■質問:五十肩で腕が動かせません

2ヶ月前から、「五十肩」の症状が続いています。症状がある右肩はなるべく安静にしていますが、動かせる範囲がどんどん狭くなってきました。 右肩をかばって、できるだけ左腕を使って生活していますが、最近、左肩にも少しずつ痛みが出るようになりました。 両肩が動かせなくなるのではないかと心配です。


【答】

「五十肩」は「肩関節周囲炎」とも呼ばれ、最もよく見られる肩の病気です。両側同時に起きることもありますが、 片側性に症状が出現することがほとんどで、両側同時に起きた患者さんを日常診療で診察することはめったにありません。 50歳代に発症することが多いため五十肩と呼ばれていますが、実際には30~70歳代までの幅広い年代で発症します。 肩関節は関節包という袋状の組織で覆われています。肩関節の周辺には、筋肉のほか、骨と骨をつなぐ靭帯、 筋肉と骨をつなぐ腱が複雑に入り混じっています。さらに、靭帯が作るトンネルの中をくぐるような形で、 腱板という板状の腱が上腕骨と肩甲骨をつないでいます。肩関節の周辺にはその他にも3つの腱板があり、 それらによって肩関節は安定しています。この腱板の周辺には「滑液包」という組織があります。 滑液包の中は、腱板が滑らかに動くための潤滑油の役割をする滑液で満たされています。 五十肩が起こる原因はよくわかっていませんが、肩関節を包んでいる関節包や活液胞に炎症が起きて肩の痛みが生じます。 腕を動かすと強く痛むなどの症状が突然現れ、痛みのために、腕を後ろに回せなくなったり、頭に手が届かなくなったりするため、 日常生活に支障を来します。痛みは特に夜間、寝ているときに起こりやすいのが特徴です。 体を起こしている昼間は、腕が重力で下に引っ張られるので、関節包や活液胞などの組織があまり圧迫されないのですが、 就寝中は、寝返りなどで肩関節が動きやすく、炎症が起こっている関節包などが刺激されるため、 強い痛みが生じてしまうのです。

五十肩は、急性期、拘縮期、回復期の3つの時期に分けられ、それぞれの時期に合った治療方法を行うことが大切です。 ご質問者の右肩は2ヶ月前から痛んだとのことなので、急性期の終わりごろに当たると思われ、 まだあまり肩を動かすことはお勧めできません。ただ、左肩にも痛みが出てきているので、全ての動作を左手で行うのは 避けたほうがいいでしょう。右手を使う際には、なるべく脇を開けず、肘を体幹につけて右手を使うとよいでしょう。 また、手を体の後ろに回す動きは避け、できる限り体の前で手を使うようにし、後ろのものを取るときは 体の向きを変えてください。なお、肩の痛みが長く続く場合は、「腱板断裂」も疑われるので、 整形外科を受診して調べてもらうことをお勧めします。