高血圧対処術「笑い」
「笑い」は、心ばかりか体も温まります。 「笑い」は、全身の血流をよくし高血圧を下げます。 「笑い」は、最良の降圧剤といえます。
■作り笑いでも健康効果が得られる
私は、もともと心療内科をしておりました。これまで、心に問題を抱える患者さんを数多く診てきましたが、
その多くが、「怒り」を自分のうちに溜め込んでいるようでした。
それが、患者さんたちの大きなストレスとなり、心の病を引き起こす一因となっていました。
まず私は、患者さんたちに、ストレスの根源である「怒り」をどんどん外に吐き出すことを勧めました。
しかし、言葉では簡単に言っても、なかなか難しいようです。
知らないうちに溜め込んでいた「怒り」をいきなり発散しろといわれても、できないのは無理もありません。
そこで、怒ることの代わりに、今度はなるべくたくさん笑うことを勧めました。
落語や漫才、コメディー番組などをたくさん見るように勧め、笑いのある生活を心がけてもらうようにしたのです。
すると、多くの患者さんが、溜め込んでいたストレスをスッキリ解消できたのです。
たくさん笑えば、その分「喜び」や「楽しみ」といった感情を多く感じることができます。
「喜び」や「楽しみ」を感じることは、ストレスを解消するという意味では、「怒り」を吐き出すのと同様の効果を
もたらすことがわかりました。
このように「笑い」は心身をリラックスさせ、ストレスを感じたときに分泌される「コルチゾール」というホルモンを 低下させます。コルチゾールの増加は、心の病のほかにも、認知症やメタボリックシンドロームを引き起こす原因の一つになります。 笑うことでコルチゾールが低下すれば、これらの症状の予防にもつながるでしょう。 また、大声で笑っているときは、腹式呼吸になるので、自然に呼吸が深くなります。 深い呼吸は、自律神経に作用し、副交感神経を優位にさせるのです。 自律神経とは、体の諸機能を自動的に調節している神経のことです。 人間の体の内部では、体を活動的な状態に導く交感神経と、リラックスした状態に導く副交感神経とが常にバランスを 取り合いながら、そのときどきにふさわしい体調を作り上げています。 副交感神経が活発になると、血管が拡張されて、血液の流れがよくなります。 血流がよくなれば、高血圧の人は、血圧の正常化につながり、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などの予防にもなります。
中には、笑うことが難しいという方もいらっしゃるでしょう。そういう方は、「作り笑い」でもいいので、 笑うことを心がけてください。作り笑いでも、体の緊張はほぐれ、本当に笑っているときに近い健康効果が期待できます。
●筋肉をつけることも血圧降下に有効
また、高血圧の対策には、「笑い」のほかに、生活の中に運動を取り入れることをお勧めします。 一般的に、運動中は自律神経の交感神経が優位になって体は緊張状態になります。 しかし、運動後には、副交感神経が優位となるため、血管が拡張して血液の流れがよくなり、 血圧が下がるのです。また、運動して筋肉が付いてくると、インスリン抵抗性が改善してくるので、 この点からも血圧の降下が望めます。 膵臓から分泌されるインスリンは、糖や脂質の代謝に関わるホルモンで、血中のブドウ糖を一定に保つ働きをします。 インスリン抵抗性とは、インスリンが十分に分泌されているが、血糖値が下がらない状態をいいます。 運動によって体に筋肉が付き脂肪細胞が減ると、インスリン阻害因子の分泌が少なくなるので、 インスリン抵抗性が改善されます。そして、糖・脂質代謝が改善されることで、血圧も下がってくるのです。
笑うことも運動することもお金がかかりません。 特に笑うことは、時間もかからず一人で簡単にでき、気持ちを前向きにしてくれます。 まさに笑いは、「最良の降圧剤」の人るといえるのではないでしょうか。 ぜひ、皆さんも笑いのある生活を心がけてください。心も体も温まりますよ。