五十肩の治療

五十肩は、「急性期」「拘縮期」「回復期」と3つに分けられます。 また、五十肩の治療法には、主に薬物療法と運動療法があり、 五十肩の時期に合わせて、これらを組み合わせたり、どちらか一方を選択することによって早期の改善が望めます。 具体的には次のような治療を行っていきます。 急性期は安静を保ち、拘縮期や回復期は運動を行います。


■五十肩の治療法

時期に応じて薬物治療法や運動療法が行われる
・五十肩は、時期に応じた治療によって、早期の改善が望める。
・五十肩の時期は、「急性期」「拘縮期」「回復期」と3つに分けられる。
・急性期は安静を保ち、拘縮期や回復期は運動を行う。

五十肩の治療法には、主に薬物療法と運動療法があります。3つの時期に合わせてこれらを組み合わせたり、どちらか一方が選択されます。

▼急性期の治療
急性期は、痛みが強いため、 消炎鎮痛薬には、内服薬と貼付薬があります。非ステロイド性消炎鎮痛薬の飲み薬や貼り薬などの薬物療法で痛みを緩和します。 痛みが強く、日常生活に支障がある場合は、「局所麻酔薬」を注射ることもあります。 この時期は、運動療法を行わず、肩を安静にして過ごします。無理に肩を動かすと、悪化する危険性があります。 特に腕を上げる動作は、炎症を起こしている滑液苞や腱板などが肩峰などに圧迫され、 さらに炎症が強くなるという悪循環が起こっていしまいます。 温熱療法で筋肉の過度な緊張をほぐします。痛みが強い場合は、患部にステロイド薬を注射します。

▼拘縮期の治療
急性期よりは和らぎますが、痛みは残っているので、消炎鎮痛薬が継続して用いられることがあります。 拘縮期では、硬くなった肩関節を動かさずにいると、さらに拘縮が強まり、動かしにくくなります。 そのため、適切な運動療法を開始することが大切です。腱板に負担をかけずに行うことができ、 関節包をストレッチすることで肩関節の動き(可動範囲)を改善する効果がある、「振り子体操」が有効です。

▼回復期の治療
痛みはほぼ改善されるため、薬物療法はほとんど必要なくなります。痛みがなくても、関節部の拘縮は残っているので、 より積極的に「棒体操」のような運動療法を行いましょう。まずは準備体操として振り子体操を行い、 次に、棒体操を加えるとよいでしょう。運動療法が必要な時期であっても、やり過ぎてはいけません。 無理なくできる回数から始めて、少しずつ回数を増やしていきましょう。 多くの場合、運動療法を始めて2~3ヶ月で肩を動かしやすくなります。 効果がない場合は、適切な方法で行えているかどうかを医療機関で確認してもらいましょう。

慢性期や回復期は、肩の動きの回復のために患部にヒアルロン酸の注射を行うことがあります。 関節包にステロイド薬と局所麻酔薬の混合液を注射で注入し、縮まった関節包を膨らませたり、部分的に破裂させる関節腔拡張術を行うこともあります。 それでも改善しない場合は、超音波画像を見ながら、麻酔薬で患部の神経を麻痺させて、硬くなった関節包をはがすエコーガイド神経ブロック下徒手授動術 が検討されます。
これらの治療を行っても日常生活への支障が大きい場合や、骨粗鬆症がある場合などには、関節鏡下関節包切離術が検討されます。 関節鏡を患部に挿入して画像を見ながら、関節包の全周囲を切開します。切った部分の癒着を防ぐため、術後は運動療法が重要です。 医師から手術のメリットとデメリットの説明を十分に受け、手術を受けるかどうかを決めることが大切です。


●振り子体操

机の横に立つ。痛みのない側の手を机につき、上体を軽く倒す。 痛みのある腕は力を抜き、下に垂らす。軽く反動をつけて下に垂らした腕をゆらし、 肩の力を抜いて揺れが自然に治まるまで続ける。 腕の動きが止まったら、再び軽く反動をつける。これを繰り返す。

●棒体操

▼体の前で腕を上げる
背筋を伸ばして立ち、体の前で長さ1mの棒(傘や杖でもよい)の両端の方を持つ。 棒を水平に保つようにしながら、ゆっくりと両腕を上げる。 肩の痛みを感じたら、痛みのない腕で棒を軽く引き上げ、痛みのある腕をさらに少し上げる。 3~5秒間保ち、両腕を下す。これを繰り返す。

▼腕を横に上げる
背筋を伸ばして立ち、体の前で棒の両端の方を持つ。痛みのない腕でゆっくりと棒を斜め横に押し上げ、 痛みのある腕を引き上げる。肩の痛みを感じるところまで上げ、3~5秒間保ち、両腕を下す。これを繰り返す。

▼体の後ろで腕を上げる
背筋を伸ばして立ち、体の後ろで棒の両端のほうを持つ。棒を水平に保つようにしながら、両腕をゆっくりと斜め後ろへ上げる。 肩の痛みを感じたら、痛みのない腕で棒を軽く引き上げ、痛みのある腕をさらに少し上げる。 3~5秒保ち、両腕を下す。これを繰り返す。