不整脈・狭心症と突然死

突然死の大半は心臓病が原因ですが実は突然には起こらず、不整脈・狭心症などを軽視し放置した人に多発するので、 症状別に狭心症をメンテナンスすることで克服できます。

■心臓性突然死

思い描いた人生設計を大きく狂わせる

最近は、「自分の人生をよりよく終わらせるために、生きている今のうちから、やりたいことをやっておこう」 という考えを持つ方が増えてきました。このような考え方に基づいて活動することを「終活」 と呼んでいます。ところが、そうした人生設計をもろくも打ち砕いてしまうのが、「突然死」です。 昨日まで元気だった人が仕事や運動の最中に突然倒れ、返らぬ人になってしまった・・・・・ こんな話を皆さんも効いたことがあるのではないでしょうか。 突然死は、医学的に「症状が現れてから24時間以内に死に至ること」と定義され(自己や災害を除く)、 わが国では年間10万人以上が突然死していると言われています。 突然死の原因にはさまざまな病気がありますが、何と言っても多いのは、急性の心筋梗塞、狭心症、不整脈、心臓弁膜症、 心筋症などの心臓によるもので、実に突然死全体の6〜7割を占めています。 こうした心臓病による突然死は『心臓性突然死』と呼ばれています。


■突然死には前触れがある

ところで、皆さんの中には、突然死というと「何の前触れもなく急に起こるため、絶対に防げない」と考えられている人も 多いでしょう。しかし、考えても見てください。前に述べたように、突然死は、大半が心臓病によって起こっているのです。 つまり、今現在、不整脈狭心症といった心臓の不調を抱えている人は、見方を変えれば突然死の前触れが現れているとも 考えることができ、それらを正しく克服することで、突然死を高率で防げるのではないでしょうか。 不整脈の主な症状には、動悸(心臓の収縮と拡張を繰り返す拍動が乱れて、胸がドキドキと高鳴る状態)・ 息切れ(呼吸が苦しくなる状態)・めまい(心臓の拍動のリズムが乱れて血液の循環が悪くなり、一時的にフッと遠くなる状態) があります。また、狭心症の症状には胸や胸の周囲の痛み、息切れ・呼吸困難などがあります。 しかし、こうした不整脈や狭心症の症状、つまり発作は一時的なもので、すぐに治まる場合が多いのです。 そのため、症状が起こっても軽視して放置することが多いのが実情でしょう。 さらに、動悸や息切れといった症状は、歳を取ることや過度の疲労、ストレスなどでも起こるありふれた症状のため、 それが心臓病によるものかを見分けにくいという点も挙げられます。 そこで、「動悸や息切れをたまに感じる」など、ご自身で心臓に不安がある方は、決して軽視して放置をせず、 まずは病院できちんと検査を受けてください。医療の進歩が目覚ましい現代では、不整脈や狭心症はかなり改善することができます。 そして、自分でできる対処法もあります。誤解を恐れずに言うなら、今現在、不整脈や狭心症とわかっている人は、 むしろラッキーということもできると思います。なぜなら、不整脈や狭心症と正面から向き合えば、 突然死という人生設計を狂わせる最悪の事態を回避できるのですから。不整脈や狭心症などの心臓の不調を前向きにとらえて、 ぜひ改善のために対処をしてください。


■壊死した心筋は元には戻らない

心臓の働きと、不整脈・狭心症・心筋梗塞とはどのような病気なのかを簡単に説明しておきましょう。 心臓は、主に心筋という筋肉でできていて、心筋が収縮と拡張を繰り返すことで全身に血液を送って循環させています。 それによって、心臓は血液とともに全身の細胞へ酸素と栄養を運んでいるのです。 心臓の内部は、4つの部屋に分かれています。具体的には、全身に血液を送り出す左心室、肺に血液を送り出す右心室、 全身から戻ってきた血液が入る右心房、肺から戻ってきた血液が入る左心房の4つがあります。 そして心臓は、ひと時も休まずに1日約10万回も拡張と収縮(これを拍動という)を繰り返し、 1分間に約5gもの血液を送り出す仕事をしています。これだけの仕事をするために、心臓には冠動脈(心臓に血液を運ぶ血管) によって常に大量の酸素と栄養が供給されています。ところが、加齢や悪い生活習慣などによって冠動脈の動脈硬化が進むと 血管の内腔(内側の空間)が狭くなり、血流が悪化します。その結果、心臓に届けられる血液が不足し、 さまざまな異常が起こってきます。この状態を総称して、心筋虚血といいます。 心筋虚血の状態になると、心筋の拡張・収縮を繰り返す運動が正常に働かなくなります。 心臓の働きを支配する自律神経に異常も起こって、脈拍のリズムが早くなったり、遅くなったり、乱れたりします。 これが不整脈です。また、心筋虚血の状態が続くと、冠動脈の内腔の狭くなった部分に血栓ができて、血管が詰まりやすくなります。 こうして一時的に血管が詰まることで、狭心症が起こるのです。 そして、血栓が血管を完全に塞いでしまうと、その先に血液が流れなくなり、心筋は酸素不足に陥って部分的に壊死します。 これが、命にもかかわる心筋梗塞なのです。壊死してしまった心筋は、元に戻りません。 ですから、狭心症の段階で異常に気付き、一刻も早く治療を始める必要があります。


