不整脈のタイプを見分ける
不整脈が現れるサインをいち早く察知しよう
胸のドキドキ感(動悸)や痛み、息切れといった症状が現れたら、不整脈や
狭心症などの心臓病のサインであることが少なくありません。
心臓病のサインには、その他にも、体のむくみやだるさ、めまい、胸苦しさなど、さまざまな症状があります。
突然死を防ぐには、普段からこれらのサインを見逃さないことが大切です。
特に不整脈には、さまざまな種類があります。
なかには突然死に結びつきやすいものもあるので、あらかじめ自分がどのタイプの不整脈で、どんな対策が必要なのかを知っておくことが重要です。
不整脈は脈が速くなったり脈が飛んだりする「頻脈性不整脈」と、
脈が遅くなったり脈が抜けたりする「除脈性不整脈」に大きく分けられます。
胸が急にドキドキする、息切れ・めまいが起こるなどの症状から自分の不整脈タイプの見分け方を知りましょう。
■頻脈性不整脈
期外収縮と心房細動がある
「頻脈性不整脈」には、「期外収縮」と「心房細動」の2つがあります。 心臓がドキンとして心拍が飛ぶ、抜ける期外収縮は、大半は心配ありませんが、連発すれば放置は禁物。 年を取り急に胸の強いドキドキやモヤモヤが現れたら心房細動で、高血糖や寝不足が重大原因です。
運動をしたり緊張したりすると誰でも動悸を感じるものですが、安静時に起こる場合は頻脈性不整脈と考えられます。
健康な人の脈が毎分60~70回程度なのに対し、頻脈性不整脈では毎分約100回以上になります。
急に胸がドキドキして脈が不規則に速く打つのを感じたら、頻脈性不整脈の中でも「心房細動」が疑われます。
心房細動は心房内に不規則な電気信号の旋回が生じることで起こり、心拍数は毎分100~200回と不規則になります。
心臓がドキンと響くように感じたり、脈が1拍飛んだように感じたりした場合は、
不整脈の中で最も多い「期外収縮」と考えられます。
電気信号の異常で正常な人よりも早いタイミングで余分な心拍が生じるため、こうした症状が現れるのです。
期外収縮は異常な電気信号が発生する場所によって、上室性期外収縮と心室性期外収縮に分類されます。
どちらのタイプかは、病院の心電図で確かめる必要があります。
心臓がドキンと響く感じが続く場合は「心室頻拍」が考えられます。
これは、心室性期外収縮が3回以上連続して起こるもので、動悸のほか息切れ・めまいが起こることもあります。
心拍頻脈が数分以上続くと、最も危険な「心室細動」に移行します。
心室細動が起こると心室に強い電気信号が発生するため、心臓が痙攣状態に陥って血液を送り出せなくなります。
突然死につながるので、すぐに治療が必要です。
●期外収縮
通常より早く電気信号が伝わる
「期外収縮」は、不整脈の中で最も多く、年を取ればほとんどの人に起こります。 大半は心配不要とされていますが、油断してはいけません。 心臓は、洞結節という部位から発生する電気信号によって、規則的な拍動を繰り返しています。 ところが、期外収縮の場合、洞結節から「はい、いきますよ」という正式な号令、つまり電気信号が出るのを待たずに、 洞結節以外の部分が自家発電のように勝手に電気信号を作って心臓を動かしてしまうのです。 こうして早めのタイミングで電気信号が伝わるため、期外収縮は広義には頻脈性不整脈に分類されます。 期外収縮が起こると、心臓がドキンとする、心拍が飛ぶ、抜けるといった感覚があります。 心臓内の心房や心室が通常よりも早く収縮して、正常な心拍よりも早めのタイミングで余分な心拍が生じるため、 脈が一瞬飛んだり早くなったり、脈を強く感じたりするのです。 期外収縮は多くの場合、睡眠不足や過労、喫煙、過度の飲酒などの悪い生活習慣やストレスによって自律神経の働きが低下することで起こります。 また、年を取ると起こりやすくなります。 期外収縮は比較的安全な不整脈とされています。特に上室性期外収縮は、生活習慣の見直しによって改善できるため、大半は治療が不要です。 心室性期外収縮も生活習慣の見直しで改善できます。 ただし、狭心症や心不全など心臓病の人は 心室細動を起こすことがあり、期外収縮3連発以上起こる場合は治療の対象となります。
