
極めてまれなことですが、リードが心臓の外に抜け出て「横隔膜」を刺激すると、しゃっくりが頻繁に起きます。

気になる症状がある場合は、担当医に相談するとよいでしょう。


■頻脈の場合

頻脈の場合、植込み型除細動器が用いられる

ペースメーカ以外には「植え込み型除細動器」という治療機器も用いられます。 これは「心室頻拍」「心室細動」など突然死の恐れがある頻脈に用いられます。 植え込み型除細動器は、心室頻拍が起こると、それより少し速い電気刺激を送る「オーバーペーシング」によって 頻脈を止めます。心室細動が起こった場合には、心臓に電気ショックを与えて脈拍を正常に戻します。 いわば、埋め込み型の「AED(自動体外式除細動器)」のようなものです。