内臓脂肪とメタボリックドミノ「ポッコリ肥満はなぜ悪い?」

・肥満があると、肥大化した脂肪細胞がさまざまな”悪玉ホルモン”を分泌する。
・内臓脂肪は、他の臓器に炎症をもたらすことで影響を及ぼす可能性がある。
・内臓脂肪型肥満のある”メタボ”の段階は、ドミノが倒れてきているサイン。


■肥満による影響

脂肪細胞の肥大化により、血圧などの上がりやすくなる

「メタボリックドミノ」は、内臓脂肪が増える内臓脂肪型肥満から始まります。 内臓脂肪が増えると、脂肪細胞が病気の発症にかかわるさまざまな物質を出すようになり、その影響が全身に広がっていくのです。 脂肪細胞には、余分なエネルギーを脂肪として溜め込む働きがあるため、肥満があると1つ1つの脂肪細胞は大きくなります。 また、他の臓器のように、ホルモンを分泌する働きもあります。 脂肪細胞が肥大化していない時には、よい働きをする”善玉ホルモン”が分泌されます。 その代表が「アディポネクチン」です。インスリンの働きをよくして糖尿病を改善したり、 動脈硬化の進行を抑えたりします。一方、脂肪細胞が肥大化すると、悪い働きをする”悪玉ホルモン”の分泌が盛んになります。


◆悪玉ホルモン

▼TNF-α
インスリンの効きを悪くする代表的なホルモンです。
▼レプチン
食欲を抑える働きと血圧を上げる働きがあります。肥満があると食欲を抑える働きは効きにくくなり、 血圧を上げる働きだけが残ります。
▼アンジオテンシノーゲン
血圧を上げる物質であるアンジオテンシンの元となるホルモンです。 肝臓と肥大化した脂肪細胞から分泌されます。

肥満があると、善玉ホルモンの分泌が減り、悪玉ホルモンの分泌が増えるため、血圧が上昇したり、脂質異常が起きたりします。 さらに、脂肪細胞の肥大化が進むと、脂肪細胞が弾けてしまい、ホルモンの分泌の乱れをさらに促進させてしまいます。


●内臓脂肪型肥満がある場合

小腸の炎症がさまざまな臓器に飛び火すると考えられる

肥満の中でも、特に内臓脂肪型肥満が悪影響を及ぼすのは、内臓脂肪が小腸の近くにたまるためだと考えられます。

◆小腸の炎症とは

脂っこい食べ物などを食べ過ぎると、小腸はそれを異物と認識し、腸管を守ろうとして「炎症」が起こります。 炎症は、体が有害な刺激を受けた時に、体を守るために起こる反応で、小腸で起こった炎症は、すぐそばにある脂肪細胞に伝わっていきます。 炎症が伝わることで、肥大化した脂肪細胞からは炎症を促すホルモンが分泌されます。 それによって、炎症はさまざまな臓器へと広がっていきます。こうして、肝臓、脳や心臓の血管、腎臓などへと炎症が広がり、 そこで病気が発症すると考えているのです。

メタボリックドミノは、内臓脂肪型肥満から始まり、それが倒れることで重篤な病気につながることを示すものですが、 内臓脂肪に伝わった火事が、全身に広がっていくような現象ともいえます。