●心房細動
特に高齢者に増えている
不整脈のうち脈が速くなるタイプを頻脈性不整脈といい、その代表が「心房細動」です。 これが今、特に高齢者に増えています。 心房細動は、先述した心房性期外収縮がきっかけとなって、心房内に不規則な電気信号の旋回が数多く発生することで起こります。 心房は小刻みに震えて痙攣状態に陥り、心拍数も毎分100~200回(通常は60~80回)と不規則になります。 心房細動が起こると、急に胸の強いドキドキ(動悸)やモヤモヤ(不快感)、胸苦しさ、息苦しさといった症状が現れます。 こうした発作が数分で治まれば、大きな問題になりません。 しかし発作が長引けば、脳梗塞を招く危険性が高まります。 心房細動が起これば心房内に血栓ができやすくなり、これが脳の血管に運ばれて詰まると脳梗塞を起こすのです。 事実、脳梗塞の3割は心房細動によるものといわれています。 心房細動は心筋症 (心臓の筋肉が肥大したり働きが悪くなったりする病気)や 弁膜症(心臓の弁の働きが悪くなる病気)などの心臓病を持っている人に起こりやすく、 高齢者ほど発症の危険が高まります。 健康な人にも起こり、加齢に加え 睡眠不足や 過労、 高血糖、 飲酒、 喫煙などが要因となります。 心房細動は、適切な治療や生活習慣の見直しなどで発作を抑えることができるので、すぐに対処しましょう。
頻脈性不整脈には、その他にも、上室性頻拍・心房粗動・心室頻拍などがあります。 上室性頻拍は、心房や房室結節から生じた電気信号の旋回によって起こり、心拍数は毎分150~200回にもなります。 健康な人でも睡眠不足や 過度のストレス、喫煙などが要因となって発症することがあります。 強い動悸や胸苦しさを伴うことがありますが、通常はすぐに治まります。 心房細動は、心房内で規則的な電気信号の旋回が生じ、心拍数が毎分150~300回と速くなり、動悸などを自覚することがあります。 心筋症や弁膜症などの心臓病を持つ人に多く、健康な人にはめったにみられません。 心室頻拍は、心室性期外収縮が3回以上連続して起こるもので、心室で生じた異常な電気的信号刺激によって、心拍数が毎分150~200回にもなります。 動悸に加え、息切れ・めまいなどを伴います。
以上の頻脈性不整脈は、発作が続くと心不全などを招く危険性が高まるため、治療が必要です。
■除脈性不整脈
息切れ・だるさに加え、脈も速いなら「洞不全・房室ブロック」で、高血圧や狭心症の人に多発。
不整脈には、前述した頻脈性不整脈とは反対に、 心拍数が毎分60回よりも少なくなってしまう「除脈性不整脈」もあります。 除脈性不整脈になると、心臓から送り出される血液量が少なくなるため、安静にしていても、息切れや体のだるさなどが現れます。 さらに脳の血流が減って、めまいや失神が起こることもあります。 病的な除脈性不整脈の代表には、「洞不全症候群」「房室ブロック」の2つがあります。 洞不全症候群は、心臓内の洞結節などに異常が起こり電気信号が著しく遅くなったり、伝わりにくくなったりする状態の総称。 房室ブロックは、心房と心室の接合部の障害によって、電気信号の伝わり方が悪くなる状態です。 どちらも息切れや体のだるさ、めまいなどの症状が現れますが、症状を自覚しないこともあります。
●洞不全症候群
洞不全が起こると失神することがある
洞不全症候群は、心臓内の洞結節から電気信号が出なくなったり、電気信号の伝わる速さが著しく遅くなったりする症状の総称です。 具体的には、洞結節から電気信号が出なくなる「洞停止」、電気信号が著しく遅くなる「洞性除脈」、 電気信号が心房に伝わらなくなる「洞房ブロック」の3つがあります。
