乳酸菌

乳酸菌には 免疫力を担う白血球を著しく強める働きがあることがわかりました。 乳酸菌を摂ると、白血球が強化される仕組みは、腸のうち、小腸(腸管)にある免疫機構と関係があります。 実は、内臓や組織の中でも最も免疫と関わっているのは小腸なのです。 乳酸菌を摂れば、その腸管の免疫機構が刺激されることによって、白血球の働きが高まるのです。 こうした小腸の仕組みを「腸管免疫」といい、免疫細胞が活性化し、免疫力が強まるのです。


■善玉菌の代表「乳酸菌」

暴飲暴食や精神的なストレスなどによって腸内環境が悪化すると、 大腸癌など腸の病気以外に、肝臓や心臓、腎臓などの病気を誘発する要因にもなります。 腸内環境を健康に保つためには、何より善玉菌の代表である「乳酸菌」が重要な役割を果たします。 腸内の乳酸菌対策が病気知らずの身体を作るには効果的です。 また、腸内で有益な働きをしているのが「乳酸菌生産物質」。 腸内環境を良好に保つには、この乳酸菌生産物質を補給することが有効です。


●善玉菌・悪玉菌・日和見菌

人間の腸内には100種類以上、100兆個の腸内細菌が存在しています。 形態としては、花畑のような「腸内フローラ(腸内細菌叢)」を腸内の各部に形成しているといわれています。 場所によって、栄養素や酸素濃度が異なるため、腸内フローラを構成する細菌の種類と比率は違います。 小腸の上部では腸内細菌の数が少なく、下部の大腸へ向かうほど細菌数が増加します。 そして、これらの多様な細菌群は、腸内の各部で互いに排除したり共生したりという生存競争を繰り広げて一定の均衡状態を保っています。

この腸内細菌には、私達の身体に有益なものと有害なものがあり、前者を「善玉菌」、後者を「悪玉菌」と呼んでいます。 実はもう一つ「日和見菌」といわれ、通常の状態では何の影響も与えないが、条件次第で良くも悪くもなる菌が存在します。 腸内に存在する善玉菌は協力し合って、悪玉菌の増加を抑制したり、悪玉菌が作り出す有害物質を中和したりします。

食生活で高脂肪・高たんぱくの肉類を多く食べたり、 逆に食物繊維が多い野菜類や海藻類を避けたり、 加齢や精神的なストレス、体調不良や不規則な食生活、運動不足、暴飲暴食などによって、 善玉菌が減って悪玉菌が増えると、腸内の腐敗が進み、アンモニアやインドールなどの有害物質が増えて、 大腸ポリープや大腸癌などのさまざまな腸の病気が発生する可能性が高まります。 また、身体の防御機能を担っている善玉菌の働きが弱まれば、発癌成分を含む有害な毒素を体内に溜め込んでしまいます。 この有害毒素は腸壁から吸収されて血液内に溶け込み、血液を汚染しながら全身を巡り、 免疫力の低下によって肌荒れを起こしたり、風邪を引きやすくなったり、疲れやすくなったりします。 深刻なのは、長い間には肝臓や心臓、腎臓など各部の病気を発症させる要因になることです。


●乳酸菌が免疫力を強化する仕組み

乳酸菌に免疫力を強める働きがあると考えられるようになったのは、 世界の長寿地域に住む人々の多くが、乳酸菌を積極的に摂っている事実が知られるようになってからのことです。 その後の研究で、乳酸菌には免疫力を担う白血球を著しく強める働きがあることがわかったのです。 乳酸菌を摂ると、白血球が強化される仕組みは、腸のうち、小腸(腸管)にある免疫機構と関係があります。 実は、内臓や組織の中でも最も免疫と関わっているのは小腸なのです。 乳酸菌を摂れば、その腸管の免疫機構が刺激されることによって、白血球の働きが高まるのです。 白血球は、その働きによって「リンパ球、顆粒球、マクロファージ」という3種の免疫細胞に大別されます。 それらは、血液やリンパ球の中など全身に散らばっています。 しかし、免疫細胞が最も結集し、活躍しているのは小腸です。

小腸の内側の腸壁には、おびただしい数の絨毛と呼ばれる小さな突起があり、その表面積はテニスコート一面分にも相当します。 絨毛は、食べ物からの栄養を吸収する働きをしているため、食べ物や水分に病原菌やウィルスが紛れ込んでいる場合、 それらを一緒に吸収してしまうことがあります。 それを防ぐために、小腸のところどころには、「パイエル板」という特殊なリンパ節の組織があり、 有害な病原菌やウィルスなどの異物を撃退する働きが備わっているのです。 パイエル板では、リンパ球をはじめ、数多くの免疫細胞が活躍しています。 異物(抗原)が侵入すると、免疫細胞はそれぞれの役目にしたがって、異物を次々と捕獲し、その情報を体内に伝えます。 すると体内では「IgA(免疫グロブリン)」という抗体(異物が侵入したときに、 その害を防ぐために生じる物質)が作られて、全身に送り出されます。 と同時に、全身の白血球も活性化され、さらなる抗原の侵入に備える仕組みになっています。 こうした小腸の仕組みを「腸管免疫」といいます。 そして実は、乳酸菌が体内に入って腸管を刺激すると、異物とみなされて、すぐにパイエル板に取り込まれると考えられます。 そうして免疫細胞が活性化し、免疫力が強まるのです。


