断煙
禁煙を成功させるためには、本数を徐々に減らしていく「節煙」よりも、 1本も吸わないようにする「断煙」の方が効果的です。 「禁煙補助薬」なども利用して禁断症状とうまく付き合いながら、断煙による禁煙に取り組みましょう。
■断煙の方法
”ニコチンの自己調整”が起こるため、節煙より断煙の方が成功しやすい
禁煙の方法には、大きく分けて、徐々に吸う本数を減らしていく「節煙」と、 きっぱりとやめる「断煙」の2つがあります。 少しずつやめるほうが簡単そうですが、実はきっぱりとやめる断煙の方が成功しやすいといわれています。 禁煙外来を受診する患者さんで、節煙で禁煙できた人は非常に少ないのが現状です。 節煙から禁煙へと進むのが難しいのは「ニコチンの自己調整」が起こるからです。
●ニコチンの自己調整とは
タバコの本数を減らしても、以前と同量のニコチンを吸収しようと、体は無意識に調整してしまいます。
これを「ニコチンの自己調整」といいます。例えば、1本のタバコを根元まで吸って、ニコチンをより多く取り入れようとします。
また、煙を深く吸い、肺の奥まで煙を吸い込んだり、吸いこんでから息を止め、
ニコチンを含む煙が肺の血流と接する時間を長くして、より多くのニコチンを体内に吸収しようとしたりします。
無意識のうちに自己調整するので、吸う本数を減らしてもニコチンへの依存は改善されません。
依存は続くので、ある程度まで本数を減らすことができても、それ以上は難しくなります。
例えば、毎日20本吸っていた人なら、12~13本くらいまで減らすのは、比較的簡単です。
ところが本数が少なくなると、頭では禁煙しようと頑張っているのに、体は逆にニコチンを待ち望んでいる状態になります。
ですから、1本1本のタバコが非常に大切になり、禁煙できるどころか、結局はまた本数が増えてしまうことが多いのです。
長年喫煙していた人が、断煙するのはつらいかもしれません。 しかし、昔に比べると、今は断煙するのによい社会環境になっています。 「健康増進法」の施行以来、喫煙できる場所は限られています。 さらに、一部の「禁煙補助薬」が市販されるようになり、服用するタイプの処方薬も認可されました。 現在の社会環境は、禁煙する良いチャンスとも考えられるのです。 ただし、断煙を成功させるためには、「禁断症状」と向かい合う必要があります。
●禁断症状
特に禁煙開始後4~5日間は、「喫煙行動」などが現れやすい
禁煙すると、ニコチンの血中濃度が下がるほか、ニコチンが肝臓で代謝されてできる「ニコチン代謝物質」が減るために、 禁断症状(離脱症状)が現れます。主な症状は、「吸いたくなる(喫煙衝動)」「イライラ」「集中力低下」「睡眠障害」 など、さまざまです。最も多いのは、吸いたくなるという、タバコへの強い渇望感です。 また、便秘・頭痛・胸部の圧迫感・食欲増加・だるい・めまい・眠いなどの症状が出る人もいます。 人によっては禁断症状が現れないこともありますが、禁煙を成功させるために、まず乗り越えなくてはならない壁となっています。
◆禁断症状を乗り切るには
禁断症状はつらいのですが、それほど長く続くわけではありません。 どれくらい続くのか見通しがついていれば、乗り越えやすくなります。 最も禁断症状が強く現れるのは、禁煙開始後、2日目くらいまでです。 体内からニコチンが消えてしまうため、体がニコチンを渇望します。 このころが禁断症状のピークですが、その後もニコチン代謝物質が消えるまで、禁断症状が強く現れることがあります。 その期間は、だいたい禁煙後4~5日です。しかし、この時期を過ぎると、禁断症状は徐々に弱まっていきます。 そして、1週間を過ぎれば、大半の症状は消えるといわれています。
一般的に、このような経過をたどることが多いので、禁煙後1週間、特に4~5日間までを、どう乗り切るかがポイントになります。 吸いたい衝動は、通常3分程度で治まります。その間、じっと我慢するのではなく、ストレッチングや深呼吸、仮眠をするなど、 別の行動をとって気をそらすようにするとよいでしょう。