クエン酸

クエン酸は、柑橘類などに含まれる有機化合物で、ヒドロキシ酸の一つです。 爽やかな酸味を持つことから食品添加物として多用されます。 疲労物質の乳酸を減らして疲労を回復する、カルシウムなどミネラル類の吸収を促進する、耳下腺ホルモン・パロチンの分泌を促すなどの作用があります。 我々の体は「クエン酸サイクル」という仕組みでブドウ糖(グルコース)からエネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)を作り出しています。 運動などにより疲労物質の乳酸が蓄積されると、クエン酸サイクルによるエネルギーの産生効率が低下します。 そこにクエン酸が補われると、再びクエン酸サイクルが働きます。 つまり、クエン酸は、疲労物質・乳酸を取り除き、疲労回復の効果をもたらすのです。


■クエン酸について

健康維持や運動時のエネルギー補助に活躍

クエン酸を摂取すると、食事の栄養をエネルギーに換えるTCA回路(クエン酸回路)というエネルギー装置が活性化します。 普段の健康をキープすると同時に、スポーツの際のエネルギー源を作ります。 逆に、このクエン酸回路がうまく回らないと、摂取した糖質、脂質、タンパク質が効率よく使われづらくなります。

▼期待される効果
疲労回復。ミネラルの吸収促進。耳下腺ホルモン・パロチンの分泌促進。

▼作用メカニズム
食べ物に含まれる糖質は、消化管から吸収されて血液中にブドウ糖の形で利用されます。 細胞内のエネルギー産生工場であるミトコンドリアでは、ブドウ糖からATTPを作り出す際に、クエン酸サイクルが活発に回転します。 クエン酸サイクルは、TCAサイクルあるいはクレブス・サイクルとも呼ばれます。 クエン酸サイクルの仕組みは、図の通りです。すべての経路がアセチル-CoAを産生し、さらにクエン酸サイクルで酸化されて、 最終的には酸化的リン酸化によりATPを産生します。
クエン酸サイクル

▼科学的根拠
運動などによりブドウ糖が消費されるとき、 クエン酸サイクルでATPが産生されます。 しかし、ブドウ糖を燃焼(酸化)する際、すべてが利用できるわけではなく、一部が乳酸に変わります。 そして、過敏な運動や長時間の運動では、乳酸が蓄積します。乳酸は疲労物質であり、脳が乳酸の蓄積を感知すると疲労感を感じるのです。 持久的な運動は、筋肉中のクエン酸合成酵素活性を亢進させ、筋肉中のクエン酸濃度も増加させます。 このことから、運動の前にクエン酸を摂取することで、運動時のエネルギー代謝に影響を与えることが考えられます。 実際、ヒトを対象にした臨床研究では、自転車エルゴメーターによる短時間の運動時において、クエン酸摂取による運動パフォーマンス改善が示唆されました。 また、クエン酸の摂取2時間後に運動負荷を実施した臨床研究でも、クエン酸摂取群におけるパフォーマンス改善が示されています。 日本での臨床試験として、名古屋工業大学から報告された「運動後のレモン果汁とグルコース混合摂取によるヒト血中乳酸減少の促進」といったデータがあります。 疲労回復作用のほか、クエン酸は、食物に含まれるカルシウムなどミネラル類の吸収を促進します。 さらに、クエン酸の酸味刺激によって、耳下腺からパロチンというホルモンが分泌されます。 パロチンは、体内の代謝を促進し、正常な機能の維持に関与します。

▼摂取方法
特に決まった摂取量はありません。目的に応じて随時利用します。 ヒトを対象にした臨床研究では、体重1kgあたりクエン酸ナトリウムとして0.4gあるいは0.5gを投与した例があります。 なお、一連のクエン酸サイクルでは、クエン酸だけを補給すればいいのではなく 各種のビタミンミネラルアミノ酸なども必要なので、 マルチビタミンマルチミネラル といったサプリメントとの併用が基本となります。

▼クエン酸を多く含む食べ物
クエン酸を含む食べ物はレモン、みかんなどの柑橘類や梅干しなどです。レモン1個におよそ4g、梅干し1個におよそ0.35g含有されています。 また、お酢にも多くのクエン酸が入っていて、最近ではクエン酸を含有する清涼飲料もあります。

▼ビタミンCとクエン酸の違いとは?
レモンやみかんなどの柑橘類にはビタミンCも含まれています。クエン酸もビタミンCも似たような味覚ですが、働きには違いがあります。 ビタミンCが皮膚などの粘膜にアプローチしたり身体のさびつきを和らげたりする抗酸化作用が中心なのに対し、 クエン酸は生活や運動のエネルギー源を作る作用が中心です。

▼粉末やタブレットタイプのサプリメントが便利
クエン酸を食事で摂ろうとすると、毎日酸っぱいものを食べなくてはなりません。 しかしいまでは、クエン酸の必要成分が詰まったサプリメント(サプリ)がたくさん売られています。 クエン酸のサプリは、タブレットタイプや、水などに混ぜて飲む顆粒・粉末・パウダータイプが一般的です。

▼注意事項
通常の食材に由来する成分であり、問題となる健康被害や副作用は知られていません。 他のサプリメントや医薬品との相互作用は報告されておらず、併用は問題ないでしょう。

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