TCHとは?

上下の歯を接触させていると、顎関節症が起こりやすくなる

■TCHは顎関節症の重要な原因

最近、顎関節症を起こす要因として注目されているのが、『TCH』という、上下の歯を接触させている「癖」です。 本来、上下の歯が接触するのは、咀嚼、嚥下、会話などを行うときに限られ、通常、合計しても1日約20分以内に過ぎません。 それ以外のときは、唇を閉じていても、上下の歯は接触していないのが普通です。 ところが、TCHがあると、無意識のうちに1日何時間も歯を接触させています。 上下の歯を接触させると、それだけで咬筋や側頭筋などの筋肉や、関節に負担がかかるため、顎関節症が起こりやすくなると考えられるのです。 実際に上下の歯を接触させてみると、咬筋や側頭筋が活動することを確認できます(イラスト参照)。


●TCHのチェック法

TCHがあるかどうかは、次の方法でチェックできます。@ABを行って、口の辺りに違和感があれば、TCHの可能性があると考えられます。

  • @姿勢を正して、正面を向き、軽く目を閉じる。
  • A唇を軽く閉じる。
  • B上下の歯が接触しないように軽く離す。

また、口の中を観察して、TCHをチェックすることもできます。TCHがある人は、下顎に歯が押し付けられ、歯の跡がついています。 TCHがあれば、必ず顎関節症が起こるというわけではありませんが、顎関節症の患者さんには、高い割合で、TCHが見られます。 ある調査では、顎関節症の患者さんの約8割にTCHが見られました(グラフ参照)。


●TCHを矯正する

最近、歯科ではTCHのある顎関節症の患者さんに対し、この癖を矯正するため、臨床心理学で使われる行動療法による治療が行われ始めています。 治療は次の3つのステップから成ります。現在のところ、この治療は、健康保険適用外で、治療を受けられる医療機関も限られています。 しかし、この方法は自分で行うことができますし、そのために症状が悪化することはありませんから、まず自分で試してみることをお勧めします。

@癖が筋肉疲労を起こすことを自覚する
「上下の歯を軽く接触させて、離す」を行って、筋肉の変化を感じ、無意識の行動が自分を傷つけていることを認識する。

A癖に気付くためにメモを活用する
メモ用紙に「力を抜く」「リラックス」「歯を離す」などと書き、自宅や職場などの目の付く場所に貼る。 メモを見たら、1回力を抜く。行っているうちにメモを見ただけで、脱力できるようになる。

B上下の歯が触れた瞬間に離す
歯が接触すると気付くようになり、やがて接触したら、条件反射で無意識に離せるようになる。

個人差はありますが、早ければ2〜3週間で効果が現れます。効果が現れない場合は、医療機関を受診してください。 口を動かさなくても痛んだり、痛みが悪化する場合は、顎関節症以外の病気の恐れもあるので、早めに受診してください。


●痛みの対処法

痛みに対しては、鎮痛薬のほか、「口を開ける」などのリハビリトレーニングを行います。 トレーニングのポイントは、痛みを怖がらず、痛みを感じるところまで口を開けることです。 繰り返すことで、徐々に口が開くようになるとともに、関節炎周囲の血流も改善され、痛みが和らぎます。 無理のない範囲で行ってください。
顎関節症の治療で、手術を必要とするケースは、数千例に一例と稀です。 手術や歯を削る治療を受ける前に、まずはTCHを疑ってみてください。