■生活習慣を見直すだけで治ることも多い

心臓病の発症には、加齢に加えて、日頃の悪い生活習慣が深く関わっています。 そのため、不整脈や狭心症の改善には、生活習慣を見直すことが大切です。 生活習慣で特に注意したいのは、食事です。 近年、日本人に心臓病が増えている要因として、食事の欧米化が挙げられています。 脂身の多い肉を食べ過ぎたり、甘いケーキや菓子パンなどを間食したりする人が実に多いのです。 こうした食生活を続けていると、動脈硬化がどんどん進み、 高血圧糖尿病脂質異常症メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を招きます。 これらの病気がある人は、すでに動脈硬化が進んでいて、血管の内腔が狭くなって血液を送り出す心臓に大きな負担がかかるため、 不整脈や狭心症などを招く危険性が高まります。 運動不足睡眠不足喫煙などの悪い生活習慣や ストレスも重大な要因になります。 例えば、喫煙は血流を悪化させて血栓を作りやすくしますし、過度のストレスは血管を収縮させて血圧や心拍を上げてしまいます。 逆に言えば、生活習慣を見直せば動脈硬化を防ぐことができるため、生活習慣病ばかりか、不整脈や狭心症の予防にも改善にも 繋がります。実際、期外収縮などの比較的安全とされる不整脈は、生活習慣を改めるだけで起こらなくなることがあります。 運動不足の人は、ウォーキングなどの心臓に負担をかけない適度な運動を心がけてください。 ただし、ウォーキングは雨の日などにできないのが難点。そこで、家の中でもできる「かかとの上げ下げ」を行うといいでしょう。 この運動は心臓の手術を受けた患者さんのリハビリにも使われており、第二の心臓と呼ばれ、全身の血流を促すふくらはぎの 筋肉を鍛えることができるので、お勧めです。休憩を挟みながら1日に30分〜1時間行いましょう。


■女性は更年期以降突然死の危険が高まる

不整脈や狭心症などの心臓病は、女性に比べて男性に多く起こります。女性ホルモンには動脈硬化を抑える作用があるため、 これの分泌量の多い若い女性は心臓病になりにくいのです。ところが、女性も更年期以降は女性ホルモンの分泌量が減って 動脈硬化が進み、不整脈や狭心症を招きやすくなります。特に、閉経後の女性は心筋梗塞による突然死の危険性が急激に高まるので、要注意です。


上で述べたように、不整脈や狭心症は、生活習慣を見直すことで予防・改善が期待できます。 不整脈にはいくつかの種類があるので、自分の不整脈のタイプに応じた対策も必要になります。 それでも心臓に何らかの異常が起こった時には、すぐに病院を受診することが大切です。 そうすれば、突然死という最悪の事態を避けることができるでしょう。 自分の思い描く人生設計に、できるだけ近づけることもできます。 それだけではありません。実は不整脈の中には 心房細動といって、 心臓にできた血栓が脳に至って脳梗塞を起こすタイプもあります。 脳梗塞は、 たとえ突然死を回避できたとしても麻痺などが残り、寝たきり生活を余儀なくされることが少なくありません。 心臓の健康維持を心がければ、そうした事態を防ぐことも可能です。 突然死を防ぐだけでなく、人生の終わりを迎えるギリギリまで生活の質を高く保つためにも、不整脈や狭心症を軽視せず、 生活習慣をきちんと見直すなどして強心メンテナンスに努めましょう。