洞結節は、自律神経の影響を受けて心拍数を調節しています。 ところが何らかの原因で洞結節に異常が起こると心拍数が減少したり、心拍が途絶えたりしてしまうことがあるのです。 ひどい場合には、心拍数が毎分20~30回にまで減ってしまうこともあります。 そうなると脳への血流が途絶えて、突然、意識を失ってしまうことも少なくありません。 これによって突然死することは、極めて稀です。とはいえ、失神して転倒すれば、頭部などを強打して重大な障害を負いかねません。 車の運転中に失神すれば、命取りにもなるでしょう。 息切れや体のだるさ、めまいといった症状を自覚しない人も大勢いますが、 症状を自覚しなくても心臓停止が3秒以上続くこともあります。 そうした人や、めまい・失神などが現れる場合には、薬による治療やペースメーカーを埋め込む治療が必要になります。 洞不全症候群を招く要因で最も多いのは、加齢による洞結節または心房への電気信号の伝導障害です。 その他にも、高血圧や 狭心症・ 心筋症(心臓の筋肉が肥大したり働きが悪くなる病気)などの病気や、 これらの治療に使う薬剤によって起こることもあります。
●房室ブロック
房室ブロックは進行すると要治療
房室ブロックは、洞結節から発生した電気信号が、心臓の中心部にある房室結節という伝導路を通って心室に伝わるまでの途中で伝導が送れたり、 途絶えたりすることによって起こります。そのために、心室が収縮する回数、つまり心拍数が減少してしまうのです。 房室ブロックの症状はさまざまで、めまい、息切れ、体のだるさ、疲労感などが現れます。 ひどい場合には、失神することもあります。 房室ブロックの危険度のレベルは3段階に分けられます。 最も危険度の低いⅠ度では、心室への電気信号の伝導が遅くなっただけの状態で、自覚症状がなく、ほとんど心配ありません。 やや危険度の高いⅡ度では、心室に電気刺激が時々伝わらなくなるため、脈が飛ぶようになります。 最も危険なⅢ度になると、電気信号が心室に全く伝わらなくなってしまいます。 Ⅲ度やⅡ度では、心拍数が極端に減って脳の血流が不足して息切れがしたり、失神したりすることがあります。 突然死を招く危険もあるため、 ペースメーカー治療を行うこともあります。
房室ブロックと似た、健康診断などで用いる心電図上の異常で、脚ブロックというタイプがあります。 洞結節から発生し心房に広がって、洞房結節という部位で取りまとめをされた電気信号は、脚と呼ばれる伝導路を通って右心室と左心室へと伝わります。 この伝導路は、「右脚」「左脚」に分かれ、右脚に異常が起こって電気信号が心室に伝わりにくくなった状態を「右脚ブロック」、 左脚に異常が起こった場合を「左脚ブロック」といいます。右脚ブロックは、健康な人にも見られます。 心室が収縮するのに少し時間はかかるものの、 狭心症などの心臓病を持っていない人は、あまり心配ありません。 しかし、左脚ブロックは、狭心症などの心臓病や高血圧といった病気を持っている人に起こりやすく、持病が悪化しやすいので要注意です。 脚ブロックは、心電図上の異常であって心拍数に変わりはなく、自覚症状もありません。 従って、大半は治療が不要ですが、右脚ブロックと左脚ブロックが同時に起こることが稀にあります。 その場合には、ペースメーカー治療が必要となります。
以上のように除脈性不整脈の主な治療はペースメーカーとなります。 ペースメーカーは心臓に電気的な刺激を送って心臓を拍動させる医療機器で、これを使えば、失神などの重大な症状を起こらなくすることができます。
以上のような症状が現れたら、医師の診断を受けるとともに、生活習慣の見直しなどを心がけましょう。