動脈硬化のサインの耳鳴り

ザーッと響く波音のような耳鳴りは、脳梗塞・心筋梗塞を招く動脈硬化のサイン。


■二種類の耳鳴り

耳鳴りには二種類あり、実際に起こっている音が聞こえる場合は、血管の老化を疑え

耳鳴りや難聴、めまいを引き起こす原因にはさまざまなものがあります。 全ての原因や症状を引き起こすメカニズムがわかっているわけではありません。 ①耳②脳③血管のいずれかに問題が起こると症状を引き起こします。 人間の耳は構造的に外耳・中耳・内耳の3つの部分に分かれています。 外耳で音を集め、中耳で音を増幅し、内耳で音を感じ取る・・・という仕組みですが、内耳にある「蝸牛」が耳鳴りに大きく 関係していることがわかっています。蝸牛の内側には、音も振動を感じ取る「有毛細胞」が整然と並んでいます。 有毛細胞は、1秒間に最高2万回もの振動を行いながら、集まってきた音を電気信号に替えて脳へ送る役割を果たしています。 働き者である有毛細胞は、エネルギー源として大量の酸素を必要とします。有毛細胞に酸素を運ぶのは血液ですが、 加齢のほか、さまざまな理由で内耳の血流が悪くなると、有毛細胞の働きが低下して難聴を引き起こします。

人間の体は、驚くほど精巧にできています。一つの機能が損なわれたとき、それを補うために別の器官が代わりの働きをする ことが少なくありません。内耳の血流が悪くなって蝸牛の有毛細胞の働きが低下した時も、同じようなことが起こります。 聴力が低下すると、脳は音の感度を強く感じ取ろうとして、音の感度を高めます。 その結果、雑音が増幅されて耳鳴りが生じるようになるのです。難聴と耳鳴りは、実は表裏一体のような関係で起こっているのです。

耳鳴りには「自覚的耳鳴り」と「他覚的耳鳴り」の二つの種類があります。自覚的耳鳴りは音が発生していないのに聞こえてしまう 耳鳴りのこと。原因として、内耳や脳の変調が挙げられます。一般的に耳鳴りというと、この自覚的耳鳴りを指すことが 多くなっています。他覚的耳鳴りは、実際に体から音が出ていて、文字通り他人(診断する医師)にもその音が聞こえる耳鳴り のことです。原因として耳の周囲にある筋肉の痙攣や、あご関節の異常などが挙げられますが、一番気を付けなければ ならないのは、血管からの音が聞こえてくる耳鳴りです。


頸動脈の老化は全身の動脈硬化サインで治療に加えて生活習慣の改善が必要

血管性の他覚的耳鳴りは「ザーッ、ジャージャー」といった波の音のような耳鳴りが、しばしば脈拍(心拍)と同じリズムで 聞こえるのが特徴で、原因は動脈硬化です。動脈硬化とは、動脈の血管内にプラーク(粥状に固まった酸化コレステロールなど) が蓄積して、血管が厚く硬くなった状態のこと。動脈効果は加齢とともに進む血管の老化現象ですが、肥満や高血圧、高血糖、 脂質異常などの生活習慣のほか、喫煙や過度の飲酒、運動不足、ストレスなどで著しく進行します。 動脈硬化によって引き起こされる耳鳴りは、首にある頸動脈が深く関わっています。 心臓から脳に向かって伸びる頸動脈は、一本の太い血管が耳たぶの下のところでY字型のように2本の動脈に分岐します。 特にこの分岐点はプラークが蓄積しやすい部分です。頸動脈に動脈硬化が起こると血液がドロドロになって、 血流に乱れが生じます。「ザーッ」「ジャージャー」といった雑音は、耳の周辺にある血流の乱れによるものと考えられます。 動脈硬化は耳の周辺だけで起こるわけではありません。頸動脈に動脈硬化が起こっているときは、全身の血管も老化しています。 動脈硬化が進行すれば、脳梗塞や心筋梗塞といった、命の危険を招く病気につながります。 波音のような耳鳴りを感じたら、すぐに病院で精密検査を受けるようにしてください。

血管性の耳鳴りが疑われた場合、病院ではMRI検査で脳や頭部の動脈硬化の状態を調べたり、超音波検査で頭部のプラークの厚さや 血流をチェックしたりします。診断結果をもとにして適切な治療を受けることで、耳鳴りの改善が見られるはずです。 動脈硬化を防ぐには、動物性脂肪の多い食事を改めたり、定期的な運動、禁煙、十分な睡眠など、 生活習慣の見直しが欠かせません。医師の指導を受けながら、自ら前向きに取り込むことが大切です。