禁煙を長続きさせるコツ

禁煙中に”1本くらいなら大丈夫”とタバコを吸ってしまうと、たとえ1本であっても、ニコチン依存の状態に戻ってしまいます。 その結果、禁煙が長続きしない人も少なくありません。 禁煙を長続きさせ、成功させるためには、いくつかのコツがあります。


■なぜ禁煙が長続きしないか

禁煙中に1本でも喫煙すると、ニコチン依存の状態に戻ってしまう

禁煙には、「つまづきやすい3つの法則」があります。 まずは禁煙を始めるときで、次は禁断症状が治まってくる開始7日目ごろです。 3つ目の時期が、禁煙に成功したものと思ってほっとした時期です。 もっとも再喫煙の多い時期は、禁煙を始めてから3ヶ月以内ともいわれています。 ”1本くらいなら大丈夫”と思って吸ってしまうと、そのまま喫煙習慣が戻ってしまうことが非常に多いのです。

禁煙中の人がどのような時に再喫煙してしまったかを調べた調査があります。 その結果によると、禁煙前によく喫煙していた状況、つまり、”タバコが特に美味しい”と感じた状況に置かれると、 再喫煙してしまう人が多いことがわかりました。 1位は「食後」です。食後は消化器官に血液が集中しやすく、脳へのニコチン供給量が減るので、 吸いたい気持ちが強くなるといわれています。そのため、食後の一服は美味しく感じられます。 2位は「朝、目覚めたとき」です。タバコを1日中吸っていると、”おいしい”という感覚は薄れていきます。 しかし、寝ている間にニコチンが体内から消失していくため、”朝の1本”が特に美味しく感じると考えられます。

実は禁煙していても、こういった「おいしい」と感じた時の記憶は脳に残っています。 そのため、以前に「おいしい」と感じた状況に置かれると、タバコを吸いたくなるのです。 ニコチン依存症は、一度経験すると、どんなに禁煙期間が長くても、再びニコチンを摂取すると すぐに依存の状態に戻るという特徴があります。禁煙を続けるには1本も吸わないことが大切です。


●禁煙を長続きさせるには①

吸いたくなったら、タバコから気をそらす

”1本吸いたい”という「喫煙衝動」に駆られたら、次のように対処するとよいでしょう。

◆我慢しないで気をそらす

喫煙衝動は、通常、3分程度で消えます。そこで、”吸いたい”という気持ちと対峙するのではなく、 深呼吸したり、ガムを噛んだりして、タバコから気をそらしましょう。 喫煙衝動は、禁煙直後は強くても、時間がたつにつれ、弱くなっていくので、タバコから気をそらすことで上手にコントロールできるはずです。

◆吸いたい気持ちを1日延ばしにする

喫煙衝動が起こったら、吸いたい気持ちを上手に回避した時のことを、思い出しましょう。 そして、”今日は吸わないでいられたから、明日も吸わないで過ごそう”と考え、吸いたい気持ちを1日延ばしにしていきます。 それを積み重ねていけば、気付くと何か月も禁煙が続き、吸わないことが当たり前になっているでしょう。


●禁煙を長続きさせるには②

生活習慣を健康的なものに変える
宴会は”3ない”で対処

禁煙を長続きさせるためには、これまで”喫煙”が組み込まれていた生活習慣を、健康的なものに変えていくことも大切です。 例えば、朝に吸いたくなることが多いので、夜30分早く寝て朝早く起き、散歩をしたり、 きちんと朝食を摂ったりするのもよいでしょう。 これまでは、仕事で一息ついたときに一服していたところを、お茶を飲んだり、軽くストレッチングしたりして、 気分転換するのも効果的です。

◆宴会では”3ない”で再喫煙を防ぐ

お酒の席では、喫煙を我慢するのがつらくなるものです。 アルコールもタバコ同様に、脳の快楽を感じる部分に刺激を与えるので、飲酒すると喫煙もしたくなります。 そこでモットーにしたいのが、”3ない”です。1つめの”ない”は宴会に「行かない」ことです。 しかし、仕事のために断れない人も少なくありません。 その場合は、お酒の席であっても「飲まない」、喫煙者の近くに「座らない」の、2つの”ない”を実行しましょう。


●禁煙を長続きさせるには③

自分だけでなく、周りの人にも健康被害を与えることを認識する

喫煙中は軽視していた健康被害を、もう一度よく認識しておくことも、大切なポイントです。 喫煙者本人の健康被害はもちろん、周りの人に、受動喫煙による健康被害を与えます。 火の付いたたばこの先端から流れる煙(副流煙)は、フィルターを通らない分、喫煙者が吸い込む「主流煙」よりも 高濃度の有害物質が含まれています。そのため喫煙者と一緒に暮らす家族や周りの人にも、タバコの害が現れるのです。
子供では、「肺炎」や「気管支炎」などを発症しやすくなります。 妊娠中の女性の喫煙では、胎盤の機能が低下し、胎児の発育が悪くなったり流産や早産をする危険性が高まります。 妊娠中に喫煙した母親から生まれた早産児は、喫煙しなかった母親の早産児と比べて「乳幼児突然死症候群」 の発症リスクが上がるという報告があります。 夫の吸うたばこの本数が多いほど、非喫煙者である妻の肺がん死亡率が上がることがもわかっています。

日本は、喫煙や受動喫煙の防止を目的とした「たばこ規制枠組み条約」という国際条約に批准しており、 今後もタバコに対する規制が、さらに進むと思われます。 そこで、タバコを吸いにくくなっている現在の社会環境をプラスにとらえて、禁煙の”追い風”にしましょう。

◆医師の手を借りるのも1つの方法

自分ではどうしても禁煙が続けられない時は、医師に相談するのもよいでしょう。 「禁煙外来」など、禁煙の指導・治療などが受けられる医療機関を受診し、ニコチン依存症と診断されるなどの条件を満たせば、 健康保険も適用されます。