食道癌の予防

食道癌』の原因が明らかになってきました。 特徴に「飲酒量が多い」「食道のダメージが大きい」「飲酒で顔が赤くなる」人ほど、リスクは高まります。


■「食道癌」とは?

食道内腔の表面に発生し、早期には自覚症状はない

食道は口と胃をつなぐ臓器で、食道癌はこの内腔の表面にできます。癌細胞にはいくつかのタイプがありますが、 日本人の食道癌の約90%は、「扁平上皮癌」というタイプです。 食道の表面にとどまる早期の癌であれば、内視鏡を使って食道の表面のみを切除する「内視鏡治療」を受けることができます。 それよりも進行した場合には、食道そのものを切除する「外科手術」や、抗癌剤治療と放射線治療を組み合わせた 「化学放射線療法」が行われます。

食道癌は転移しやすい癌で、食道の近くにある肺へつながる気管や全身に血液を送る大動脈に広がることがあります。 そのため、進行すると経過が悪く、体に負担がかかる大きな手術も必要になります。 負担の少ない内視鏡治療で済ませるためには、早期発見が必要です。 ただ、早期には自覚症状がほとんどなく、症状から早期癌を発見することは困難です。


●食道癌の原因が明らかになってきた

多くの癌の原因が明確でない中、食道癌の原因についてはかなり明らかになってきました。 そのため、予防のための対策を取ることが可能です。 食道癌は、「飲酒」「喫煙」「野菜・果物をあまり食べない」「熱い食べ物を好む」といったことが原因となります。 喫煙や野菜・果物を食べない習慣についても、食道癌の危険性を高めることがわかっています。 熱い食べ物は、食道のただれの原因になると考えられています。 中でも飲酒は、アルコールの分解物である「アセトアルデヒド」が発癌性を持つために、特に影響が大きいものとされています。


■食道癌と飲酒の関係

飲酒量や食道のダメージなどが、リスクに関係する

ある調査研究から、飲酒と食道癌の関係が明らかになってきました。それによると「飲酒量が多い」、飲酒などにより 「食道のダメージが大きい」「アセトアルデヒドの分解能力が低い」という人ほど、食道癌になりやすいことがわかっています。 飲酒をせず、食道のダメージがなく、アセトアルデヒドの分解能力が高い人のリスクを1とすると、 日本酒換算で1日約4合に相当するアルコールを毎日飲み、食道に大きなダメージがあり、アセトアルデヒドの分解能力が低い人が 食道癌になるリスクは、約1724倍にもなります。条件が重なることで、食道癌のリスクはどんどん高くなるのです。


■食道癌の予防のためには

自分のリスクの程度を知り、リスクが高ければ飲酒を控える

食道癌を予防するために、次の2つについて知っておくことが必要です。


●①アセトアルデヒドの分解能力を知る



アセトアルデヒドは明らかな発癌性物質といわれています。アセトアルデヒドを分解する体内の酵素の能力が低いと、 アセトアルデヒドが長時間体内にとどまることになり、癌が起こりやすくなると考えられています。 アセトアルデヒドを分解する能力は、飲酒時に顔が赤くなるかどうかでほぼわかります。 赤くなる人はその能力が低いのです。ただ、中には、アセトアルデヒドを分解する能力が低くても顔が赤くならない人もいます。 そこで、アセトアルデヒドを分解する能力を確認するための検査を受けることが勧められます。
検査には、次のような方法があります。

▼パッチテスト
アルコールの付いたパッチを皮膚に貼って、皮膚の色の変化で判断します。 簡便ですが、その人の皮膚の色によって結果が左右されることがあります。

▼遺伝子検査
血液などから、アセトアルデヒドの分解酵素の遺伝子を調べます。結果が出るまでに時間がかかりますが、確実な方法です。

▼呼気スクリーニング検査
最近開発され、今後の実用化が期待されている方法です。微量のアルコールを飲んだ1分後に、呼気を専用のバッグに集め、 そこに含まれるアセトアルデヒドの量から分解能力を判定します。簡便で迅速かつ正確に判定できます。

●②食道のダメージの程度を知る

飲酒や熱い食べ物などが原因となって食道の粘膜が傷み、ダメージを受けていきます。 自分のリスクを知るためには、食道のダメージ度を知る必要があります。 内視鏡検査を受けて、食道の状態を確認しておきましょう。 アセトアルデヒドを分解する能力が低い人や、食道のダメージが大きい人は、食道癌のリスクが高くなります。 このような人は、飲酒を控えましょう。それによって食道の状態が改善し、食道癌のリスクが低下する可能性があります。 飲酒は、アルコール濃度が低くても食道癌のリスクを高めますが、アルコール濃度が高く強いお酒自体は さらに食道癌のリスクになるので、できるだけ控えます。強いお酒はそれだけアセトアルデヒドの発生量を増やし、 それによって食道にダメージを与えると考えられます。


■早期発見のために

リスクが高い人は特に、定期的に内視鏡検査を受ける

次のような内視鏡検査によって、早期の癌を発見することができます。

▼ヨード染色内視鏡
ヨード液で染色してから、食道の表面を観察します。正常な食道の粘膜は茶色に染まりますが、 癌の部分は染まらずに白く見えます。

▼狭帯域光内視鏡
特殊な光を当てて食道の粘膜を観察する検査です。癌の部位は正常な粘膜より色が濃く見えます。

どちらも早期の食道癌の発見に役立ちますが、ヨード染色内視鏡は、「胸やけ」や「アレルギー反応」を起こすなど、 患者さんへの負担が大きく、狭帯域内視鏡による検査が多くなっています。