ドライマウス
唾液が減る『ドライマウス』になると、口の渇きや痛みなどのつらい症状が起こります。 原因を取り除くとともに、口の渇きを改善するケアを行います。
■ドライマウスとは?
唾液の分泌が減って口の中が乾燥した状態
「ドライマウス(口腔乾燥症)」とは、唾液の量が減って、口の中が乾燥した状態をいいます。
唾液の分泌量は、成人では1日1~1.5㍑にもなります。この唾液が何らかの原因で減ると口の中が乾燥します。
すると、舌がうまく回らずしゃべりにくくなったり、パンやビスケットなどの乾いた食べ物が食べにくくなったりします。
ドライマウスによって起こる症状は、これだけではありません。
虫歯や
歯周病、
口内炎、
味覚障害などが引き起こされることもあります。
唾液の働きには、
①口の中のウィルスや細菌の増殖を抑える抗菌作用、
②口の中の細菌や食べかすを洗い流して口臭を予防する自浄作用、
③食べ物を食べて酸性になった口の中を中和して虫歯を防ぐ作用、
④酸によって歯から溶け出したカルシウムを歯に戻して修復する再石灰化作用、
⑤食べ物を溶かして舌に成分を届けることで味を感じやすくする、などがあります。
唾液が減ると、これらの働きが妨げられるため、虫歯や歯周病になりやすくなります。
口の中の常在菌であるカンジダが、唾液が減ることで増加して、粘膜に炎症が起こる「口腔カンジダ症」になることもあります。
■ドライマウスの原因
加齢や薬の副作用、ストレスなどが影響する
ドライマウスの原因は様々ですが、特に多いのは加齢です。加齢によって唾液腺の働きが低下し、唾液の分泌量が減るのです。 虫歯や合わない入れ歯を使っているために食べ物を噛む回数が減っていたり、 強いストレスを感じているときにも、唾液の分泌量が低下することがあります。 また、抗うつ薬や抗アレルギー薬、 降圧薬などの副作用として、 唾液の分泌量の低下が見られることもあります。 鼻炎などがある場合も、口呼吸をすることで唾液が蒸発するため、口の中が渇きやすくなります。 全身の病気が関係していることもあります。免疫細胞が自分の体の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つで、 難病に指定されている「シェーグレン症候群」では、唾液腺や涙腺の細胞がダメージを受けるため、唾液や涙の量が減ります。 「糖尿病」が悪化したときにも、口の渇きが現れることがあります。
●受診するとき
ドライマウスは、症状が慢性化すると辛いうえに、前述のように、稀に他の病気が隠れていることがあります。 口の渇きなどの気になる症状が続いているとき、あるいは、口の中に痛みなどの違和感があるときには、 歯科やドライマウスに詳しい医療機関を受診してください。
■ドライマウスの検査
口の中の乾き具合や唾液の量を量る
ドライマウスの症状で受診した場合、原因を探る検査と、口の中の状態を確認する検査が行われます。 問診では、日常のストレスの有無や服用中の薬、糖尿病などの病気がないかどうかが確認されます。 視診では口の中の乾き具合や、炎症の有無が診られます。 また、診断のために、唾液分泌検査が行われます。 唾液の分泌量を量る方法には、ガーゼを2分間噛んでガーゼに吸収された唾液量を量るなど、いくつかの方法があります。 また、シェーグレン症候群が原因として疑われるときには、その検査を行う場合もあります。
■ドライマウスの治療
まずは原因を取り除く治療が行われる
ドライマウスの原因が判明している場合には、その原因を取り除く治療や対処が行われます。 例えば、入れ歯が合っていないために十分に噛めていない場合には、入れ歯の調整をするなどです。 シェーグレン症候群については、現在のところ完治させる治療法がないため、ドライマウスを改善するためには、唾液の分泌を促進する薬を服用します。 また、原因の治療と同時に、ドライマウスのケア用品を使って症状を改善していきます。
- ▼マウスウォッシュ
- 保湿剤が配合された洗口液です。 製品ごとに決められた時間、口をゆすぐなどして、手軽に使えるのが特長です。
- ▼保湿スプレー
- 保湿剤を口の中にスプレーして、潤いを保ちます。甘味や酸味の付いているものが多く、唾液の分泌を促進する効果も期待できます。 外出先でも使いやすいのが特長です。
- ▼保湿ジェル
- 保湿剤入りのジェルを指で口の中全体や舌に塗ります。マウスウォッシュよりも効果が持続します。 指で塗るときに、舌の下にある粘膜にある舌下腺などの唾液腺を刺激することで、唾液の分泌を促す効果も期待できます。
- ▼マウスピース
- 夜、寝るときに口蓋を覆うように装着します。口蓋から分泌される唾液の蒸発を抑えるので、 マウスピースの内側に保湿ジェルを塗ってから装着すると、より効果的です。 マウスピースは、患者さんの口の形に合わせて、医療機関で作ります。
- ▼夜間呼吸防止テープ
- 睡眠時に、唇に貼るテープです。睡眠中の口呼吸によって唾液が蒸発するのを防ぎます。
マウスピース以外は、市販されています。いくつか試して、自分が使いやすいものを選ぶとよいでしょう。 また、例えば、出かけるときは保湿スプレーを携行し、寝るときにはマウスピースを使うなど、時と場合によって使い分けるのがお勧めです。
●日常生活の工夫で予防や対処を
ドライマウスは、生活習慣の改善や工夫で、予防や症状の改善ができます。 口の渇きが気になるときは、こまめに水分を補給したり、加湿器などを用いて部屋の湿度を保つようにすると、症状が和らぎます。 口呼吸をしがちな人は、口を閉じて鼻呼吸をするように意識しましょう。 食事の際は、軟らかいものばかりを食べずに、硬いものも食べるようにします。 しっかりとよく噛むことで、唾液の分泌が促されます。 また、ストレスが続くと口が渇きやすくなります。 リラックスすることと規則正しい生活を心がけましょう。