冷え性対処法

原因となる自律神経の乱れを正し、きちんとした食生活を心掛ける

冷え性に対処するには、「自律神経の乱れを正す」「規則正しい食生活をする」「ストレスの少ない生活を送る」などを心掛ける必要があります。 食事や運動、服装など、日常生活に気を配ることによって、冷え性を改善することができます。 体を温める工夫を毎日の生活に取り入れていきましょう。 また、漢方治療では、患者さんの冷えのタイプによって、さまざまな漢方薬が用いられています。


■生活習慣を見直す

毎日の生活習慣から冷え性を改善する

「冷え性」の主な原因は、「作られる熱の量が少ない」「熱の運搬に問題がある」ことです。 生活習慣を見直して、冷え性を改善しましょう。

●規則正しい食生活を心掛ける

エネルギー不足から冷え性を起こさないためには、年齢や性別に応じた1日の推定エネルギー必要量(下記参照)を満たすことが必要です。 ただし、1日の必要量を夕食だけで摂るようなことはせず、次のような点に注意しましょう。

  • 1日分の推定エネルギー必要量を3食に分けて、均等に摂る。特に朝食はきちんと摂る習慣を付ける。
  • 毎日、同じ時刻に食べる。
●1日の推定エネルギー必要量を満たす食べ方
年齢や性別に応じた1日の推定エネルギー必要量を、3食に均等に配分した食事を摂ること。
●1日の推定エネルギー必要量(30~40歳代)
性別 女性 男性
必要量 2000kcal 2650kcal
3回に分けると 約670kcal 約880kcal

●朝食を摂る

体を温める熱の元となるのは食物です。日頃からバランスの良い食事を摂るよう心掛けることが大切ですが、特に冷え性の人は、朝食を必ず摂るようにしましょう。 朝は体温や代謝がまだ低い状態なので、体温や代謝を高め、体を目覚めさせるためには、朝食を摂ることが必要なのです。 朝食には、特に消化がよく、体を温めるものを摂ります。 手軽なものでは、朝がゆ、お茶漬けなどでもよいし、鍋物の残りなどにうどんを入れたり、おじやにしてもよいでしょう。

●温かい飲み物を飲む

冷え性があると、「手足が冷たくて、なかなか寝付けない」という場合も少なくありません。 寝る前に温かい飲み物を飲んで体を温めると、寝つきがよくなります。 葛湯や甘酒のように、とろみのある温かい飲み物には、体を温める作用があります。 薬酒やホットワインなど、少量の温めたアルコール飲料もよいでしょう。 ただし、アルコール飲料を大量に摂ると逆効果になりますので、少量にとどめます。 コーヒーや紅茶、緑茶などカフェインを含む飲料には覚醒作用がありますので、寝る前に飲むのには適していません。 鎮静効果のあるカモミールティーや、体を温める作用のあるショウガの入った飲み物(下図参照)などもよいでしょう。

体を温める飲み物

●運動で筋肉を増やす

筋肉は、1日の活動で体が生み出す熱の約6割を作り出しています。 筋肉が増えれば、熱を作り出す場所が増え、熱の産生量も高まります。 筋肉を増やすには、お腹、太腿、背中、お尻などの大きな筋肉を鍛えるのが効率的です。 腹筋運動やスクワットなどの筋力トレーニングを、 毎日の生活に少しずつでも取り入れるようにしましょう。 また、ウォーキングを習慣にすると、足の筋肉が鍛えられるほか、 悪くなりがちな下肢の血流を改善することができます。

