不整脈から起こる脳梗塞に注意!!
不整脈の一つである心房細動と診断されたら、脳梗塞に対する予防が必要になります。 重い後遺症を引き起こす可能性が高い脳梗塞は、なってしまう前の予防が何よりも大事です。
■心房細動で起こりやすい心原性脳梗塞
国民病の一つともいわれる「脳卒中」、
平成24年の統計でも日本人の死亡原因の4番目に挙げられています。
一般的に、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管疾患をまとめて脳卒中と呼んでいますが、これらのうちの約6割は脳梗塞で亡くなっています。
一口に脳梗塞といっても3つのタイプがあります。
脳の細い動脈が詰まって起こる「ラクナ脳梗塞」、動脈硬化で狭くなったやや太い動脈に血栓が詰まる「アテローム血栓性脳梗塞」、
心臓にできた血栓が血流によって脳まで運ばれ、脳の太い動脈を詰まらせる「心原性脳塞栓症」。
いずれも脳の動脈が塞がれてしまうために、脳細胞に酸素や栄養が届かなくなり、細胞が壊死してしまいます。
この3つの中でも特に重症化しやすいのは心原性脳塞栓症です。
心臓にできる血栓は大きいため、脳の太い動脈を塞ぐことが多く、影響を受ける範囲も広くなり、重症例が多いのです。
また、心原性脳塞栓症は再発率が高いことも分かっています。
心原性脳塞栓症の原因として最も多いのは、不整脈の一つである「心房細動」です。
心房細動は心臓の心房という部分が不規則に震えて起こる不整脈で、そのために心房内に血の塊ができてしまいます。
この塊が血流によって脳まで運ばれ、脳の動脈を塞いでしまうのです。
■リスクを高める心房細動
心房細動による不整脈は加齢とともに、起こりやすくなります。不整脈自体もストレスや睡眠不足、疲れでも起こりやすいため、 なかには「不整脈くらい」と侮っている人もいます。しかし、心房細動のある人は、ない人に比べて約5倍も脳梗塞になりやすいといわれています。 さらに、心房細動と診断されたうえに、次の危険因子がある人は脳梗塞の危険性が高いと考えられています。
①心不全のある人
②高血圧のある人、もしくは治療中の人
③75歳以上の人
④糖尿病のある人、もしくは治療中の人
⑤これまでに脳梗塞あるいは一過性脳虚血発作にかかったことのある人
心房細動と診断されたらすぐに、血液を固まりにくくする抗凝固剤の服用(抗凝固療法)を始め、脳梗塞にならないよう予防する必要があります。
■抗凝固薬で心原性脳塞栓症を予防
ところが、抗凝固療法は始めたものの、なかなか続かないという人が少なくありません。 従来の抗凝固薬は高い脳梗塞予防効果が証明されており、長期間にわたって標準治療として用いられてきました。 しかし、ビタミンKを多く含む食品、例えば納豆やブロッコリーといった緑黄色野菜などを食べると効果が薄れる、 薬が効いているか一定の期間ごとに病院でチェックする必要がある、出血、特に脳出血の懸念があるなど、生活上の管理の手間のために、 服用を途中でやめてしまうケースも見受けられるのです。 しかし、脳塞栓症の予防薬を途中でやめてしまうと発症リスクはすぐに元に戻ってしまいます。
最近では、心房細動そのものを取り除くことを目的としたカテーテル・アブレーションという治療が行われることもあります。 また心原性脳塞栓症予防を目的とした新しい抗凝固薬が登場しています。 これらの薬は食事制限や血液検査の必要がなく、効果は少し優れるかほぼ同程度と考えられます。 これらの新しい凝固薬にもいくつかの種類があり、服用回数や薬の形が異なるなど、それぞれに特徴があるので、 自分に合ったものを主治医に選んでもらうことが大変重要です。
心原性脳塞栓症を予防するためには、毎日の食事や適度な運動と一緒に、確実な抗凝固療法を続けることが大切です。 治療と予防の選択肢が広がっている今、かかりつけの医師に適切な予防法を相談してみることをお勧めします。