急性低音障害型感覚難聴(ALHL)

耳詰まりを伴うブーンという耳鳴りは内耳のむくみが原因で若い女性に急増中
リンパ液の代謝が悪くなり、低い音が聞き取りにくくなる

■急性低音障害型感覚難聴(ALHL)とは?

メニエール病に似ためまいを伴わない低音性の難聴が20~30代の女性に増加

最近、20~30代の若い女性を中心に突発的に起こる、低音の難聴が増えています。 「急性低音障害型感覚難聴(ALHL)」といい、主に1000ヘルツより低い周波数の音(低音)が聞こえなくなります。 自覚症状としては、片方の耳が詰まっているような感じがする耳閉感が最も多く、そのほか「ブ~ン」という低い音の耳鳴りがしたり、 自分の声が響いて聞こえたりします。ALHLの原因は不明ですが、メニエール病と同じように「内リンパ水腫」という、 内耳のむくみによって発症すると考えられています。メニエール病の症状とよく似ていますが、決定的な違いはメニエール病の 最大の特徴であるめまい(回転性めまい)が、ALHLでは一切起こらないことです。 また、突然起こることでは突発性難聴と似ていますが、突発性難聴の場合、耳鳴りは高温なのが一般的です。 ALHLは、繰り返し発症するものの、予後は比較的良好で、突発性難聴より治りやすいといえます。 その他、比較的多く見かけられる感音難聴としては、次のようなものがあります。


▼ラムゼイ・ハント症候群
帯状疱疹の一種で、体内で休眠していた帯状ヘルペスウィルス(水疱瘡ウィルス)が内耳に感染することで起こります。 回転性めまいや耳鳴り、難聴などが主な症状です。顔面の神経に感染した場合は、顔面神経麻痺症状が出ることがあります。

▼騒音性難聴
大きな音の中で、長年過ごしていると、内耳の有毛細胞に障害が起こって難聴になります。 空港や道路工事の現場など、常に大きな音がしている職場で働く人に起こりやすく、「職業性難聴」ともいわれています。 一般的に90デシベル以上の音(ロックやドリルの音など)では耳の痛みを感じ、大音量を聴き続けていると内耳が傷ついてしまう危険性があります。 130デシベル以上の音(30メートル離れたジェット機のエンジン音)では、短時間で障害が起こります。 騒音の激しい職場で働く場合は、耳栓を用いるなど、難聴を予防することが大切です。

●耳のむくみ

年中無休で働く耳はむくみやすく、防ぐには水分代謝の改善とストレス発散が大切

耳は非常にむくみやすい器官です。ALHLやメニエール病など、多くの耳の病気がむくみによって発症すると考えられています。 水分を十分に摂ってたくさん汗をかき、水分代謝をよくすることが肝心です。 1日2㍑を目安にして水分を補給し、ウォーキングや半身浴などでよく汗をかくようにしましょう。 また、ALHLなど、若い年代に耳の障害が増えているのは、生活が不規則になって自律神経がうまく働かず、 ホルモンのバランスが崩れていることも大いに関係していると考えられています。 ストレッチをしてリラックスしたり、十分に睡眠をとったりして、ストレスをため込まないようにしてほしいものです。

五感を司る器官の中で、耳だけは四六時中働き続けています。酷使されていると考えられがちな目ですら、就寝中は休んでいます。 人生90年として、目は60年間働いて30年間は休んでいるのに、耳は90年間絶えず働きっぱなしなのです。 音楽をデジタル装置で聞くときは適度に休憩を取るなど、耳の健康には十分に注意してほしいものです。


■急性低音障害型感音難聴の治療

薬で回復が期待できるため、一刻も早く治療を受ける

有毛細胞は、一旦壊れてしまうと再生したり治ったりすることはないので、有毛細胞が壊れる前に治療を開始することが大切です。 遅くとも発症から1週間以内に医療機関を受診し、治療を開始することが大切です。治療の中心は、薬物療法です。 耳の中に古いリンパ液が溜まることが原因と考えられているため、水分の代謝を活発にする「利尿剤」を使います。 また、有毛細胞が壊されないように、ステロイド薬を併用することがあります。 ストレスに対処するため、カウンセリングなどの心理療法を行うこともあります。
急性低音障害型感音難聴の場合、治療による効果は比較的高く、7~8割の人が治ります。 しかし、中には再発を繰り返す人がいて、1割前後はメニエール病に移行するといわれています。 再発を繰り返さないためには、ストレスをためないように心掛けることが大切です。 そのうえで、日常的に「水分をよく取る」「適度な運動を行う」「ぬるめのお風呂にゆっくり入って発汗を促す」などを心がけてください。 それらにより、体内にもともと備わっている「利尿ホルモン」が活性化し、 水分の代謝が活発になります。水分と塩分を同時に摂ると、返って体内に水分がたまってしまうので、塩分は控えめにして、 水分だけを十分に摂るように気をつけましょう。