●リラックスする

ストレスは自律神経の乱れに影響を及ぼします。 社会ではストレスがあることは避けられないので、心にゆとりを持ち、日常生活の中でほっとする時間を見つけることが大切です。 「自律神経」のうち、「交感神経」が優位になると、体は緊張状態になり、末梢血管が収縮して、手足が冷えやすくなります。 逆にリラックスした状態では、「副交感神経」が優位になり、末梢血管が拡張して、手足が温かくなります。 緊張状態からリラックス状態へスムーズに切り替えることができればよいのですが、考えて行おうとしても、なかなかうまくいくものではありません。 何か自分の五感に作用するリラックス法を、生活の中に見つけるとよいでしょう。 例えば、「ぬるめの湯にゆっくり入る」「足湯に入る」「好きな色や香りを楽しむ」「音楽を聴く」「肌触りの良い部屋着や寝巻きを切る」 「寝心地の良い寝具を使う」というように、自分が”ほっとする、気持ちがよい”という感覚を大切にしてください。 蒸しタオルを瞼の上に載せるのも、簡単で効果的な方法です。 蒸しタオルを一定時間瞼の上に載せておくだけで、寝付くまでの時間が短縮された糖調査結果もあります。

◆自律神経の乱れを正す

自律神経の乱れを正すには、交感神経と副交感神経の働きをそれぞれ活発にすることが大切です。 そのためには、「動的な状態にある」「静的な状態にある」ということを体にはっきりと認識させることが必要です。

▼適度な運動をする
運動時には交感神経が優位に働き、休息時には副交感神経が優位に働きます。 日中は軽い運動をするなど体を動かし、夜はきちんと休息をとるようにして、生活にメリハリを付けましょう。

▼入浴の工夫
湯に入った瞬間は交感神経が刺激され、ゆっくり浸かっていると副交感神経が優位になります。 湯上りに水シャワーなどを浴びると交感神経が刺激されます。 このような刺激の繰り返しによって、自律神経の働きが活発になります。

▼生活にリズムを
毎日、朝同じ時刻に起き、夜同じ時刻に就寝することによって、そのリズムを体に教え、自律神経の乱れを起こしにくくします。

●冷暖房や衣服の調節

現代は、冷暖房の普及によって、室内と室外の温度差が極端に大きくなっています。 しかし、温度差に対応して微調整を行う自律神経が対処できるのは、およそ7℃までといわれています。 自律神経への負担が大きくなり過ぎないように、室内の温度調節が可能な環境なら、なるべく冬は低め、夏は高めに設定し、 外気温との差が大きくなり過ぎないようにします。 自分で温度調節ができない環境では、重ね着をして、こまめに脱ぎ着するなど、体が冷えないような工夫をしましょう。 また、冷え性の人は手足が冷えやすいので、手足など局所を温めることも大切ですが、 お腹や腰など体幹部を温めることも、体全体を温めるためには効果的です。 懐炉や腹巻などを上手に利用するとよいでしょう。


■漢方治療

タイプ別の漢方薬で体の状態を改善していく

●冷えのタイプと漢方

漢方では、昔から「冷え」を治療対象にしてきており、冷え性の改善に用いられるさまざまな漢方薬があります。 漢方から見ると、冷え性は主に3つのタイプに大別されます。人によっては、2つ、3つと重なっている場合もあります。 患者さんの症状やタイプ・性質に合わせ、一人一人に合わせた漢方薬が処方されます。

▼胃腸が弱く、作られる熱の量が少ないタイプには
胃腸の働きを整えて、食物から熱を作り出しやすくする漢方薬が向いています。
六君子湯(ろっくんしとう)、人参湯(にんじんとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

▼血流が悪く、熱を全身にうまく運べないタイプ
血流をよくして、全身に熱が運ばれ安なるようにする漢方薬が向いています。
当帰四逆加呉茱ゆ生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

▼むくみやすく、体に水分が溜まりやすいタイプ
余分な水分を排出して、水分で体を冷やさないようにする漢方薬が向いています。
五苓散(ごれいさん)、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅうかんとう)、 防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、真武湯(しんぶとう)

漢方治療を希望する場合は、漢方医学に詳しい漢方の専門医を受診することが勧められます。 また、意思の約8割が漢方薬を処方しているという調査もありますので、かかりつけ医や、内科、婦人科の医師に相談してもよいでしょう。 市販の漢方薬を利用する場合は、漢方薬局の薬剤師に相談するなどして、自分に合った漢方薬を選びましょう。

●西洋薬が使われることも

冷え性の治療に、血流を改善するビタミン製剤や抗血小板薬、不眠や不安を改善する薬などの西洋薬が使われることもあります。