■乳酸菌関連

近年、乳酸菌関連で、3つの表現が使用されています。
1つ目は「プロバイオティクス」。これは、生きたまま腸内に到達して健康に有利に働く細菌や酵母のことで、 代表は生きた乳酸菌やビフィズス菌です。 2つ目は「プレバイオティクス」。これは腸内の善玉菌の増殖に貢献するもので、 オリゴ糖食物繊維が該当します。 3つ目は「バイオジェニックス」。これは、乳酸菌が産生する有効物質が腸内フローラを介さず、 直接生体へ作用することで血圧降下や免疫力の活性化、コレステロールの低下、整腸などの健康効果や免疫機能を高めたりする効果が期待されるというもので、 代表は「乳酸菌産生物質」です。


●プロバイオティクス

善玉菌の代表である「乳酸菌」は、ブドウ糖などの糖分を栄養素として増殖し、 その過程で多量の乳酸を作る微生物の総称で、「ビフィズス菌」が有名です。 一方、悪玉菌の代表は、「大腸菌やウェルシュ菌」といわれるものです。

1900年代半ば以降、腸内に到達可能な乳酸菌を活用した発酵乳製品や健康食品が開発され、再び乳酸菌の有用性が評価されるようになりました。 21世紀は「予防医学」の時代といわれていますが、この予防医学の観点から「プロバイオティクス」が注目を集めています。 プロバイオティクスとは、口から摂取されて、生きたまま腸までたどり着いて、腸内の有用菌の増殖を促進したり、 逆に、有害菌の増殖を抑制したりして、健康効果を発揮する微生物のことです。

多くの乳酸菌は腸に到達する前に、胃酸や胆汁などの消化液により死滅してしまいます。 かろうじて腸まで到達できても、健康効果が判然としない乳酸菌もあります。 プロバイオティクスの作用としては、整腸、大腸癌などの各種癌の予防、免疫力の活性化、 血圧やコレステロールの抑制、腸内環境改善などが研究課題として関心を集めています。 特筆すべきは、 アトピー性皮膚炎花粉症などアレルギーを軽減する効果への注目が高まっていることです。 肌荒れへの対応は特に女性には見逃せない効果でしょう。


●バイオジェニックス「乳酸菌生産物質」

現在、乳酸菌とともに「乳酸菌生産物質」が重要視されています。 乳酸菌生産物質は、乳酸菌が増殖する過程で出される分泌物(代謝物)です。 実は、人体内の腸内細菌も種種の代謝物を放出しており、それが免疫力や自然治癒力を高める作用があるといわれています。 そのため、腸内の環境を良好にして善玉菌を増やすと同時に、その代謝を活発化させることが健康には有効になります。


■植物性乳酸菌

乳酸菌がヨーグルトやチーズなどの乳製品に含まれていることはよく知られていますが、 乳酸菌には動物性の乳酸菌のほかにも植物性乳酸菌があります。 植物性乳酸菌は珍しいものではありません。たくさんの種類の植物に存在しています。 なぜなら植物性乳酸菌は動物性のものに比べて様々な微生物と共存可能で、まずしい栄養環境下や悪環境を耐え抜く強い「生命力」を持っているからなのです。 昔からのメニューには植物性乳酸菌のヘルシーメニューがありました。 日本の味噌や漬物、韓国のキムチ、ドイツのザワークラフトなど、植物性の発酵食品が多くありますが、 こうした植物性の発酵食品に含まれる乳酸菌が植物性乳酸菌です。 そして、これらの食品の良さは古くから認められており、学術的にも腸内細菌の改善効果は報告されています。


●日本人の腸内環境を守る植物性乳酸菌

日本人の腸が欧米人よりも長いことをご存知の方は少ないのではないでしょうか。 日本人は消化に時間のかかる繊維質(野菜など)を煮たりお漬物にしたりしてたくさん食べてきたためです。 言い換えれば体に合った植物性乳酸菌をたくさん取り入れ腸内環境を守ってきたのです。 乳酸菌の歴史が浅い日本人にとっては植物性乳酸菌をとの「お付き合い」には長い歴史があり、 古くから私たちの健康と深くかかわってきたものと言えるのです。


■乳酸菌を活用した製品

乳酸菌の研究・開発が進んだことで、今では植物由来や動物由来の有用な特定の菌が複数存在します。 例えば生菌のままヨーグルトに入れられているビフィズス菌やLG21、乳酸菌飲料として有名なヤクルト菌、 人の体内から抽出して加熱乾燥させたエンテロ・コッカス・フェカリス菌のカワイ菌、FK-23菌EF-621K菌などがあります。、

乳酸菌を活用した製品には「生菌タイプ」「死菌タイプ」があります。 重要なのは、人間にとって有用な菌かどうかです。 乳酸菌の効果は、菌の細胞壁に含まれている有効成分(多糖類)によって生み出されており、 この成分は熱に強いため、加熱して死菌にしても効果は変わらないといわれています。 むしろ、加熱・乾燥して粉末化した製品の方が、ヨーグルトを食べるより多くの乳酸菌が補給できます。 1g当たりの乳酸菌の数は、商品によって異なるとはいえ、ヨーグルトに比べて数百倍も多く含まれている製品もあります。 人間にとって有用な乳酸菌を製品化したサプリメントもありますから、それらを活用するのも効率的かもしれません。