心室細動

急に倒れ突然死する『心室細動』は狭心症など、心臓病持ちに多発し、強い胸骨圧迫で命を救え。

■心室細動とは?

AEDを備えておくのも一手

『心室細動』は最も危険な不整脈であり、心臓病による突然死の多くはこれによって起こります。 高円宮殿下がスカッシュという競技の練習中に突然亡くなられた原因も、この心室細動です。 心臓は洞結節から発生した規則的な電気信号によって、リズミカルに拍動しています。 ところが心室細動が起こると、心室がこの電気信号を無視して反乱を起こしたような状態になります。 具体的には、心室の中で非常に速くて不規則な電気的な刺激が無数に発生し、心室全体が痙攣を起こしてしまうのです。 しかも、心室が震えるだけで、心臓からは血液がほとんど送り出されなくなります。 つまり心室細動では、心臓が停止したのと同じ状態になってしまうのです。 そして、脳への血流が途絶えると、5~6秒で意識を失います。この状態が続けば、数分で死に至ります。 事実、心室細動が起こった患者さんの多くは、病院に到着する前に亡くなっています。 一命を取りとめても脳死状態、いわゆる植物状態になってしまう、怖い不整脈なのです。


心室細動のほとんどは、心筋症(心臓の筋肉が肥大したり働きが悪くなったりする病気)や狭心症・心筋梗塞などの心臓病によって 起こります。心筋梗塞を発症した人の約1割に、数日以内に心室細動が起こるともいわれています。 ごくまれに、心臓に異常がなくて健康に見える人でも突然、心室細動が起こることもあります。 睡眠中にも起こるため、いわゆるポックリ病の原因の一つではないかといわれています。 心室細動は、めまいを感じる間もなく突然気を失ってしまうので、家族や周囲にいる人の救命活動が必要になります。 AED(自動体外式除細動器)で心臓にショックを与えて、強制的に心臓の異常なリズムを回復させる以外に命を救う方法はありません。 ですから家族や周囲に人がいる人は、すぐ手分けをして救急車を呼んだり、AEDを使ったりすることが重要です。 AEDが近くにない場合は、救急車が到着するまでの間、胸骨圧迫(心臓マッサージのこと)を行って脳へのダメージを最小限に 抑える必要があります。胸骨圧迫を行う際は、両手を心臓のある左胸ではなく胸部中央に当て、胸骨を強く推すことを 絶え間なく繰り返します。胸骨への圧迫を強く、素早く、リズミカルに行ってください。 AEDは5万円程度で購入できるので、心臓病を持つ人は、家庭に備えておくのもいいと思います。 手術で、植込み型除細動器を体に埋め込んでおく方法もあります。