変形性指関節症の治療
関節の部位によって固定または動かす
関節の部位によって対処法は異なりますが、医療機関では、症状によって痛み止めや抗炎症薬を処方するほか、 症状が強いときには患部に直接、注射することもあります。
■治療①テーピングや装具による固定と薬物療法
テーピングや装具による固定と薬物療法で痛みを抑える
変形指関節症の治療で大切なのは、痛みを抑えることです。 テーピングや装具で患部の関節を固定して、手を使った時の痛みを抑えます。 装具は、自分に合ったものを医療機関で処方してもらうことができます。 同時に、消炎鎮痛薬の湿布薬や塗り薬、飲み薬を使い、炎症と痛みを抑えていきます。 こうした治療を続けると、やがて痛みは取れていきます。
■治療②手術
痛みが抑えられなかったり、変形が大きい場合は手術も検討
患部の固定や薬物療法を続けても、痛みが辛い場合は手術が検討されます。 ただし、手術後しばらくは指を使うことができず、支障なく使えるようになるまでには3ヵ月間程度かかります。 手術は、受けるメリット、デメリットについて医師から説明を聞いたうえで、患者さん本人が判断することになります。
●難治性の治療
変形性指関節症の5~20%は難治性です。 いろいろな治療を試しても改善しない場合は、人工関節を埋め込む関節形成術や関節固定術などの手術が考慮されます。 関節形成術は、動きを保ったまま痛みを取ることができるため、大変有効な治療法ですが、人工関節が壊れやすいという問題点があります。 関節固定術は2つの関節を1つの骨として接合する手術で、関節としての動きがなくなります。 この手術を行うと指が不自由になるという問題点がありますが、確実に痛みが取れて、決して再発しないという利点もあります。 それぞれの手術に一長一短があるため、どちらを選ぶかは、患者さんのニーズに合わせて選択します。
■各部位ごとの治療
●ヘパーデン結節の治療
ヘパーデン結節では、変形が大きくなく、痛みが治まれば日常生活への支障はあまりないため、手術を行うことは稀です。 痛いときは患部をテープで固定して安静にするのが基本です。 テープはあまり強く固定する必要はなく、少し動かしにくくなる程度で十分です。 医療用のテープのほか、家庭にある絆創膏やテーピング用のテープなども利用できます。 テーピングや装具による固定や、薬物療法でも痛みが抑えられず、痛みによる日常生活への支障があるような場合に手術が行われます。 主に行われているのは「関節固定術」という手術です。骨同士を削り、ぴったりとくっつけます。 第一関節が曲げられなくなりますが、骨がぐらつかなくなるので、炎症も痛みもなくなります。 水膨れ(粘液脳腫)がある場合は、水膨れの原因となっている関節の袋を切除する手術が行われます。
●ブシャール結節の治療
第二関節は使用頻度が高いため、指が曲がらなくなると日常生活に支障を来します。 可動域を保つために、無理のない程度の強さで、できるだけ指の運動をすることが大切です。 関節の曲げ伸ばしの運動と、軟らかいボールなどを握って力をつける運動の2つを毎日続けるとよいでしょう。 なお、痛みが強く、腫れがある場合は、医師の指示に従って安静にする必要があります。
●母指CM関節症の治療
親指を人差し指に寄せたり、内側に入れたりする動きが痛みの原因になるため、母指CM関節症では、対立装具を着けて親指を少し広げた状態に保ちます。 入浴の際などは外しても構いませんが、原則として1日24時間、2~3ヵ月間装着します。 対立装具は義肢装具士に注文するほか、薬局などで市販されているものを使ってもよいでしょう。 このような治療によって、軽い場合には変形が軽減したり、変形の進行を抑えたりすることが可能です。
◆母指CM関節症の手術
母指CM関節症が進行して、CM関節部が動かなくなり、母指(親指)を広げにくくなった人、痛みがつらい人などが手術を選択しています。 母指のCM関節を削り、つなぎ合わせる「関節固定術」や、骨を削って隙間を作る「関節形成術」という手術などが行われます。
■発症を防ぐには
特に中年以降の女性は、指先に力を集中させる動作を控えるようにしましょう。 例えば、袋を開けるときははさみで切って開けるなど、強い力でつまむ動作を避けるようにします。 重い段ボール箱を運ぶ時には、持ち手を付けて持つようにしましょう。 手をよく使う人は、手作業をするときは1時間につき少なくとも10分間の休憩を心がけ、痛みがあれば、できるだけ早く整形外科を受診することが大切です。