突発性難聴による耳鳴り
高音の耳鳴りは
■突発性難聴
音の振動を電気信号に変えて脳に伝える有毛細胞は酷使すると休眠状態に陥り難聴を招く
「キーン」「ジーッ」「ピーッ」など金属音やセミの鳴き声、電子音のような耳鳴りは高温に分類され、 加齢性(老人性)難聴や騒音性難聴のほか、突発性難聴でも起こることがあります。 突発性難聴とは、はっきりとした原因がなく、突然片方の耳が聞こえにくくなる難聴です。 「朝、起きたとき」「会議中」「食事中」など、難聴発症時に何をしていたのかを明言できるほど突然起こるのが特徴です。 突発性難聴の症状としては、何となく聞こえにくいということもあれば全く聞こえなくなるということもあります。 片方の耳だけに起こるのが一般的ですが、まれに両方の耳に起こることもあります。 難聴の発生と前後して、冒頭で述べたように耳鳴りから始まることがあります。 また、めまいを伴うことも多く、メニエール病の初期症状と似ています。 ただし、メニエール病が何度もめまいを繰り返すのに対し、突発性難聴では、めまいはほとんどの場合、1回しか起こりません。 突発性難聴は、内耳の血流障害や血栓などが原因で起こると考えられていますが、詳細はまだわかっていません。 しかし、血管の炎症や過剰な酸化ストレス(活性酸素による害)がその引き金になっていることは間違いないと考えられています。
耳介で集められた音の振動は、外耳・中耳を経て、内耳にあるカタツムリのような形をした蝸牛に伝えられます。 蝸牛の内部はリンパ液で満たされており、中耳から振動が伝わると揺れ始めます。 その揺れが蝸牛の内部にある有毛細胞という音のセンサーを刺激。有毛細胞で音の振動が電気信号に変換され、 聴神経(蝸牛神経)を通じて脳に伝えられ、初めて音として認識されるのです。 有毛細胞はその名のとおり数十本の毛が生えた細胞で、リンパ液の揺れを感知すると、ピョコピョコとダンスをするように 動き始めます。そのため、有毛細胞は別名「ダンス細胞」とも呼ばれています。 蝸牛の内側には、有毛細胞が2種類あり、約3500個の内有毛細胞が一列に、約1万2000個の外有毛細胞が3列に並んでいます。 内有毛細胞はピアノに例えると鍵盤に相当し、蝸牛の入り口付近が高音、奥に行くほど低音といったぐあいに、 1つ1つ担当する音の高さ(周波数)が決まっています。 一方、外有毛細胞は音の振動を増幅させ内有毛細胞の感度を調節する役目を担っています。 ささやき声のような小さな音を聞き洩らさなかったり、大事な音だけを取捨選択し、メリハリをつけて認識しやすく したりしているのは外有毛細胞なのです。 有毛細胞は、1秒間に最高2万回までダンスする力(振動する力)があることがわかっています。 これだけ速い動きで音の振動を読み取り、取捨選択して脳へと情報を送っている有毛細胞は、体の中で最も消耗の激しい部分の 一つといえるでしょう。高速でダンスを繰り返す有毛細胞は、とても繊細な細胞でもあります。 大きな音を長く効き続けると、有毛細胞はくたびれてダンスするのをやめてしまったり、栄養失調から休眠してしまったり、 時には眠ったまま起きてこなくなったりすることがあるのです。 高音を担当する有毛細胞ほど激しくダンスして消耗するため、突発性難聴では高音から難聴・耳鳴りが起こり始めると考えられているのです。
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休眠状態の有毛細胞は一週間の放置で死滅し、二度と再生しないため早期治療がカギを握る
血栓など、何らかの理由で内耳の血流が行き渡らなくなれば、有毛細胞には一時的に栄養が供給されなくなります。 その結果、有毛細胞は休眠。再び血行が行き渡るようになるまで、何の反応もせずに休み続けます。 たとえ治療などで血流が戻ったとしても、休眠していた有毛細胞は必ずしも復活するとは限りません。 一定期間以上の休眠状態が続いたり、血流の再開が急激過ぎて大量の酸素や栄養が一気に流入してしまうと 処理できなくなったりして、アポトーシス(細胞の自然死)を引き起こしてしまうことがあるのです。 突発性難聴になると、医師が「発症して1週間が勝負です」と説明するのは、有毛細胞が休眠状態から復活できる時間には 限りがあるからです。一度死滅した有毛細胞は、二度と再生することはありません。 つまり、有毛細胞が死んでしまうと、その有毛細胞が担当していた、ある一定の高さの音が永遠に聞こえなくなってしまうのです。 ある時突然、耳の聞こえが悪くなった場合は、早急に専門医の治療を受けることが肝心です。 すぐに治療にかかるかどうかが、その後の耳の状態を大きく左右する可能性があるからです