便秘と心臓病
排便時のいきみは心臓に大きな負担をかけるため、心臓に負担のある人は便秘の解消が急務です
■便秘と心臓病
血圧が上昇して心臓に負担をかける
便秘は命に関わる病気ではないため、「たかが便秘」と軽く考える人がいるかもしれません。 しかし、油断は禁物です。 特に、高齢で心臓の弱い人は、心筋梗塞などの心臓病に対する注意が必要です。 というのも便秘の人にありがちな「強くいきむ」という行為が、心臓に大きな負担をかけてしまうからです。 便秘の人は、とかく強くいきんで便を出そうとしがちです。全くいきまずに便を出すのは無理ですが、強くいきみ過ぎると、 便がさらに出にくくなり、便秘が悪化してしまう恐れがあります。 また、強くいきめば自律神経のうちで、体を活動的にする交感神経が優位になります。 自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスを取りながら成り立っています。 交感神経が優位になると血管が収縮して、血圧が上がります。反対に、副交感神経が優位になれば血管が拡張して血圧は下がります。 便秘の人が排便時に強くいきんで交感神経が優位になれば、血圧が上昇します。 さらに、いきむときに息を止めたりお腹に力を入れたりすることで血圧はいっそう高くなり、心筋梗塞の発作が起こって、 最悪の場合は突然死することもあるのです。
■善玉菌を増やして腸の働きを正常に保つ
以上のことから、心臓に何らかの不安を抱えている便秘の人は、排便時に強くいきむことを避けたほうがいいでしょう。 だからといって、下剤に頼るのも考え物です。下剤に頼ると自然な排便ができなくなったり、食後の腹部膨満感やガスの滞留といった 副作用が出てきたりするからです。便秘を解消するには、食生活の見直しが不可欠。 というのも、腸の働きを正常に保ったり、適度な柔らかさや量を備えた便を作ったりするのに、 普段の食事は重要な役割を果たしているからです。
そこで、東洋医学の考え方である「食養生(食べて命を養うという意味)」を参考に、 食べて腸を養うという考え方を「食養腸」と名付け、便秘の治療を行う上で、 食生活を重要視する、という考え方があります。 そして、腸の働きを正常に保って便秘を改善・解消するために役立つのが、 「乳酸菌」です。 私たちの腸内には100種類以上、100兆個もの腸内細菌が棲みついていると言われます。 これらの腸内細菌は、私たちの体に有益な働きをする乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と、 逆に害をもたらす大腸菌やウェルシュ菌などの悪玉菌に大別され、両者は絶えず勢力争いをしています。 便秘の人の腸内では、善玉菌の数が減って悪玉菌が優勢になっています。 この状態では、本来は酸性が好ましい腸内のpHがアルカリ性に変わり、蠕動運動に異常が起こったり、 腸にたまった内容物の腐敗が進んだりします。乳酸菌は、腸内の善玉菌を増やして悪玉菌が増えるのを抑えてくれます。 そのため、便秘の改善・解消には、乳酸菌が多い食品を積極的に摂ることが有効なのです。 乳酸菌は、ヨーグルトやチーズなどの乳製品や乳酸菌飲料、キムチや味噌汁などの発酵食品に多く含まれます。 乳酸菌の中でも特に注目したいのが 「植物性乳酸菌」です。 これは、野菜やコメ・豆腐などの植物性素材を発酵させた食品に 含まれる乳酸菌で、和食に欠かせない漬け物や味噌・醤油にたっぷり含まれています。 植物性乳酸菌は乳酸菌の中でも特に生命力が強く、生きたまま腸に届きやすいことがわかっています。 近年、日本人はこの植物性乳酸菌を摂取する機会が激減しました。こうした食事の変化が、近年増えている便秘に関与していることは 間違いないでしょう。ヨーグルトなどの動物性乳酸菌と併せて、植物性乳酸菌が多い食品も積極的に摂るようにしましょう。