心不全の前触れ
声がかすれる、奥歯が痛む、体がむくむ、夜トイレに行くなど、突然死を招く心臓病の意外な前触れ。
■息切れが起こったら、心不全の疑い大
突然死を招く心臓病というと、まず思い浮かぶのは心筋梗塞でしょう。これは心臓へ血液と共に酸素と栄養素を運ぶ冠動脈が
完全に詰まる病気ですが、必ずしも急に起こるわけではありません。
多くの場合、その前触れとして冠動脈が一時的に詰まる狭心症が起こり、胸痛などの症状が現れます。
痛みは肩や背中・顎にまで広がり、奥歯が痛むこともあります。
不整脈も突然死を招く原因になります。
例えば、比較的安全といわれる期外収縮であっても、ごくまれに突然死の直接的な原因になる非常に危険な心室細動を
引き起こすことがあるのです。したがって、胸がドキドキと高鳴る動悸などの不整脈の症状が現れたら、すぐに病院で検査を受けましょう。
このように胸痛や動悸は、突然死を招く心臓病の前触れの代表です。
さらに、重要な前触れとして挙げられるのは、息切れです。特に体を少し動かしたときに、動悸に加え息切れがする場合には、
さまざまな心臓病によって心臓が弱り、心不全の状態になっていると考えられます。
心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して、全身が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態で、
大きく「慢性心不全」と「急性心不全」に分けられます。
慢性心不全は、高血圧や心筋症、弁膜症などが原因で、慢性的に動悸や息切れなどが起こるものをいい、
定期的な検査や治療が必要です。一方急性心不全は、心筋梗塞などの病気が原因になって急に起こるものをいい、
突然死につながるので緊急の治療が必要です。
■心臓が弱っているサインが全身に現れる
心不全になると全身に血液が行き渡りにくくなるため、動悸や息切れだけでなく、体のところどころに 意外なサインが現れてきます。そのいくつかを紹介しましょう。 まず挙げられるのは、脚や顔のむくみ、夜間頻尿です。 心不全で心臓のポンプ機能が低下すると、全身に血液を送り出す作用だけでなく、全身を巡った血液を心臓に押し戻そうとする 作用もうまくいかなくなります。すると、うっ血が起こり、全身に余分な水分が溜まって、脚や顔にむくみが現れます。 さらに、夜は布団に横たわるため、体が水平になります。すると、むくみの原因となる水分が血管に入り、 血液が水分で薄められて全体の量が増えます。腎臓はこの余分な水分を排泄しようとするため、夜間の尿の量が増えやすくなるのです。 健康な人でも寝る前に水分を大量に摂れば、夜中にトイレに行きたくなります。 前立腺肥大を持っている人も、夜間頻尿に陥りやすいものです。こうした原因がないのに、夜中に2回以上トイレに行くという人は、 心不全の疑いがあります。
そして、むくみの症状が悪化すると、急に体重が増えたり、食欲不振や手足の冷え、 体のだるさなどの症状が現れたりします。さらに、舌の裏や手の甲、首筋の静脈の浮きあがりなどが現れることもあります。 その他、心不全の意外な前触れとしては、咳や声のかすれがあります。 これは、心不全によって心臓の血液を全身へ送り出す力が弱まることで、肺や気管支の粘膜がうっ血して咳が出たり、 喉にある反回神経が圧迫されて声がかすれたりするのです。 風邪を引いたわけでもないのに、喉に異常を感じる人は、心不全が疑われます。 こうした症状がいくつか併発するようなら、心不全の初期段階に入ったと考えられます。 早めに病院で検査を受けてください。心臓病による突然死を防ぐには、日頃から体調をチェックして、 心不全などの前触れとなる症状をいち早く発見することが大切です。 さらに、健康的な心臓を保つために、食事の見直しや過度な運動、ストレスを減らすことなどを心がけましょう。