癌の放射線治療

手術せずにを治す治療法として、「放射線治療」が注目されています。 最近では、放射線を癌だけに集中して当てる技術が進んだことにより、副作用を減らし、高い治療効果が期待できるようになりました。

■「放射線治療」とは?

放射線で癌を小さくしたり、死滅させたりする治療法

癌を切らずに治す治療法として注目されているのが『放射線治療』です。 日本では、”副作用が恐い””技術的に難しそう”といったイメージを持つ人も多いのですが、 放射線治療を選択する患者は年々増加していて、他の治療との併用を併せると、 最近では癌患者全体の約4人に1人が放射線治療を受けています。

放射線には癌細胞の遺伝子を損傷する働きがあります。そのため、癌細胞に放射線が当たると、 癌細胞は増殖できなくなり、癌が小さくなったり、死滅したりします。 放射線は正常な細胞にもダメージを与えます。しかし、正常な細胞は癌細胞より放射線に対する感受性が弱いため、 損傷の程度が軽く、そのほとんどはやがて回復します。放射線治療では、こうした癌細胞と正常細胞の放射線に対する 感受性の差を利用して、癌を治療します。


●放射線治療の目的

放射線治療には、「治癒」と「緩和」の2つの目的がある

▼治癒
癌を完全に治すことを目指します。現在、「脳腫瘍」、喉頭癌や舌癌のように首や顔にできる「頭頚部癌」、 「食道癌」「肺癌」「前立腺癌」「子宮頸癌」「悪性リンパ腫」などで、治癒を目指す標準的な治療の 1つとして放射線が利用されています。

▼緩和
癌に伴う苦痛を和らげて、生活の質を高めることを目指します。神経や血管を圧迫している癌に 放射線を当てると、癌が小さくなるので、「痛み」や「麻痺や痺れなどの神経症状」を軽減することができます。 また、癌の骨転移による痛みの緩和や、弱くなった骨の骨折防止にもなります。

放射線治療には、大きく分けて「外部照射」「密封小線源治療」「放射性同位元素による治療」の3つの方法があります。 放射性同位元素による治療は、今のところ「甲状腺癌」や「甲状腺機能亢進症」に限って行われています。


●外部照射① 一般的な方法

できるだけ癌の形に沿ってエックス線などを照射する

最も広く行われているのが、体の外側から放射線を当てる外部照射で、放射線治療全体の約90%を占めます。 外部照射では、エックス線や電子線などが使われます。エックス線が食道や子宮など、体の深い部分の治療に 使われるのに対し、電子線は皮膚や首などの体の浅い部位に用いられます。
外部照射では、仰向けに寝た患者の周りを、放射線を発する「ガントリー」が回りながら、放射線を当てていきます。 放射線は、極力癌だけに当たるように調節しますが、患者がいつも同じ姿勢や部位で横になることができるとは 限りません。また、癌が首より下にある場合、呼吸や腸の動きなどによって、癌の位置が変動することがあります。 そこで、そうした誤差を見越し、癌の周りに1.5~2cmの余裕を持たせながら、できるだけ癌の形に沿って照射します。 治療は週5日のペースで約1~2ヶ月間行われます。1回の治療時間は、通常10分程度です。


●外部照射② 最新の方法

よりピンポイントで照射して、副作用を防ぐ方法

通常の外部照射でも、かなり癌に的を絞った商社ができますが、最近は「定位放射線治療」や「強度偏重放射線治療」 のように、よりピンポイントに放射線を当てる外部照射も行われています。 定位放射線治療はもともとの脳腫瘍に行われていましたが、動く臓器に対応できる装置が日本で開発され、 肺癌や肝癌のように呼吸で位置が変わる癌にも行われるようになってきました。

◆肺癌の定位放射線治療

それぞれの患者の体に合わせた固定具をつくり、体を固定して癌に的を絞ります。 肺は呼吸によって動くので、カメラで呼吸を監視し、呼吸の一定のタイミング、例えば息を吐いたときに 放射線を照射するようにコンピューターで調節します。この治療に使う機器では、患者が横になるベッドや ガントリーが360度回転するので、さまざまな方向から癌に集中して照射できます。
この方法では、大量の放射線を癌に集中して当てられるので、高い治療効果が期待できます。 誤差は約5mmとされ、従来の方法に比べると正常な細胞に当たる放射線量は減るため、副作用は少なくなります。 治療成績は、癌が肺にとどまる「Ⅰ期」の肺癌であれば手術と同程度です。 治療には健康保険が適用され、この治療を行う医療機関も増え始めています。


●密封小線源治療

放射線の線源を癌やその周囲に入れる方法

密封小線源治療では、放射線を発生する「線源」を、癌や癌の周囲に入れ、体の内側から照射します。 より副作用の少ない放射線治療で、「腔内照射」と「組織内照射」の2つがあります。 腔内照射は、食道や胆管、子宮のように、もともと体内にある空間に線源を送り込んで治療を行います。 組織内照射は、癌組織に線源を挿入して行う方法で、「高線量率組織内照射」と「ヨード線源挿入」があります。

◆舌癌の高線量率組織内照射

麻酔をかけて、中が空洞の直径約0.6mm、長さ約20mmの「アプリケータ」を下顎から刺し、舌癌に挿入します。 挿入する本数は、癌の大きさなどによって異なります。装置から出るチューブを、癌に挿入したアプリケータに繋ぎ、 「イリジウム」という高エネルギーの線源を、癌に送り込んで照射します。照射が終わると、体内に線源は残りません。 1日2回、5日間ほど続けて照射を行います。アプリケータは治療終了まで抜かずに留置しておきます。

高線量率組織内照射は、癌に集中して放射線を当てるので、味覚や発音などの舌の機能をほぼ保ったまま治療ができます。 健康保険も適用され、舌癌や乳癌、前立腺癌を始めとして、多くの癌の治療に用いられています。 現在、高線量率組織内照射に積極的に取り組んでいる医療機関も少しづつ増え始めています。


●放射線治療の副作用

放射線治療では、正常な細胞に放射線が当たると、副作用が起こります。 治療中から治療終了後6ヶ月までに現れる「急性期反応」と治療終了後6ヶ月以降に現れる「晩期反応」があります。

▼急性期反応
「下痢」「皮膚が赤くなる」「粘膜の炎症」「白血球の減少」「貧血」「食欲低下」などがあり、 そのほとんどは薬物治療で対処できます。

▼晩期反応
「白内障」「肺臓炎」「脳壊死」「食道狭窄」「直腸炎」「発癌」など重篤なものが多くなります。 最近は、癌に的を絞って照射できるようになってきており、晩期反応の頻度は低くなっていますが、 皆無ではないため、治療後も定期的な受診が必要です。

●さまざまな放射線療法

▼粒子線治療
陽子線や重粒子線を用いる外部照射です。粒子線は、体内に入っても効力が保たれるため、 体の奥の癌にも高い治療効果が期待できます。

▼強度変調放射線治療(IMRT)
外部照射の1つです。癌の形に合わせて放射線に強弱をつけて照射できるので、 癌により集中した治療ができます。粒子線治療と強度変調放射線治療は「先進医療」に定められており、 先進医療にかかる費用には保険が適用されません。

▼ヨード線源挿入
「ヨード(ヨウ素)125」という低エネルギーの線源を、癌に埋め込んだままにします。 代表的なのが前立腺癌の治療で、健康保険も適用されます。