若年・中年を襲う突然死『遺伝性不整脈』
『遺伝性不整脈』は、若年や中年の人の突然死の減となることが多い、危険な不整脈です。 主な遺伝性不整脈としては、「先天性QT延長症候群」「ブルガダ症候群」「カテコラミン誘発多形性心室頻拍」の3つがあります。
■遺伝子の変異が原因の不整脈が若い人の突然死を引き起こす
突然死は全体としては高齢者に多いのですが、遺伝子の変異が原因となって発症する遺伝性不整脈による突然死の多くは、若い人に起こります。 主な遺伝性不整脈としては、先天性QT延長症候群、ブルガダ症候群、カテコラミン誘発多形性頻拍があります。
■運動時や興奮時、睡眠中などに注意が必要な、先天性QT延長症候群
先天性QT延長症候群は、心電図検査でQT延長という特徴的な異常が現れる病気です。
通常の心電図検査で発見することができます。QT延長があると、運動時や興奮時などに、トルサードボアンという危険な不整脈が起きやすくなります。
この病気には遺伝子の型によって主に3つのタイプがあり、発作を起こす状況が異なります。
1型は、大半が運動中に起こります。2型は驚きや興奮が引き金となり、妊娠・出産の時期に起こることもあります。
3型は、睡眠中や安静時によく起こります。遺伝子の型は血液検査で分かります。
治療では、薬で危険な不整脈を予防します。タイプによって選択される薬が異なり、1型と2型にはβ-遮断薬が使われます。
2型の場合、β遮断薬の効果が出にくいようなら、他の薬が併用されます。また、3型にはメキシレチンという薬が使われます。
これらの薬は、発作が起こっている急性期にも有効です。
トルサードボアンから心室細動に移行することもあるため、それに備え、心室細動が起きた時に心臓にショックを送り、
正常な拍動に戻す植込み型除細動器が使われることもあります。鎖骨の下に小型の機器を植え込み、数年に一度交換します。
植込み型除細動器は、これまでに心室細動や一時的な心停止を起こした人に使われます。
それ以外では、失神やトルサードボアンを起こしたことがあるか、家族に突然死した人がいるか、β遮断薬が効きにくいかなどを考慮して決められます。
■睡眠中に心室細動が起こるブルガダ症候群
ブルガダ症候群は、睡眠中や安静時に心室細動が起き、突然死することがある病気です。 多くは30~50歳で最初の発作が起き、男性に多いという特徴があります。心電図にST上昇という特徴的な波形が現れるため、心電図検査で発見されます。 治療では、1回でも心室細動や心停止を起こしたことがある人は、植込み型除細動器が使われます。 それ以外の人は、失神したことがあるか、家族に突然死した人がいるか、心臓電気生理検査の結果などを考慮して判断されます。 薬は確実に効くものではあまりありません。
■子供に多いカテコラミン誘発多形性心室頻拍
カテコラミン誘発多形性心室頻拍は、主に運動をきっかけとして心室頻拍が現れ、失神や突然死を起こす病気です。
子供に多く、10歳前後によく発症します。
この病気の診断には運動負荷試験が必要です。運動中に原因不明の失神を起こしたことがある人、てんかんと診断されているがてんかんの治療で改善しない人、
家族にこの病気がある人がいる場合には、検査が勧められます。
治療では、まず薬による治療が行われます。使われるのはβ-遮断薬で、これが効きにくい場合には、植込み型除細動器が使用されることもあります。
また、厳重な運動制限も行われます。