心筋症による突然死

心臓は、心臓の筋肉、つまり心筋が正常に動くことで、全身に血液を送り出すポンプとしての役割を果たしています。 心筋症は、この心筋の異常により、心臓の働きに異常をきたす病気です。 心筋症は、心筋梗塞や重い狭心症に次いで、突然死を起こしやすい病気です。 心臓の異常にいち早く気付き、危険な不整脈を予防しましょう。


■全身に血液を送り出すための心筋の働きが異常になる

心筋症は、代表的なものに、肥大型心筋症、拡張型心筋症、不整脈源性右室心筋症があります。


■心筋が異常に厚く肥大する肥大型心筋症

肥大型心筋症は、心筋が異常に厚く肥大する病気です。左右の心室の間にある心室中隔という壁が肥大すると、 左心室の出口が狭くなり、全身に送り出されるはずの血液が出ていきにくくなります。これを閉塞性肥大型心筋症といいます。 無症状なこともよくありますが、動悸、息切れ、胸痛、めまいなどが現れることもあります。 胸痛などの自覚症状や心電図検査で気付くことが多く、心臓超音波検査をすると、画像ではっきりわかります。 心筋の厚さが3cm以上と著しく肥大していると危険です。 肥大型心筋症による突然死の危険性が高い人は、失神や心室細動を起こしたことがある人、胸痛などの自覚症状がある人、家族に突然死した人がいる人です。 突然死を防ぐためには、心室細動や心室頻拍などの危険な不整脈を抑える治療が行われます。 薬は、心拍や血圧を抑えるβ遮断薬、血圧を下げるカルシウム拮抗薬、突然死の危険性が高い場合は、抗不整脈薬(アミオダロンなど)も用いられます。 心室細動や心停止を起こしたことがある人は、すぐに植込み型除細動器を手術で埋め込みます。 また、運動は必ず医師と相談して行います。


■心筋の収縮力が弱くなる拡張型心筋症

拡張型心筋症は、左心室が次第に拡張していく病気です。心臓の働きが低下し、心不全になりやすくなります。 中年期に発症することが多く、年齢とともに進行するため、高齢の男性に多く見られます。 症状が出ることはあまり多くありませんが、心不全の症状が出る人もいます。 心臓超音波検査や胸部エックス線検査、心電図検査などで見つかります。 心臓超音波検査で左心室が6.5cm以上に拡張していたり、血液を送り出す動きが低下している人は、拡張型心筋症での突然死の危険が高まります。 この病気での突然死を防ぐには、β遮断薬や抗不整脈薬が用いられます。 心室頻拍が30秒以上続いて失神したことがある人や、心停止したことがある人、左心室の収縮機能が低下している人には、植込み型除細動器の使用が検討されます。 心不全になりやすいため、その治療も行われます。

●拡張型心筋症から進行しやすい心不全にも要注意

▼心不全とは?
心不全は、心臓から全身へ血液を送り出すポンプ機能が低下した状態をいいます。 肺や全身で血液の流れが悪くなって停滞する「うっ血」を起こし、息切れ、呼吸困難が起こります。 最初は、歩行や階段を上るときなどに多く現れます。

▼心不全の主な症状
・息切れ、呼吸困難・手足のむくみ・体重増加・食欲低下・全身倦怠感・手足の冷え感・尿量の減少

▼心不全の治療
薬の治療が中心。重症の場合は左右の心室が収縮するタイミングがずれてしまうことがあるので、「心室再同期療法(CRT)」を行うため、 ペースメーカーを植え込みます。これに除細動器の機能が付いた装置を植え込む場合も多いです。
◆ACE阻害薬、ARB、アルドステロン拮抗薬など
交感神経を刺激するホルモンや、血圧をあげるホルモンの働きを抑えます。
◆β遮断薬
交感神経の刺激を抑制し、心臓の負担を減らします。
◆利尿薬
肺や全身のうっ血を改善します。

■心筋細胞が線維組織などに換わる不整脈源性右室心筋症

不整脈源性右室心筋症は、右心室に病変が起こって、心筋細胞が線維組織や脂肪に置き換わる病気です。 若い男性に多く見られます。自覚症状はあまりなく、心電図検査などで発見されますが、病気に気付かずに突然死に至るケースも少なくありません。 この病気での突然死を防ぐためには、β-遮断薬、抗不整脈薬などが用いられます。 また、カテーテルやアブレーションという治療が行われる場合もあります。 危険な不整脈を起こしたことがある人などには、植込み型除細動器の使用が検討されます。