変形性指関節症

変形性指関節症は、初めは少し指関節が腫れるだけですが、 そのままにしておくと激しい痛みが起こったり、指が変形したりします。 変形性関節症には「へバーデン結節」「ブシャール結節」「母指CM関節症」の3つの種類があり、 指のどの関節に症状が起こるかによって異なる病名が付けられており、対処法も異なります。 手の指の関節の変化は、更年期以降の女性に多く見られます。初期のうちの適切な対処が大切です。 初期症状のうちに気付いて適切な対処をすれば、関節の変形の進行を遅らせることができます。 原因と治療法、予防法などを紹介します。


■変形性指関節症の特徴

更年期の女性に多く起こる手の関節の変形
指の特定の関節だけに起こる

『変形性指関節症』は、指の関節に腫れや痛み、変形が起こる病気の総称で、痛みを伴うこともあれば、伴わないこともあります。 関節リウマチでも指の変形は起こりますが、関節リウマチは全身の病気のため、膝などの指以外の関節にも変形が現れる点が変形性指関節症とは異なります。 変形性指関節症は、指だけに起こり、しかも特定の関節に起こります。 一般に、更年期以降の女性に起こりやすく、特に痛みを伴うものは更年期に多いことがわかっています。 そのため、女性ホルモンのバランスの乱れが何らかの形で影響を与えているのではないかと考えられています。 変形性関節症には3つの種類があり、指のどの関節に症状が起こるかによって異なる病名が付けられており、対処法も異なります。


●ヘパーデン結節

親指から小指にかけて、指の第一関節に腫れや痛みが生じます。 痛みは時間が経つと治まっていきますが、指の変形は進行します。 変形性指関節症に分類される病気の中では患者さんも多く、爪の付け根付近に水膨れ(粘液脳腫)ができることもあります。


●ブシャール結節

指先から2番目の関節(第二関節)に痛みや変形が生じるものをいいます。


●母指CM関節症

母指(親指)の付け根にあるCM関節(第三関節)に、腫れや痛みが起こります。 進行すると、CM関節が変形し、腫れや、骨に棘ができたりすることにより、母指の付け根が外側に向かって飛び出して見えるようになります。 母指CM関節症は、軟骨が磨り減る前にまず靭帯が緩み、それによって起こる異常な運動のため、軟骨が磨り減って関節が破壊されます。 親指は他の指と向き合う動作をするため可動域が広く、靭帯にも大きな負担がかかります。 そのため、いったん不安定になると、悪循環に陥りやすくなります。 親指の根元の関節が痛むと、「雑巾を絞る」「洗濯挟みをつまむ」「ドアノブを回す」などの動作がつらくなり、日常生活に大きな支障が生じます。


変形性関節症による痛みは、多くが2~3年で治まりますが、関節がいったん変形してしまうと、元に戻すことは難しくなります。 しかし、初期のうちに適切に対処すれば、症状を緩和しながら、関節の変形の進行を抑えることができます。


●へバーデン結節とブシャール結節

関節の骨と骨の間には、隙間があり、そこにクッションの役割を果たす軟骨があります。 靭帯がそれらを正しい位置に維持しているため、関節は滑らかに動きます。 ところが、軟骨が磨り減って隙間が小さくなると、そこに骨が食い込んで骨同士がこすれます。 これがへバーデン結節とブシャール結節の最初の段階です。 さらに進行すると、食い込んだ骨が削られ、関節の周囲には骨棘といわれる棘のようなものができ、関節が変形していきます。 このような状態になると、関節を支える靭帯が相対的に緩んで、異常な動きが起こりやすくなります。 そうなると、さらに関節の変形が進むという悪循環が起こります。 また、へバーデン結節では、爪の付け根近くの皮膚に水膨れが生じることがよくあります。 これは、粘液脳腫といわれ、痛みはありませんが、骨は骨棘ができた関節と繋がっているため、 この水膨れが破れて関節に細菌が入ってしまうと、治療が難しくなります。 粘液脳腫に気付いたり、指のこわばりや軽い痛みなどの初期症状が現れた段階で病気を疑い、医療機関を受診することが勧められます。


●関節リウマチとの違い

変形性関節症で第一関節と第二関節が大きく変形していても、ほとんどの場合、手のひらの第三関節は正常に保たれます。 変形性関節症に関節の外見が似ている病気に関節リウマチがありますが、 関節リウマチでは、変形が第二関節に起こることもあるものの、頻度が高いのは手のひらの第三関節です。 ただし、関節の形状だけで判断することはできません。関節リウマチは血液検査で診断できるので、医療機関を受診して鑑別診断を受けてください。


変形性指関節症


■変形性指関節症が起こる仕組み

指関節の軟骨がすり減って炎症が起こる

変形性指関節症は、何らかの原因で、軟骨が擦り減っていくことで起こります。 健康な指関節の場合、骨と骨の間には軟骨があります。軟骨は骨同士がぶつからないように、クッションのような役割を果たしています。 変形性指関節症では、この軟骨が擦り減っていきます。すると、軟骨のクッションの役割が不十分になるため、骨が不安定になり、関節に負担がかかります。 その結果、炎症が起こり、腫れや痛みが起こります。 さらに、軟骨が擦り減ってなくなると、骨と骨が直接ぶつかるようになり、その影響で骨に棘ができます。 この段階になると、強い痛みが出やすくなります。そのまま治療せずに指を使い続けると、次第に指が変形していきます。 やがて骨同士がくっつき、そのまま固定してしまうと、炎症は治まって腫れや痛みはなくなりますが、指は変形したままになります。 発症から指が変形して固定するまでにかかる期間には個人差があります。 1~2年という人もいれば、長い時間をかけてゆっくりと進行する人もいます。 症状はさまざまですが、主な症状としては、指を使うたびに痛む、痛みのために指の可動域が狭まる、指が変形するなどが挙げられます。 患者さんの多くは、痛みが原因で受診します。痛みの強さには個人差がありますが、物を持つこともままならなくなる場合もあります。


■起こりやすい人

女性や手仕事を続けてきた人に多い

患者さんのほとんどが女性で、40歳代から多くなることから、女性ホルモンと関係すると考えられています。 また、手仕事を長年続けてきた人にも多いといわれています。突き指などの怪我の後遺症で、その指だけに起こる場合もあります。 仕事や趣味などで指をよく使う人は、指の腫れや痛みに気付いたら、早めに整形外科を受診しましょう。 また、爪の付け根付近に腫れや痛みを伴う水膨れ(粘液脳腫)ができた時には、すぐに受診してください。 水膨れによって皮膚が伸びて、中が透けて見えるほどに薄くなっていきます。 これが破れると関節に細菌が入り、化膿することがあります。 化膿が治まらないと、最悪の場合は、指を切断しなくてはならなくなることもあります。


■発症を防ぐには

特に中年以降の女性は、指先に力を集中させる動作を控えるようにしましょう。 例えば、袋を開けるときははさみで切って開けるなど、強い力でつまむ動作を避けるようにします。 重い段ボール箱を運ぶ時には、持ち手を付けて持つようにしましょう。 手をよく使う人は、手作業をするときは1時間につき少なくとも10分間の休憩を心がけ、痛みがあれば、できるだけ早く整形外科を受診することが大切です。